【埼玉県議会短信】部落差別に係る調査など質問ー2020年9月定例会一般質問から

埼玉県議会では10/14(水)まで9月定例会が開かれている。

7日目から13日目にかけて、各会派所属議員による一般質問がなされた。一部答弁内容を紹介する。

紙面の都合上、一部表記について省略している箇所があるので了承いただきたい。

新たな新型コロナウイルス感染症専用医療施設(仮設)の整備・運営について

新井豪議員(自民)から、同会で提出された一般会計補正予算で明記があった新型コロナウイルス感染症専用医療施設に関して質問があった。

質問内容

新型コロナ禍下において、感染対策と同時に検査体制強化や療養施設・救急搬送施設の確保など、再拡大に備えた医療体制整備が求められている。
特に感染者向けの病床確保に関して、県では感染ピークとされるフェーズ4にあたり200床ほど不足が生じている。
このため一刻も早い病床確保と専用医療施設整備が喫緊の課題となっている。

会派ではコロナ患者への医療と他の疾患などの患者への医療両立へ、コロナ患者へ向けた時限的専用医療施設整備や既存の医療体制と整合性を図り財政的な支援実施を県に求めてきた。

その結果、同会で提出された一般会計補正予算第7号にも同施設整備費が約37億円(今年度負担分)盛り込まれ、既存病床合わせ320床分の確保への道筋が立った。

医療機器などイニシャルコストは国が全額負担するが、同施設整備にあたっては運営主体となる医療機関が確実に運営できることが重要となる。
特に補正予算計上額には、人件費など運営にかかる費用は含まれていない。

県としてどのような支援を行い確実な運営をどのように担保するかを尋ねる。

質問への回答

この質問に対して、関本保険医療部長は以下のように回答。

同施設を病院外に設立することで、病院全体の経営改善につながる。
既存の受け入れ病床を専用医療施設に移すことで、コロナ患者がいないホワイト病院となり、
院内感染の心配が減って外来患者が安心して通院できる。その結果収益増が見込まれる。

同施設整備病院は重点医療機関となるが、診療報酬と空床確保などの補助金単価はいずれも1日52,000円に設定している。これは2018年の1病床あたり平均収入を上回る額となる。
今後国は予備費を活用し、さらなる増額を予定しているという。

加えて同施設には熟練したスタッフを集めて配置するが、空いたポストに新たな人材をあてることで人材コスト増大が見込まれる。

設立する医療機関がしっかり運営できるよう、国による診療報酬や空床確保など単価増に対応し、県としても財政支援を検討していく。

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部落差別に係る調査について

山本正乃議員(民主フォーラム)からは、部落差別に係る調査について質問があった。

質問内容

未だに残る部落差別(同和問題)の解消へ向け、2016年12月に部落差別解消推進法が施行された。同法では同差別解消を推奨し、差別のない社会を目指す。

昨年6月には、法務省が同法第6条に基づき同差別に係る実態調査を全国で実施し、6月に結果が公表された。

(法務省調査結果より)

その中で「あなたの家族や知人などが過去に部落差別による被害を受けたり、それにあたる言動をしているのを見聞きしたことがあるか」という質問に対し17.5%の人があると回答していた。
被害内容としては結婚や交際が最も高く(58%)、就職や職場(26.8%)、出身同和地区公表(21.3%)と続く。

しかし同差別に関する啓発イベントや講演会に参加した割合は19.3%に過ぎず、およそ8割が一度も参加していないことになる。
埼玉含む関東では研修会などに参加したことない割合も86%と圧倒的多数だったという。

同法を知っている者の割合も全体で8.7%にとどまった。県発行の資料にも同法趣旨が載っているが、一層の啓発が必要と考えられる。

同調査と合わせて県内58市町村が独自に意識調査を行なった。このうち結婚・就職時の出生地調査に関して、6割が「差別につながる恐れがあるのですべきでない」と回答していた。
しかし「ある程度仕方がない」と答えた割合は24.2%、「調べるのは当然」でも1.7%で、4人に一人は調査に肯定的であることがうかがえる。

これら意識調査結果に関して、および県としても政策推進の基礎にすべく県民意識調査をすべきと考えるが、県民生活部長の見解を聞く。

質問への回答

同質問に対して、山野県民生活部長は以下のように回答。

国調査において「部落差別が不当な差別である」と知っている割合は85.7%など、国民の間に同差別に対する正しい理解は進んでいる。

一方で「結婚相手が旧同和地区出身であることが気になるか」という質問に対し、15.8%が気になると回答している。
市町村調査でも、旧同和地区を避ける割合は3割に及んでいる。

これらのことから、同差別は不当とわかっていながらも、心の中では未だ偏見や差別意識が残っていることがわかった。同差別解消には、一人一人が差別問題を正しく理解し自らのこととして意識を見つめ直すのが重要となる。県でも講師派遣による講演会や研修会を行ってきたが、引き続き正しい理解を広げていくため粘り強く取り組んでいく。

県としての調査実施に関して。近年ではインターネットでの誹謗中傷など新たな人権問題が発生している。社会環境の変化も踏まえ、来年度に埼玉県人権施策推進指針を改定する。

そのための基礎資料として、同和問題だけでなく女性や高齢者など多様な人権課題を含めた総合的な県民人権調査を実施する予定である。
同調査結果を踏まえ、差別なき社会の実現に向け積極的に取り組んでいく。

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