【埼事記 2020/11/19】センチュリーで「議員辞めろ」 短絡思考に陥るな

■投票率の低下が取りざたされ国民の政治離れが叫ばれている中でも、税金の「無駄遣い」に関する報道は常に多くの者の注目を集めている。

当サイトのような小メディアでは扱う余地もないが、一般人と政財界人が同じ土俵に立つSNSの普及もあり、そのような報道がなされると瞬く間に広がり炎上することも珍しくもない。

■その炎が埼玉でも上がって来ている。

先日17日、民放のニュース番組で埼玉県議会の田村琢実議長に高級車の代名詞であるトヨタ・センチュリーが公用車として支給されていると報道があった。

番組の中で実際に田村議員に取材をしたところ、購入額約2000万円に及ぶ同車は同議員が議長に就任する前に県が前例に倣って調達したものであり、主に通勤に使っているという。本人としては自家用車のアルファードを支給して欲しかったそうだが、同車に乗ることは身分不相応と答えている。

議長としても同車ほどの車は必要ないというスタンスだが、税金の無駄遣いという声も上がっているという指摘に対しては、売却額やランニングコストを考えると他の車種に遜色なく使えると答えている。

そのような報道がなされた後、ネット上では議員辞職を求める声や「ムカつく」といった声が上がり、炎上の体を見せている。

■埼玉県議会に限らず、今も昔も国会や地方行政で議員や大臣や首長に公用車として高級車が支給されている。皇室もそうだ。

そのような光景を見ると、一市民として「ずるい」「無駄遣い」と感じるのは無理もない。

身分も高いだけに、見栄のようなものもあるのかもしれない。

それでも県議会議長のような要人が高級車に乗ることによって、屈強な作りゆえに身の安全が一般車よりも確保されうるという事情もある。高級外車に乗るスポーツ選手も同様ではあるが、そのような理由で調達費が必要経費として認められうる。

一都三県の議会議長に同車が支給されているの埼玉のみという。それでも同車を購入したのは同議員ではなく県当局で、同議員は県から支給された立場である。同議員が税金を使って無理やり買わせたという事実もなさそうだ。

それなのに同議員にいきなり辞めろというのは、あまりに短絡・感情的で合理性に欠けているのではないか。

■車という視点で言えば、最近の車は一般車であっても高級車と同様の技術が多数採用されており、品質面で言えば一般車と高級車で差も無きに等しくなりつつある。

減価償却の都合上、県議会議長支給車は同車をしばしの間使うことになろうが、その後は高級車とほぼ同等な品質を有する一般車に切り替わることも考えられうる。

■税金の無駄遣いを報じる報道を見て、「〇〇辞めろ」などと批判を言うのは簡単だ。

それでも本当にそう思っているのであれば、いっそのこと県選挙管理委員会に議長解任請求でも出してみればどうだろうか。有権者の3分の1以上の署名が集まれば請求することができる。

議長解任請求とまでは言わないまでも、住民監査請求という方法もある。住民一人で地方自治体の財務上の活動に関して監査を求めることができる。

これらは選挙権や生存権と同様、我々市民に与えられた権利の一つでもある。

■と言ったところで、本当に行動を起こす者はおそらくそう多くはないことだろう。

SNSの発展もあって世の中の不満をいう声は多いが、いざ問題解決へ市民運動や住民訴訟を起こそうということになるとなぜか皆消極的になる。どうもそういうことは手続きが煩雑で、職場や近所などで自己のイメージが悪くなるなどといった事情があるようだ。

■小生も人のことをやいのやいの言えた身では決してない。それでも、相手の事情も考えずに一方的に悪だと決めつけるのは、思慮が浅いと言わざるを得ない。

怒りを感じるのはもっともではあるが、その裏の事情にも目を向けないと、吹き込んだ側の思う壺になってしまう。

■小メディアを気取っていてなんだが、今回の報道に関しては報じたマスコミ側にも再考を求めたい。

最初から落とし所を決めるのではなく、事実を伝えるのがマスコミ・メディアの役割なのだから。

改めて真実を伝えるメディアの役割について、小生なりにも考えさせられる炎上劇であった。

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