【埼事記 2023/3/19】地域社会の一員としてー外国人や子息との共生考えよう

■「競争も共生も、他者を認め、多様性を認めるという前提のうえに成り立つのであり、また共生と競争があって初めて、社会全体が繁栄できるのです」

京セラや第二電電(現:KDDI)を創業し昨年8月に90歳で生涯を終えた稲盛和夫氏(1932〜2022)の言葉だ。

小集団によるアメーバ経営を推進したことで各企業を成長させてきたが、集団の中でも各成員が互いに競いつつも認め合わなければ決してうまくいくことはなかっただろう。況んや社会をや。

経営のみならず人生訓として大切にしたい言葉である。

■2/16に川口市の郵便局に強盗に押し入り局員を切りつけて現金を奪ったとして、中国籍の男性留学生が先日3/16に埼玉県警に逮捕された。別の窃盗容疑で逮捕されていたが、「投資でおよそ200万円の現金を失った」と動機を述べている。犯人の逃走で地域にも不安があったが、外国人犯罪の増加を懸念する声も依然として根強い。

他方で、埼玉にもゆかりのあるハーフ選手が大きな喝采を浴びている。ワールドベースボールクラシック(WBC)で侍ジャパンこと野球日本代表に選ばれたラーズ・ヌートバー選手(25)だ。

米国籍で同国カリフォルニア州出身の同選手は、米国人の父親と東松山市出身の日本人である母親の元に生まれた外野手で、日本語名は榎田達治。MLBのカージナルズでプレイするが、この度日系人として初めて侍ジャパンに選出。1次ラウンドではヒットを量産し、日本の準決勝進出に大きく貢献している。準決勝の相手は強豪のメキシコだが、ますますの活躍に期待がかかる。

■それでも、日本における外国人やその子息の扱いは決して恵まれたものとは言い難い。

サーベイリサーチセンターが昨年調査したところによると、在日外国人のうち6歳~14歳の子どもがいる家庭で、子どもが学校でいじめに遭った経験があるか聞いたところ、いじめに遭ったと答えた割合が60.0%にも上った。2020年の調査結果では42.0%だったが、過半数を超える結果となっている。

加えて、日本への技能実習生に対する扱いも社会問題となっている。現在では各国から30万人近い技能実習生が日本で技能を身につけるため実習先企業で就労しているが、実習先で長時間労働やサービス残業を強いられるケースが多発している。加えて、外国籍だからということでパワハラやセクハラに遭うケースもある。極め付けに、上記のいじめにも代表されるように外国人を受容しない文化の影響で、彼らの居場所もどんどん狭まってしまっている。結果的に彼らが犯罪を犯したり失踪をするといったことにつながっている。そしてさらに彼らを受容しない文化が生まれと、悪循環になってしまっている。

■誰もが知っていると思うが、少子高齢社会が到来した日本はこの先本格的な人口減少を迎えていく。人口減少によって労働生産人口も減っていくし、消費人口も減る。それゆえ企業としても売り先縮小による減収だけでなく、担い手不足により事業継続が危ぶまれる。

そうなった時に、在日外国人の存在は今後の社会経済の維持発展を考える上において重要といえる。消費や生産の担い手であるのは間違いないし、文化的な違いはあっても逆に新たな文化も生まれてくることだろう。

そもそも埼玉にしても、日高市が7世紀後半に朝鮮半島にあって唐や新羅の連合軍に滅ぼされた旧高句麗(高麗)の渡来人が移り住んだ場所としてよく知られている。現在でも将軍標が立ち高句麗の王族を祀った高麗神社があるなど朝鮮文化が色濃く残る地域ではあるが、1300年も前から外国人との共生が行われ文化の融合が起きていた点は特筆に値する。

■「あなたの人生観を仕事からほかの領域、つまりあなたの心身の健康や人間関係、心の幸福、余暇、そしてほかの人々と共生することにまで広げれば、人生は少しずつ有意義なものになっていきます」

国際コーチ連盟初代会長のシェリル・リチャードソン氏の言葉である。

特にスポーツの世界では外国にルーツを持つ選手が活躍してきたが、彼らの力あってして躍進を遂げてきたという事実は誰が見ても明らかだ。それなのに、なぜ国籍や出自が違うというだけで彼らを「異人さん」としか見られないのか。彼らの力にあやかってばかりで、認めようとしないのはズルすぎやしないだろうか。自分たちにとって都合の良いところだけつまみ食いするというのは、不公平すぎる。

彼らから刺激を受けることで我々や地域にとっても得られるものは大きいはずだ。対照的な事例ではあるが、今一度地域における外国人との共生を考えていかないといけない。

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