米中貿易摩擦にはじまりラグビーワールドカップや消費増税、そして新型コロナウイルスと数々の出来事を受けて目まぐるしく変動する日本経済。
こと埼玉県内の経済においてもそれは例外ではない。
先月6月は県内上場企業の昨年度決算短信発表が相次いだが、帝国データバンク大宮支店の調査をもとに上場企業の昨年度決算の模様を探る。
調査概要
- 調査主体:帝国データバンク大宮支店
- 調査対象:埼玉県内に実質本店を置き決算短信を発表した70社
- 内訳:製造業42社・小売業18社・その他10社 ※金融業除く
- 備考:原則連結ベースの数値で、連結決算を行っていない企業については非連結ベース
製造苦戦で減収へー売上高
(帝国データバンク大宮支店資料より、以下同)
県内上場70社の売上高合計は5兆2299億7100万円で、前年度(2018年度)比3.2%の減収となった。
業種別にみると、製造業42社で2兆7511億6800万円で同7.8%減、小売18社で2兆2012億3000万円で同1.4%増収、その他10社で2775億7300万円と同13.6%増になった。
製造業が減収に対して小売は微増、その他では2桁もの伸びを見せている。
増税・コロナ禍も小売は健闘
前年度と比較可能な69社について売上高の増減を分析する。
このうち前年度比増収となったのは30社(構成比43.5%)に対し減収は39社(同56.5%)減収企業が増収企業を上回る結果となった。
業種別にみると、製造業42社のうち増収10社(構成比23.8%)に対し減収32社(同76.2%)と、製造業では減収企業が多い。
一方で小売17社では増収10社(構成比58.8%)に対し減収7社(同41.2%)、その他業種では全てが増収だった。
製造業の落ち込みによりトータルでは減収となったが、消費増税の反動や新型コロナに伴う外出自粛の影響が懸念された小売業が増収となったのは特筆すべき点だろう。
製造・小売とも減益ー経常利益
次に継続的な企業活動による利益を示す経常利益を見ていく。営業利益に利息や補助金など営業外損益を足したものになる。
70社合計で見ると2274億3000万円と同19.3%の減益となった。製造業で3割以上、小売でも5%以上減益となっている。
黒字達成も減収多し
同じく前年度と比較可能な69社について経常損益を分析する。
昨年度決算において経常黒字を果たした企業は61社(構成比88.4%)に対し経常赤字の企業は8社(同11.6%)で、ほぼほぼ経常黒字を達していた。
ただ黒字の内訳をみると増益が22社(構成比31.9%)に対し減益33社(同47.8%)と上回っており、黒字転換は6社に留まっている。なお、赤字の内訳は赤字転落4社・赤字幅拡大が4社という結果だった。
なんとか経常黒字を達成しても利幅は減ったという企業が多かったことがうかがえる。
約6割で損益悪化
さらに業種別に見ていく。
製造業42社で黒字を達成した37社のうち、過半数の23社が減益となった。小売業18社についても、減益が増益を上回っている。
一方で、小売以外のその他業種では増益が減益の倍の数となった。
減益に加え赤字企業を含めると全体で41社の企業で経常損益が悪化していることになり、その割合は6割近くに及んでいる。
「総じて2019年度決算は、製造業と小売業において苦戦した企業が多い1年であったといえよう」と同社。