【埼事記 2020/8/9】「埼玉コロナマン」泣き寝入りでいいのか

全国的に新型コロナウイルスの感染拡大が依然として止まらないが、先日7/29にはそれまで感染者が発生していなかった岩手県で感染者が発生した。昨日8/8時点で同県での感染者数は7名に上っている。

同県初の感染者発生の一報が流れると、Twitter上ではその感染者を非難したり所在を特定する動きと「#岩手の感染者を責めないで」などと感染者非難や特定を諌める動きが見られた。

後者の動きが生じたことは安心を覚えた反面、それでも納得できないことがある。

まだ同ウイルスの感染例がそこまで多くなく中国・武漢からのチャーター便により邦人帰国が行われていた2月中旬、同便で帰国した埼玉県内在住の40代男性の感染が報告された。この男性はこどもを連れて帰国しており、帰国後の検査では陰性。その後本人の希望でこどもと共に帰宅し外出を控えていたものの、帰宅後に親子共々感染が発覚したものだ。

この感染発覚の一報が流れると、ネット上でその男性は「埼玉コロナマン」などと名付けられ「バイオテロ」や「死ね」「責任取れ」などといった声が溢れ、当然男性の所在を特定しようとする者も現れていた。感染を防ぐためにも所在を公表するのが筋、というのが言い分だ。

あれから半年近く経過し、今では親子とも健康に過ごしていることだろう。しかし、依然として「埼玉コロナマン」という言葉は一人歩きしており、いまだに悪と見られているきらいがあるのは否定できない。岩手県の感染者とは真逆で一方的に責められ謝罪もなされず、このままでは男性は泣き寝入りするしかない状況だ。

「ウイルスの脅威が未知数だっただけに責めるしかなかった」という言い訳は通用しない。誰だって好きで感染しているわけではないし、そもそも「己の欲せざるところは人に施す勿れ」は人として常識である。そうやってクソミソ書き込んでいるうちに自分だって感染するかもしれない。それでいざ自分の所在が特定されコロナマンなどと非難されることになれば、どのように感じるだろう。

折しも今日は長崎原爆投下からも75年の節目になる。広島や長崎で被爆した人々の中には、周りからピカが移るなどと言われたという者も少なくなかった。技術は日進月歩と進歩しているにも関わらず、この構図は75年経っても全く変わっていないようだ。

女子プロレスラーの木村花さんがネット上での誹謗中傷を苦に自ら命を絶ったが、このようなネット上での暴言や根も葉も無い悪評の流布は名誉毀損になりうる。無論、特定しようとする者もプライバシー侵害にあたる。

いまだ全貌が見えない同ウイルスだが、本当に感染しているのは我々の身体ではなく心なのではないだろうか。ウイルスというやつは人の心を不安で蝕み、良心も弱らせるようだ。

心までウイルスに屈してはならない。多くの人々が苦しみ助けを求めている以上、人と人のつながりや助け合いこそが何よりの特効薬なのだ。だからこそ、他者を思いやり耳を傾け共に健康に生きていけるよう支え合うことが今最も必要だ。

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