【埼事記 2023/5/21】浦和レッズACL優勝 浦和の誇りは世界を制す

■「成功は偶然の出来事ではない。勤勉、忍耐、練習、研究、謙虚、そして何よりも愛情が必要である」

サッカーブラジル代表として3度のW杯制覇に貢献し「サッカーの王様」と評され、昨年末に82歳の生涯を閉じたペレ氏(1940〜2022)の言葉だ。

勝ちに不思議の勝ちありともいわれてはいるが、全てが不思議というわけではない。勤勉や忍耐や愛情と、様々な要素が重なって成功に繋がっていくのだ。サッカーだけでなく全ての活動に当てはまることだろう。

■今年2023年はサッカーのプロリーグであるJリーグが開幕して30周年の節目の年となる。

10チームから始まった同リーグには現在では3部50チームが所属。北は北海道、南は沖縄まで全国各地にチームができていて、各地の伝統や特色を生かしたチーム名や応援スタイルになっているのが大きな特徴だ。近年では海外に挑戦する選手も増えているが、

地域活性化という言葉が出だした頃に始まった同リーグでは、地域色を前面に各地でチームが躍動しているのは事実である。

■埼玉も言わずと知れたサッカーどころであるが、その埼玉のチームがつい先日偉業を成し遂げた。

サッカーチームアジア1番を決めるAFCアジアチャンピオンズリーグ2022(ACL)にJ1浦和レッズが出場、決勝へ駒を進め、サウジアラビアのアル・ヒラルとホーム・アウェイで対戦。初戦のアウェイ戦では1-1のドローでアウェイゴールを奪った。

そして5/6(土)に埼玉スタジアム2○○2(埼スタ)で行われた第2戦、大勢のサポーターが見守る中、後半3分にフリーキックの流れから相手の足に当たって先制。集中した守備とカウンター攻撃でアル・ヒラルを寄せ付けず、合計スコア2-1で勝利。2019年での同カードでの決勝戦での雪辱を果たすと共に、2017年以来となる3度目のACL制覇を成し遂げた。

Jリーグ開幕時は最下位に沈み「お荷物」と称されたチームが、アジアを三度制するほどのチームに成長。Jリーグの進歩を感じずにはいられない。

■J1リーグも再開しその余韻も冷めつつあるが、浦和の街にレプリカの優勝トロフィーが飾られるなど地域でもその喜びが大きく表れている。さいたま市長特別賞も贈られる予定だ。

レッズというと、なんといっても熱狂的なサポーターが多いことが特徴だ。平均入場者数はリーグトップクラスで、赤く染まったスタンドからのコレオグラフィーは壮観そのものだ。元からサッカー熱の高い地域において三菱重工サッカー部という伝統あるチームが設立母体になってJリーグ開幕時から参戦しているのだから、それは多くのサポーターが集まるわけだ。J2リーグに降格したこともあったものの、いつも熱いサポーターがチームを支えてきた。

今回の決勝戦についても、新型コロナの影響で当初2月に予定されていたのが埼スタの芝の張替えにあたり、別会場での開催の可能性も出ていた。そこで、サポーター有志が芝の張り替え延期を求めて署名活動を行い、6万名近い署名を大野知事に提出している。球団側もこうした動きを受けてAFCに決勝戦自体の延期を求め、今回の開催となった。

時として暴行事件や破壊行為などを起こすこともあるが、聖地たる埼スタにこだわるサポーターの力で決勝戦の日取りすら変えてしまったのである。

■単にサポーター数が多いだけでなく、浦和の誇りのもと良くも悪くも行動を起こすサポーターが存在するからこそ、ピッチで戦う選手やスタッフ陣の間にも「下手なことはできない」というある種の危機感が生まれてくるのかもしれない。その危機感というのは自らを縛るプレッシャーではなく、ここぞという時に力を発揮させるための原動力になっているのだろう。

熱心に行動するサポーターに応えるためにも、そしてチームとしての信頼を向上させるためにも、やはり勝利という結果が何よりも必要だ。勝利を得るためには、サポーターや地域、自分たちに対する愛情、すなわち誇りが鍵になっているのだ。

実際、サウジアラビアで行われた第1戦にも多くの浦和サポーターが海を越えて応援に駆けつけている。そうした応援があったことでアウェーゴールを生まれたわけだし、今回の優勝は決して偶然ではない。選手やチームだけでなく、サポーターも手繰り寄せた優勝だ。

この先はサッカーチーム世界一を目指すクラブワールドカップの舞台が待つが、そうした浦和の誇りがあれば世界を制することも夢ではない。

■ところで、サッカーどころ埼玉もう一つの片割れのJ2大宮アルディージャはいまいち元気がない。連敗が続いてJ2最下位に沈み、一昨日にはついに相馬直樹監督が解任された。

原崎政人コーチが内部昇格して後任を務めるが、本日の試合から反撃の狼煙を上げられるかが注目だ。

10kmも離れていない浦和レッズとは好対照であるが、両チームとも己の誇りを胸に、最上の舞台でまたさいたまダービーを見せて欲しいと願ってやまない。

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