移築された誠之堂・清風亭

解体危機から移設へ

論語の里からはやや離れますが、大寄公民館という場所にやってきました。

やはりレンガ調の外観が目を引く公民館ですが、ここにも渋沢にまつわるあるものがあるとか。館内の受付にお声がけをしシルバー人材センターのガイドの方がそこへと導いてくださいます。

それが同館外に移築された国の重要文化財である誠之堂(画像上)と埼玉県指定有形文化財の清風亭です。

後述するように前者が渋沢栄一の喜寿(77歳)を、後者が第一銀行の2代目頭取である佐々木勇之助の古稀(70歳)を祝い、それぞれ同行有志の手によって東京・世田谷区にあった同行の運動施設である清和園内に設けられました。いずれも同園の集会所や休憩所として使われていたようです。

その後同園は聖マリア学園によってその敷地の大半を売却され、1997年には学園の拡張工事よりこれら2軒の建築も解体危機に逢います。歴史的価値がある建物をなんとか残すことはできないかということで保存運動が起こりました。最終的には解体1ヶ月前というギリギリのタイミングで渋沢の故郷である深谷市に移築されることが決まりました。

建物を数個のブロックに分けた移築工事を経て、1999年にいずれもこの場所に移築されたというわけです。

おしゃれレンガの誠之堂

まずは誠之堂から見ていきます。清水組(現在の清水建設)の田辺淳吾によって設計され1916年に建てられた同堂は、儒教の中庸にちなんで命名されました。

特徴的なのは外壁に使われているレンガ。焼き上がりの温度によって色加減が異なるものを用いており、カラフルな印象を受けます。白っぽいレンガについては短い辺を表に積むフランス積と呼ばれる手法を採用していますが、こうすることで横から見ると浮き上がって見えているのと同時に、模様を作ることができるのです。

これらのレンガはいずれも深谷市内で作られています。

さらに外壁にはこんな模様も。これは篆書体(てんしょたい)で「喜寿」と描かれており、渋沢の喜寿を祝うのにふさわしいものになっています。

他にもすずり石でできた屋根にある風見鶏は「東西南北」と方向が振られており、ここにも四書五経を幼少時より嗜んだ渋沢の趣向が出ています。

ステンドグラスがおしゃれな館内

そして館内の模様です。実際に渋沢の喜寿祝いが行われた館内には当時使われたものを再現した椅子やテーブルも置かれています。

特に目を引くのは奥の暖炉を囲む窓に使われた6面のステンドグラス。これは中国・漢代の「画像石」の図柄を模したもの。渋沢を貴人に見立てて演者や料理人など宴の模様が描かれております。

このように西洋建築を基本としつつも、中国や朝鮮などアジア各地の衣装が散りばめられているのも特徴です。

その外にはグラウンドが広がりますが、これも世田谷の清和園時代を意識しての配置。後述する清風亭と並んで当時と同じ配置になっています。

MVにも使われた清風亭

最初期の鉄筋コンクリート造り

同堂の隣に建つのが、第一銀行の2代目頭取であった佐々木勇之助(1854~1937)の古希を記念して1926年に建てられた清風亭です。全て同行行員の出資によるもので、清和園内に同堂と隣り合わせで建っていました。

関東大震災後に建てられた同亭は鉄筋コンクリート造りで、鉄筋コンクリート造りの建築物としては初期のものに当たります。

窓やベランダ部にアーチ状の曲線が描かれているのが特徴。瓦はスパニッシュ瓦で建物の角やアーチの縁にはスクラッチタイルがあしらわれています。

意外な使われ方も…

館内の模様です。渋沢も同席して佐々木の古希祝いが執り行われましたが、当時使われた椅子やテーブルもそのまま展示されています。

以降は園内の集会所として使われており、同行運動会の表彰式もここで執り行われたそうです。

移築後も市の施設として貸し出しが行われた同亭。2004年には昨年引退した歌手の安室奈美恵さんの楽曲「GIRL TALK」のMVの収録が行われたそうですよ!

その後は県指定文化財となったためこのような扱いはなくなりましたが、今でもここを利用したという旧第一銀行行員の方が来訪されることがあるそうです。

スポット紹介

誠之堂・清風亭

  • 住所:埼玉県深谷市起会110番地1
  • 電話番号:048-571-0341(大寄公民館)
  • 開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
  • 休館日:年末年始(12/29〜1/3)

次回は東京駅にも使われた、深谷市のレンガにまつわるスポットをご紹介いたします。

引き続きどうぞよろしくおねぎします!

スポンサーリンク

この記事が気に入ったらフォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事