先月6/18〜7/5にわたって開催された2019年6月の埼玉県議会定例会。
同会では5件の意見書と2件の決議が採択されました。このうち気になったものをピックアップしてご紹介させていただきます。
拉致被害者の即時帰国求める意見書
意見書全文
まずご紹介したいのが、国に対して北朝鮮による拉致被害者の即時帰国を求める以下の意見書です。
北朝鮮による拉致被害者等及びその家族は高齢の方も多く、拉致問題の解決は一刻の猶予も許されない状況である。
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会と北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会は、2回目の米朝首脳会談を直後に控えた本年2月17日、「全拉致被害者の即時一括帰国が実現するのであれば、私たちは帰ってきた拉致被害者から秘密を聞き出して国交正常化に反対する意志はありません。」との金正恩委員長宛のメッセージを発表した。
そして、2月27日に行われた米朝首脳会談の中で、トランプ大統領が拉致問題について提起し、安倍総理の拉致問題についての考え方を明確に伝え、その後の夕食会でも、拉致問題に関して米朝首脳間での真剣な議論が行われたとされる。
また、5月27日に行われた日米首脳会談の中で、安倍総理は、「拉致問題の解決に向け、自らが金正恩委員長と直接向き合わなければならない。」との決意を述べ、トランプ大統領からその決意を全面的に支持する旨の発言があった。その後、トランプ大統領は拉致被害者の家族と面会するなど、拉致問題の早期解決に向けて、日本に協力する姿勢を見せている。
国は、この機会に米国と一層緊密に連携し、いわゆる特定失踪者等の拉致の疑いが排除できない方も含む拉致被害者等全員の帰国実現が最優先の課題であることを念頭に主体的に取り組み、「対話と圧力」、「行動対行動」の原則を貫き、拉致問題の解決に向けての実質的な交渉を行うためにあらゆるチャンスを逃さず果断に行動して、拉致被害者等全員の即時帰国を実現させ、拉致問題を全面的に解決するよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。令和元年7月5日
埼玉県議会議長 神尾 高善
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣 様
外務大臣
内閣官房長官
拉致問題担当大臣
埼玉県内の拉致被害者について
2002年の日朝首脳会談後5名の被害者が帰国し、さらに2004年にはその家族が帰国した北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による拉致問題。政府認定の拉致被害者は17名ですが、この他にも多くの失踪者が北朝鮮に拉致された可能性があります。
埼玉県においても21名の安否がわかっていません。
その一人で政府認定の拉致被害者が、1978年に拉致されたとされる川口市在住の田口八重子さん(当時22歳)です。
1987年に起きた大韓航空機爆破事件の実行犯・金賢姫元死刑囚に日本語を教えたという李恩恵(リ・ウネ)と同一人物とされています。北朝鮮側は李恩恵の存在を否定しており、同氏も1986年に死去したとしています。
それでも金元死刑囚は同氏の写真を見て李恩恵はこの人と主張しています。2009年に同氏の兄・飯塚繁雄さんや長男の飯塚耕一郎さんと釜山で対面した際には、「八重子さんは生きている」と話しています。
現在も繁雄さんらが同氏をはじめとした拉致被害者やその疑いのある失踪者の返還を求めていますが、失踪者家族や関係者も高齢化しつつあり一刻も早い解決が求められています。
青少年等の自殺防止対策の強化を求める意見書
意見書全文
続けては青少年の自殺防止対策強化を求める意見書です。
平成29年人口動態統計によると、日本人の10歳~14歳の死因として自殺が戦後初めて1位であったことが判明した。また、警察庁が公表している統計によると、平成30年の全国の自殺者は2万840人と9年連続で減少しているものの、19歳以下の自殺者は増加している。
自殺の問題の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きているとされる。平成30年10月に文部科学省が公表した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、平成29年度におけるいじめの認知件数や不登校児童生徒数が過去最多を記録しており、学校で児童生徒が抱える様々な問題は深刻な状況にあることが推測される。
こうした問題に対応するために、国は、心の専門家として児童生徒や保護者との面談等を行うスクールカウンセラーと、家庭や地域の問題を踏まえ関係機関との調整等を行うスクールソーシャルワーカーが教職員と一体となり教育相談を行う体制の構築を目指しており、スクールカウンセラーによる週5日の相談を実施するための配置拡充や、研修を通じた質向上の取組等を行っているところである。しかし、児童生徒が抱える様々な問題にきめ細やかに対応するためには、これらの専門スタッフを更に充実させる必要がある。
また、本年5月に厚生労働省が公表したSNS相談事業の実施結果によると、平成30年10月~平成31年3月の相談件数は延べ13,177件、このうち約8割が10、20代の若者だったとのことである。国は、本年3月に自殺対策におけるSNS相談事業ガイドラインを策定したところであるが、今後、このような若者が相談しやすい体制の整備をより一層推進することが必要である。
さらに、学校において自殺防止に関する教育を推進しなければならない。
よって、国においては、青少年等の自殺防止対策を強化し、誰も自殺に追い込まれることのない社会を実現するため、下記の事項を実施するよう強く要望する。記
1 スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの増員に必要な財源確保を行うなど、配置に関する一層の支援を行うこと。
2 厚生労働省が実施しているSNSを活用した相談事業について24時間対応できるようにするとともに、同様の相談事業を実施する自治体に対する補助を増額するなど、若者が相談しやすい体制の整備を推進すること。
3 命の危機に陥ったときに誰にどう助けを求めればいいかを教える「SOSの出し方に関する教育」の一層の推進を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。令和元年7月5日
埼玉県議会議長 神尾 高善
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
財務大臣 様
総務大臣
文部科学大臣
厚生労働大臣
最悪になった未成年の自殺率
会期後ですが、先日16日には以下のようなニュースがありました。
政府は16日の閣議で、2019年版の自殺対策白書を決定した。人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺率は、18年は全体で16.5と9年連続で低下し、統計を取り始めた1978年以来最も低かった。ただ20歳未満は前年比0.2ポイント増の2.8で、78年以降最悪となり、若年層の自殺が深刻な現状が浮き彫りになった。
18年の自殺者数は前年比481人減の2万840人で、37年ぶりに2万1000人を割った。自殺率も過去最低を更新したが、他の先進国よりは高い状態が続く。
〜以下略〜
(「自殺率、未成年が最悪=SNS相談2万件超-政府白書」 時事通信 2019/7/16)
意見書にもあるように国内全体の自殺者が減る中で19歳以下の自殺者は増加傾向にありますが、人口10万人あたりの自殺率を見ると20歳未満では2.8と過去最悪になったといいます。
県内で始まった取り組み
県内においても自殺者自体は減少傾向にありますが、連日のように中高生の自殺が報道されるなど青少年の自殺が後を絶ちません。
県では先日7/10より県立高校の生徒を対象にSNSを活用した匿名性の相談窓口「STOPit埼玉」を開設し、生徒の抱える様々な悩みや不安等に対応する体制を整えています。(来年3/31まで)
それでも対象の学校や相談時間帯が限られてたりと誰でもいつでも気軽にというわけにはいかないようです。
ですので、24時間体制での相談窓口の開設や学校へのスクールカウンセラーの配置が求められているというわけです。