心つなぐ桜のチカラ 2023全国さくらシンポジウムin熊谷開催

桜の保全活動の紹介などを通じて桜を生かしたまちづくりを考えるため毎年開催されている2023全国さくらシンポジウムin熊谷が、4/6に熊谷桜堤近くの同市立文化センター文化会館(同市桜木町)で開催された。主催は同シンポジウム実行委員会と公益財団法人日本花の会で、同市共催。

桜が残る地域において、同市内だけでなく地域を超えてつながる桜の可能性を広く訴求した。

「心に桜を咲かせて」

1982年から開催されている同シンポジウムは、今年で42回。桜の季節に、桜にちなんだ名所がある全国の自治体で開催されてきた。2020年と2021年開催は中止となったものの、昨年は山口県岩国市で開催。埼玉県内での開催は1999年の栗橋町(現:久喜市)での開催以来となる。

開催に先立ち、熊谷陣屋太鼓保存会が太鼓組曲「熊谷の祭り」を披露。関東一の祇園とも称され毎年7月に開催される熊谷うちわ祭りでの囃子や山車の叩き合いを表現。鈴の音や交通整理の笛の音も表現され、会場に暑い夏に開催される同祭の雰囲気を醸成した。

実行副委員長を務める熊谷商工会議所の大久保和政会頭は「各地に満開の桜を届けてきた桜のまちだけに、心に桜を咲かせて楽しんで」と挨拶。

同市の小林哲也市長も登壇し、地域の桜の歴史を紹介。江戸時代から桜の名所として名を馳せてきたが、1989年より同市では「桜ルネッサンス」として桜を生かしたまちづくりを推進。熊谷桜堤が桜の名所百選に指定されるなどしたが、以来桜を守り未来へつなぐ思いで地域連携も進んでいる。「コロナで希薄になった人と人とのつながりを取り戻せれば」と小林市長。

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桜生かしたまちづくり紹介

荒れた里山を桜並木に

同市における事例発表として、小江川地区千本桜事業が紹介された。

同事業は不法投棄が絶えない荒廃地の再整備として、2010年より実施。毎年100本ずつ桜を植えていき、現在では1150本・植栽距離5.2kmとなった。こうした取り組みを通じて東京ドーム6個分の7.4haの荒廃地が解消され、不法投棄改善率も98%以上に向上。

毎年1月の最初の日曜から3月の最初の日曜にかけて7日間前後整備が行われるが、これまでの参加ボランディアは5000名を超えている。大勢で緊張感を保てるよう2時間を限度に作業をするため、これまで無事故。休憩時には焚き火で沸かした茶や持ち寄った漬物を囲み、参加者相互のコミュニケーションも弾む。

植栽にあたっては10mの植栽間隔を守りつつ、土地の特性を生かして「線」と「面」を意識。花の色が濃いジンダイアケボノを植えているため、桜の時期は非常に色が映える。

>こうした活動を通じて、存在が知られていなかった石碑を発見され、看板なども建てられ周辺も整備された。環境面でもオオタカが移り住んだり、長年光が差さなかった水路には40年ぶりにゲンジボタルも見られるという。

幻の熊谷桜を気仙沼へ

同市出身の武将・熊谷直実に由来し幻の桜といわれる熊谷桜の普及に努める桜ファンクラブも登壇。

安土桃山時代の文献にも「くまがゑ桜」の表記もあるなど同種の歴史は長いが、明治期以降は荒廃によって長らく幻の桜といわれていた。

1989年の桜の名所百選指定を機に同クラブは結成されたが、日本花の会農場にあった標本木を中央公園(同市宮町)に植樹して以降、同種の復活に尽力している。春と秋に接木の講習会を行い、育った同種205本を学校や公園など53か所に植えてきた。

2006年9月に直実の子孫13家24名が800回忌で全国から同市に来訪したが、その際に熊谷姓の多い気仙沼市との交流が始まった。2011年の東日本大震災の際には津波による被害も甚大だったが、同市からも義援金を送ったり復興支援の歌舞伎興行もなされた。

2014年からは、同種を気仙沼市内各地に植樹。津波で被害を受けた古屋館八幡神社や小学校、熊谷氏に関係のある寺院などへ毎年植樹を行なっている。これまで植樹した同種は824本。桜が植えられた団地に「桜ヶ丘団地」という名前がつけられるなど、同市との絆も深い。

1000本植樹を目標に「これからも熊谷桜を通じて熊谷と気仙沼の絆を深めていきたい」と同クラブ。

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漢字で語る「桜」

深谷市出身で熊谷商業高校時代に春のセンバツ甲子園に出場経験もあるタレントのゴルゴ松本氏が、「命の授業」をテーマに記念講演を行なった。

「日本人はどこから来たか」ということで同氏も日本人にゆかりのある漢字に興味を持ったが、ギャグの一つ「命」になぞらえて漢字を用いたトークを展開。漢字は記号と記号の組み合わせだが、普段見ている漢字がどう使われているか調べるだけでもたくさんの発見があるという。

元々は「櫻」と書いた「さくら」も「女」の上に「貝」の字が二つ。女性がつける首飾りのような美しい花としてつけられたという。また、「さくら」の「さ」は稲のことを指すが、桜が咲くことで気温が上がって春が来た、すなわち田植えが近い時期だとわかる。それゆえ桜は稲作を主としてきた日本人にとっては欠かせない花なのだが、「こじつけられるくらい、この国の言葉はすごい」と同氏。

最後には「命」を披露。

「命」は人のひと叩きというが、母の心臓の音を真似る命はその祖母や祖母も曽祖母と、受け継がれている。「一生懸命」という言葉にも「命」があるが、「まずは準備を心がけて」と同氏。そうすることで、命が様々なところにつながると説いた。

このほか次回開催地である茨城県桜川市の紹介や交流会、翌日には桜堤など現地見学会もなされた。

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