【埼事記 2020/9/6】「公助が先」「まず国に頼る」 なぜ共助を蔑ろにするか

■安倍首相の辞任表明から1週間が経過し、来週9/14に国会・都道府県代表投票が行われる自民党総裁選に関して立候補への動きが大詰めを迎えている。

石破茂元幹事長や岸田文雄政務調査会長、そして安倍政権を支えてきた菅義偉官房長官の3名がこれまでに立候補を表明している。

■その中で、菅氏の発言が巷で波紋を呼んでいる。

記者会見で立候補を表明した9/2に同氏はNHKの報道番組に出演したが、その際に自身の政治理念を「自助・共助・公助」と語った。

これについて、主にネット上では「まずは国に頼ってくださいと言え」や「何よりも公助が優先」「自己責任社会の強要」「国は何もしないということか」といった声が多数上がっている。

■確かに行政府の長を目指す者として、どのような公助を実現するかスタンスをはっきりすべきだ。

しかし、「まず公助が先だろ」というのはあまりに穿った見方ではないだろうか。

そもそも「自助・共助・公助」とは防災においてよく語られる言葉だが、まずは自分で自分を助け(自助)そこから家族・企業や地域コミュニティで共に助け合い(共助)行政による救助・支援(公助)を最後に受けるというものだ。

障害や高齢で体が思うように動かないや財産がないなどの理由で自助がままならない層も一定数存在している。そのような人々には共助や公助が必要になろうが、誰もが最初から公助に飛びつくというのはいささか軽率な考えに見える。

■というのも公助に関しても穴は多い。

直近の例だと新型コロナの感染拡大で政府によるマスク支給がなされたが、地域によって配布時期に差があったり不良品が発覚したり、そもそも1世帯あたりの2枚だけで1世帯当たり平均人数2.60人という事実を想定していないなど多くの問題があった。休業補償にしても、基準が前年の半分以下で6割の事業者の扱いが問題になったり一律支給なので事業者の状況に必ずしも合致し得ないといった問題が起きていた。

ハースバーグが提唱した二要因理論というものがある。この中で組織開発において給料や昇進など目に見える「報い」は一時的に組織構成員を満足させるも恒常的な満足には至らないとされている。

たとえ公助を先に求めたとしても、公助自体に穴も多いだけに、結果また公助を求め不満になってという負のサイクルに陥りかねない。

■それゆえ、自助・共助というものはより自分を助けるために大切なのだ。一律に休業補償をもらっても固定費が高く足しにもならないという事業者も多い。結局は客単価を掴んだほうが確実だしペイできる可能性も高い。

それでも果たして、公助を先に求めるもその公助に満足できず自助・共助に努める者はどれだけいようか。人間というのは餌付けされるとそれに甘えたくなってしまうもの。自助共助に励む者はそこまで割合が多くないと見られる。

■先述したように自助が叶わない層もいるし、公助も必ずしも問題解決にはなり得ない。だからこそ、共助が求められているはずである。

共助があるからこそ、必要な人々に必要な施しがより早くより確実に届く可能性が高まる。

先日小生は地域福祉の発展に向けてとさいたま市の社会福祉協議会に加入したが、同協議会への加入も年々減少しジリ貧を強いられている現場も多い。また、共に助け合うための自治会の加入率低下も全国的な問題になっている。

何より他人に無関心な人が本当に増えていると感じる。先日自転車で道を走っていたら道の向かいに高齢女性が倒れていたが、人通りもあったのに誰も近寄ろうとしていなかった。これは只事ではないと思わず自転車を放っぽり出し向かいへ横断、女性の手をとって家まで送っていったことがあった。

■公助といえばまずは公助を、自助といえば自己責任だとみな口を揃えて言う。なぜその間にある共助をここまで見て見ぬ振りして蔑ろにするのか。

「他人が信じられない」「見返りがない」多くの意見があろう。

しかし、人が一人でできることには自ずと限界があり、時には周りに助けを求めることも必要だ。今自分が普通に生きていても、その裏ではインフラ供給に携わる人々や地域の安全向上に務める人々と様々な人々の営みがありそれが我々一人一人を支えている。

必ずしも見返りはないのかもしれない。しかし結果的に周りの命という何事にも変えがたい大きなものを救える。それによる満足感たるや、他に比べるものはあろうか。

■公助を求めることは簡単だ。しかしそれが魔法の杖ではない以上、我々はまず自らがどのように社会と関わり、自分にしても他人にしても少しでも苦境を抜けるにはどう振る舞うか考えるべきではないだろうか。

自分の苦しみを知っているのは、他でもない自分自身だ。その克服に何をすべきなのか、杓子定規よりもずっとわかるはずだ。

その上で共に助け合っていき時には周りに助けを求める。新型コロナにより不安が広がる社会においてこそ実践していこう。

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