【埼事記 2021/3/28】埼玉高速鉄道開業20周年 延伸計画に白黒つけよ

■「『1人の10歩より、10人の1歩』と私はよく言っている。鉄道はチームワークであり、優秀な人間が1人でいくら頑張っても動かない。その10人が2歩目、3歩目への余力を残しながら、足を前に踏み出し続けることが大切だ」

JR東海にて2014〜2018年の間に社長職を務めた、柘植康英現会長の言葉である。

旧国鉄以来のたたき上げで、多くの現場を見てきた同氏の経験が生んだ言葉といえる。

■本日3/28は、埼玉県内を走るある鉄道路線にとって記念すべき日である。浦和美園から東川口・鳩ヶ谷を経て赤羽岩淵へと至る、全8駅・全長14.6kmの埼玉高速鉄道線だ。

日韓W杯を翌年に、さいたま市誕生を約1ヶ月後に控えた2001年に開業して、今日で20年となった。

もともと計画自体は地下鉄7号線(東京メトロ南北線)の延伸区間として1970年代より存在していたが、埼玉県や浦和市(当時)など沿線自治体や交通事業者による第三セクターとして運営がなされることになった。

約2,600億の建設費を投じ日韓W杯に先んじての開業となったが、開業以来利用者が伸び悩み深刻な債務超過にも悩まされた。それでも事業再生ADRを経てここ5年ほどは黒字を達成している。

■そのような同路線について、岩槻・蓮田への延伸計画が存在している。

開業前年となる2000年の運輸政策審議会においても「2015年までに開業することが適当な路線」とされたが、採算性や債務超過から未だ着工にすら至っていない。

県やさいたま市もこの延伸を長期プロジェクトとして延伸協議会を構成し、有識者や地域関係者らとの協議・検討を進めている。それでも少子高齢化による人口減少の時代に入り沿線開発が進まない可能性もあることで、なかなかGOを出せていないのが現状だ。

■一部では蓮田から久喜や羽生まで延伸を求める声もあるが、埼玉と名前にあるにも関わらず現状では「川口高速鉄道」に留まっている。

旧岩槻市も同路線延伸を条件にさいたま市へと合併したが、今の状況では岩槻地域はもちろん県域に与える恩恵はごく限られている。

そのためにも地域の悲願である延伸が求められるが、かつて蓮田から同様のルートで川口までを結んだ武州鉄道が累積赤字で廃業したように、郊外部の沿線では開発が進まず利用者が伸び悩む恐れもある。

それだけに、二の足を踏む気持ちはわかる。

■それでも延伸するのかしないのか、早急に白黒をつける必要がある。

とりわけ建設費が嵩む鉄道事業だが、少子高齢化が現在進行形で進んでいるだけに時間が経てば経つほどペイできる可能性も損なわれる。地域でも協議会を立てるなどして検討を進めているが、それだけでも少なからぬ費用や労力が求められる。

それゆえ、一刻も早く白黒をつけてやるならやる・やらないならやらないをはっきりした方が理にかなっている。

2015年までに開業から2025年になどと想定開業時期もずれ込んでいるようだが、ズルズル検討や協議を続けて決断を先伸ばしにしていると、それだけでも大きな損失だ。

沿線地域の期待を裏切ることにはなるが、計画凍結という選択肢も眼中に入れていいのではないだろうか。

■とはいえ、開業直後には埼玉スタジアム2○○2以外にめぼしい施設などがなかった浦和美園駅周辺も、イオンモールが開業するなどして20年で街の様相も大きく変わった。

人口減を嘆くのは簡単だが、東京も近いだけに必要な手さえ打てば伸びる可能性は少なからずある。

種々の状況を考慮し、どのような決断を下し動いていくか。地域としても注目したい。

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