大宮以外の埼玉ということで、今回は埼玉県南部の新座市にフォーカスを当てる。
東京のすぐ隣にありながら、往年の武蔵野の面影を色濃く残している。
新座市のプロフィール
まずは簡単に街のプロフィールを紹介する。
同市は県南部に位置する人口約16万4千人の市。ほぼ全域が武蔵野台地に位置する市域は所沢市・志木市・朝霞市などに囲まれている一方で、その半分は東京都に接している。
このためベッドタウンとして開発が進められ凸版印刷や不二家など工場・倉庫も多く立地するが、田園地帯も残っており昔ながらの武蔵野がそのまま広がっている場所もある。また十文字学園女子大学や立教大学など教育施設も多い。
交通は街の東西にJR武蔵野線が走り、南北に関越自動車道が走る。また北東部には東武東上線が走り志木駅が位置する。市域の中央部は鉄道路線が通らないものの、都営地下鉄大江戸線の延伸構想があり、その際に駅が設けられる計画だ。
市名の由来
新座という地名の由来は古く、実に1200年以上前の奈良時代に遡る。
朝鮮半島にあった新羅国の僧らがこの地に移り住み、758年この地に新羅郡(にひくらぐん)が置かれた。平安時代に読みは同じで新座郡と改称されるが、これが由来となっている。
書物や記録によって呼ばれ方は多少異なっているようだが、いつしか現在の「にいざ」と呼ばれるようになった。
現在の市域は1955年に固まり、1970年11月1日に現在の新座市として市制が敷かれた。ちょうど今年は市制50周年にあたる。
至る所にあのロボット
街の中心・新座駅
同市の中心はJR武蔵野線の新座駅。1日約21,000人が利用する。
駅周辺には国道254号線(川越街道)を挟んで新座貨物ターミナル駅もあり、物流拠点として機能している。
特に中心市街地として発展している南口ロータリーに降り立ったが、案内板を見ると鉄腕アトムが元気に歩いている。
そういえば駅の発車メロディも「空を超えてラララ星の彼方」と同作アニメのテーマ曲だったが、なぜアトムなのだろう。
3つの顔持つ複合施設・ふるさと新座館
同駅南口から10分ほど南に歩いてふるさと新座館へとやってきた。
2012年11月にオープンした同館はホールやJAあさか野新座農産物直売センターに野火止公民館という3つの顔を持つ複合施設。地域のふれあいの場として多くの市民に利用されている。
そんな同館の一角には、やはりアトムの立像が鎮座している。
果たして同市とアトム、いったいどのような関係があるのだろうか。
アトムも立派な新座市民
誕生の年に住民登録
同立像のすぐ近くにその関係を示す重要なものがあった。
アトムへの特別住民票だ。
作品内でアトムは2003年に誕生したことになっているが、ちょうどその年に同市では「住民登録」がなされたというわけだ。
以来駅の発車メロディなど街の至る所にアトムが登場しているのだが、なぜ新座なのだろうか。
漫画の神様も気に入った武蔵野
その答えを探るべく、さらに同館から歩いて5分ほど離れたこの場所に向かった。
建物上部にアトムの顔。このビルこそが、同市とアトムを結びつける手塚プロダクション第1スタジオだ。
残念ながら中に入ることはできないので、外観を拝む。
同社は手塚治虫氏の漫画作品の版権管理やアニメ制作などを行うが、新座スタジオは1986年に設けられた。もともと空きビルだったというが、生前の手塚氏が窓から見える雑木林など周辺の武蔵野の光景を気に入っていたことが開設の決め手だったとされる。
以来3年後の1989年に亡くなるまで同スタジオでも作業をしていた。その作業場は当時のまま同スタジオ内に残されているという。
そのような縁もあり代表作であるアトムが街の顔となったのだ。