山麓の寶登山神社を参拝し終え、山の神が遣わしたとされる山犬に率いられながらヤマトタケルが登った宝登山を登る。
5分間の空中散歩ー宝登山ロープウェイ
ロープウェイで一気に頂上へ
標高497.1mと決して高いわけではない同山。ハイキングでもおおよそ1時間ほどで山頂へたどり着くことができる。
それでも多くの者は、山麓と山頂付近を結ぶ宝登山ロープウェイを利用する。
同路線は秩父鉄道の系列会社である宝登興業が運営。9時から17時台までおおよそ15分に一本(平日は30分に一本)の割合で山麓ー山頂駅間を往復する。
大人一人あたり運賃は片道¥490で往復だと¥830に割り引かれる。
山麓駅は寶登山神社社殿周辺よりおよそ5分ほど先を登った先にあるが、同路線の運行時間帯に合わせ長瀞駅と山麓駅を結ぶ無料シャトルバスも運行されている。
可愛いゴンドラで空の旅
山頂駅へ向かうゴンドラが到着。改札は到着直前になって開くが、感染予防のため1回あたり定員を制限している。
同路線では2台のゴンドラが稼働。「ばんび」「もんきー」と山の動物の名前がつけられる。それにしてもこのカラーリング、昔秩父鉄道で走っていた"チョコバナナ"電車と同じで懐かしくもあり可愛らしい。
ゴンドラはゆっくりゆっくり山頂を目指していく。
終点の山頂駅まで5分ほどだが、次第に町が遠くに見えるようになりまるで空中を散歩しているようだ。
夏でも冷涼快適・山頂部へ
そうして標高にして453m、山頂駅に到着。
地表部はムシっとした気候だったが、ここまで来ると幾分涼しく感じられる。
付近から望む景色
付近では武甲山や三峰山など秩父の山々を望むこともできるが、生憎この日の天気は曇りがち。山々にも雲化粧がかかる。
空前の長梅雨中の訪問が悔やまれるばかりだが、梅雨が明け晴れ渡るようになればきっと素晴らしい光景が広がっているに違いない。
ちなみに長瀞の市街地を望むとこのような光景。町の中央部を流れる荒川がしっかりと見てとれる。
蝋梅に月の三銘花 山頂部は梅の園
そんな山頂部は梅の園としても有名だ。
山頂駅周辺には1986年より植栽の始まった梅百花園が広がる。
早咲きの冬至・寒紅梅をはじめ、満月・田毎の月・滄溟の月という月の三銘花など約170品種470本の梅の木が植えられ、その品種は関東一とも言われる。例年2月上旬頃から咲き始め、3月下旬頃まで山頂部を白く染め香しい匂いを漂わせる。
さらにやや西に行ったところにある蝋梅園も有名だ。
花が少ない12月下旬から2月下旬にかけて、約800株3000本もの蝋梅が花を咲かせる。黄色く甘い香りを漂わせる花と遠くに望む秩父の山々や目下に望む街とのコラボレーションで多くのものを魅了し続けている。
花のシーズンはとうに過ぎてしまったが、新型コロナウイルスが騒がれ始めた今年初盤も山頂付近では例年と同じく梅が綺麗な花を咲かせ癒しを与えてくれていた。
ヤマトタケルが祀った奥宮
神秘的な空間
山頂駅から歩くこと5分、寶登山神社の奥宮へとやってきた。
同社の由来は前回2ページ目で紹介しているが、ヤマトタケルら一行が山の頂上で三神を祀ったのがこの場所になる。
周囲には鬱蒼と木が生い茂り、年季の入った鳥居も相まって神秘的な雰囲気を演出する。
この奥宮では毎年八十八夜(5/2)に祭事が執り行われ、麓の社殿から渡御し神楽も奉納される。つつじ祭りとも呼ばれる同祭は、秩父地方の農耕初めの目安ともなっている。
ここにも狼信仰
ところで麓の社殿の狛犬は犬だったが、こちらの奥宮では狼を象っている。
古くから狼信仰が根強かった秩父地域。ヤマトタケルらの前に現れた山犬も狼だったといわれている。
同社の創建にも関わる由緒ある場所だけに、こちらでは地域のシンボルとなっている狼を求めたのかもしれない。