道路への区画線描画や表示貼り付けなどを手掛けるカンセイ工業株式会社(さいたま市北区吉野町、飯島寛己代表取締役)が、第10回日本でいちばん大切にしたい会社大賞(主催:人を大切にする経営学会)において中小企業庁長官賞を受賞した。
全従業員の幸せを追求するという経営理念のもと、個々の社員のモチベーション・能力向上に向けて実施してきた取り組みが評価されての受賞となった。
日本でいちばん大切にしたい会社大賞とは
東日本大震災が発生した2011年より毎年授与され、今年で10回目を迎える同大賞。
「人を幸せにする経営」と言葉にするには簡単だが、実践は決して容易ではない。従業員やその家族だけでなく、外注先・仕入先、顧客、地域社会、株主という5種類の人々幸せにしていけば結果的に業績も向上しうる。
そのような企業を1社でも増やしたいという思いで、同大賞は始まった。
自薦および他薦で応募を受け付けており、以下が応募資格となる。書類審査や経営トップへのヒアリング審査により受賞企業を選定する。
- 希望退職者の募集など人員整理(リストラ)をしていない
- 仕入先や協力企業に対し一方的なコストダウン等していない
- 重大な労働災害等を発生させていない
- 障がい者雇用は法定雇用率以上である
*1)常勤雇用45.5人以下の企業で障がい者を雇用していない場合は、障がい者就労施設等からの物品やサービス購入等、雇用に準ずる取り組みがあること
*2)本人の希望等で、障がい者手帳の発行を受けていない場合は実質で判断する - 営業利益・経常利益ともに黒字(除くNPO法人・社会福祉法人・教育機関等)である
- 下請代金支払い遅延防止法など法令違反をしていない
カンセイ工業について
今回同大賞のうち中小企業庁長官賞を受賞した同社は、1994年に桜区白鍬にて創業。2011年より現在の本社地へ移転し、東京・神奈川・千葉・茨城に拠点を有する。
主となる業務は道路・駐車場への区画線描画。それ以外にも標識や点字ブロックの設置など、道路交通環境整備に関して幅広く事業を手掛けている。
従業員数は約100名で正社員の他にアルバイトスタッフも活躍しているが、アルバイトであっても賞与・報奨金・退職金制度を完備しているのが大きな特徴。
受賞に至った背景
創業以来、人を大切にし人の成長をサポートすることが会社の発展に繋がるという信念のもと事業を展開してきた同社。
先代で創業者の関田稔氏(現顧問)の頃より行われてきた取り組みが今回の受賞につながったと、現行の飯島社長は評する。
同社の経営理念
(同社HPより)
同社の経営理念は、「社員一人ひとりが自主的に行動し、共に助け合い、顧客の満足する品質・対応を限りなく高めて社会貢献を果たし、全従業員の幸せを追求する」というもの。
その中でも「社員一人ひとりが自主的に活動し、共に助け合い」という部分を特に大切なポイントと捉えてきた。
そこで社員の内面から意欲が湧き出てくるような仕組みおよび共に助け合う精神を醸成していく仕組みを会社の制度やルールとして構築、実践することに同社としても注力してきたという。
社是の「つよくやさしく」とは、仕事を通じて自他ともにつよくなって人にやさしくあれという意味が込められている。
展開した取り組み
作業標準の設定ースキル向上に向けて
これまで区画線工という職務において習得すべき技能は、先輩の背中を見て覚えるといういわゆる職人的な環境のもとで身につけていくというのがこの業界における慣例であった。今でもそのような価値観が主流であるといっても過言ではないだろう。
そのような中、同社ではそれらの職人的な暗黙知を広く共有し、未経験者であっても早い段階から専門性を身につけられるようにすることが大事だと考えた。
そこで全工程の作業マニュアルを作成・導入し、工程における作業の一つひとつの難易度・重要度を整理。
加えて職務の遂行に必要な技術を社内スキルとして6つに区分し、それぞれの技術レベルに合わせて技術手当を支給している。
それにより、従業員は専門性が身につくにつれ収入や生活が安定し、一人前の社会人として自立していくことができる。そして社内スキルという明確な基準とスキル習得をサポートするマニュアルがあることで、仕事に対して自発的に意欲を見出すきっかけになりうる。
自己・360度評価を導入ー人事面での取り組み
人事制度においては仕事における役割を等級ごとに設定し、そこで定義されている要件を満たすことで昇格・昇進を行うという仕組みを採用。
昇格・昇進に向けての各社員の評価の仕組みについては、上司による部下の評価に加え、自らを評価するという自己評価、部下が上司を評価するという360度評価を導入している。
昇格にあたっては自薦・他薦での推薦制度を設け、場合によっては降格の推薦もできるという厳格な運用を行ったり、年に1度上司を選べるというユニークな制度もあるという。
このような同社の人事制度は、仕事ができるということと人望があるということがセットになってないと人の上に立つことができないという会社の意志を反映したもので、周りの社員と共に助け合うことが大事であるという社員に向けてのメッセージにもなっている。
今後に向けて
「まだまだ道半ばではありますが、これからも創業者の思いが詰まった経営理念を維持・発展させていくことで、世の中になくてはならない会社であり続けたいと思っております」と飯島社長。
今後も車と歩行者や自転車がそれぞれ安全・快適に通行できる交通環境整備に貢献していくとしている。
なお、例年3月に行われる同大賞報告会は新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期となっていたが、9/12(土)にきゅりあん(東京・品川区立総合区民会館)大ホールにて開催される。
会場参加とオンライン参加から選択でき、会場参加の場合は¥2,000(一般者のみ)
同大賞ウェブサイトで8/31(月)まで参加申し込みを受け付けている。