【さいたま市議会短信】市民憲章制定への動きが加速か?ー2020年6月定例会より

さいたま市議会では6/3より6月定例会が始まり、6/26(金)までの会期で開かれる。

新型コロナ対策などを踏まえた補正予算や市長提出議案などが審議される予定だ。

現在審議中ではあるが、同会に提出された議案や予算案には市民憲章制定に関するものが含まれている。来年2021年にさいたま市は誕生20周年を迎えるが、それに合わせて制定に向けた動きが加速しそうだ。

市民憲章とは?

まずはじめに市民憲章とはいかなるものか。

外部自治体になるが、北海道伊達市・大滝村合併協議会では以下のように定義する。

まちの目標であり、市民と行政が一体となって向かうべき方針を示すもの
行政のあるべき姿と期待される市民象を表現し、市の行政運営の方針となるもの
市民が自主的・実践的にまちづくりに参加するための行動規範となるもの

(北海道伊達市・大滝村合併協議会、市民参加条例検討委員会より)

すなわちまちの目標であると同時に、行政だけでなく市民も自主的・実践的に街作りに参加するための行動規範とされる。憲章はその地域に住む者にとってアイデンティティを形成するものであり、共通の価値認識として機能しうる。

埼玉県内でも戸田市や坂戸市や入間市など多くの自治体で制定されているが、さいたま市では制定には至っていない。

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さいたま市での検討経緯

誕生20周年を前に制定可能性が高まりつつある市民憲章だが、以前にも制定が検討されたことがある。

旧4市における市民憲章

さいたま市が合併する前に存在した旧4市(浦和市・大宮市・与野市・岩槻市)にはいずれも市民憲章が存在していた。

このうち旧大宮市においては以下のようなものだった。

武蔵野の台地にひらけ、交通・経済の要衝として発展する私たちのまち大宮は、武蔵国(むさしのくに)一の宮の「おおいなる宮居」からおこりました。
私たちは、先人の文化や伝統を尊び、誰もが心のふるさとと呼べるよう、明るく平和なまちをきずくため、市民の共通の願いとして、この憲章を定めます。

1 私たちは、郷土の自然をたいせつにし、環境をととのえ、美しく魅力あふれるまちをつくります。
1 私たちは、誰もが希望をいだき、生きがいを感じられるよう、心のふれあうまちをつくります。
1 私たちは、かけがえのない生命や健康の尊さを自覚し、安心して暮らせるまちをつくります。
1 私たちは、働くことに喜びをもち、互いに力をあわせ、豊かで活力にみちたまちをつくります。
1 私たちは、世界につながる広い視野をもち、未来をひらく教育文化のまちをつくります。

なお同市民憲章は、旧大宮市の市制移行40周年を記念して1980年11月3日に制定された。

2度検討も制定に至らず

2000年に旧浦和・大宮・与野市による合併協定書が締結されたが、市民憲章については「新市において検討する」と明記されていた。

そして2001年にさいたま市が誕生し、2年後の政令指定都市移行に見据えて記念事業として市民文化部で制定が検討された。しかし制定には至らず、旧市憲章の研究や制定の必要性や活用法などを庁内で調整する期間が長く続いた。

一方で旧岩槻市を合併し終戦60年となった2005年には議会での決議を受け止め、平和都市宣言を制定している。

制定の機運が再度高まったのが市誕生10周年となる2011年。市も制定に前向きだったが東日本大震災の発生などもあり制定には至らず、政令市移行10周年となる2013年の制定を目指した。2012年当初予算には900万円の調査費も計上されるなどしたが、やはり制定には至らなかった。

誕生20周年での制定検討を明言

2018年2月定例会では関根信明議員(現:埼玉県議会議員)が市民憲章の検討状況について質問を行っている。

これに対して当時の高橋篤副市長は以下のように回答した。

まず、市民憲章についてでございますが、平成12年9月に調印されました合併協定書において、新市において検討することとされていることや、合併後の議会における御議論等を踏まえまして、市民憲章を制定する意義や必要性、または制定するとした場合の時期、制定による効果や活用法などにつきまして、これまでも庁内で検討を行ってまいりました。
これまでの検討から、市民憲章につきましては、市民と市が一体となってさまざまなまちづくりの取り組みを進める中で、市民の機運の高まりを受けて進めるべきであろうという考えに至っております。そのため、市民の皆様に将来を見据えた都市づくりのビジョンに関して御意見を伺っていく機会などを通じまして市民の機運を探り、本市誕生20周年となる2021年を念頭に置きながら、引き続き市民憲章の制定について検討してまいりたいと考えております。

この場において市としても誕生20周年となる2021年での制定を目指すと明言した。

庁内でも検討をしていたが、市民の機運がまだ十分でないことが制定に至らなかった理由のようだ。

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今定例会で審議中の議案より

かくして来年の制定に向けて、市民憲章に関して6月定例会では以下2点が審議されている。

市民憲章審議会条例の制定

一つが市長提出議案のさいたま市市民憲章審議会条例の制定についてだ。

同条例は市民憲章の制定に関して必要な事項を審議する審議会を設置するもの。同会は学識経験者や関係団体や市民代表者など20人以内からなるとされる。必要があると認めたときは、委員以外の者に対し出席を求めて説明もしくは意見を聴いたり資料の提出を求めることができるということだ。

委員の任期は市長の諮問に対し審議会が答申するまでの間とし、公布の日より施行としている。

補正予算への企画総務費計上

加えて同会で提出された補正予算において企画総務費が580万8千円計上されている。

同費は市民憲章制定事業にあてられ、審議会の審議を踏まえ市民意見を取り入れながら市民憲章案の作成を行うとしている。

制定に向けたスケジュールとしては8月に審議会で審議を行い、9月に市民意見を聴取。草案ができるのは来年2月ごろになる見込みだ。

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