低炭素社会の実現に向けてさいたま市をはじめとする国内外の都市・企業が意見交換・情報共有を行い、広域的な都市間連携を構築する「さいたまサステナブル都市サミット」が、11/22と23の2日間パレスホテル大宮と隣接する大宮ソニックシティ(大宮区桜木町)にて開催された。(主催:さいたま市、共催:イクレイ日本)
各都市の事例・知見を共有した上で、同市としても2030年のSDGs達成そして2050年の脱炭素社会移行へ向けて宣言を行なった。
次世代エネルギー戦略を議論
2日間にわたって行われた同サミットでは、初日にイクレイ世界事務局長のGino Van Begin氏と地球環境戦略研究機関の武内和彦理事長が基調講演を行い、2日目に6のテーマに分かれて分科会を行なった。
このうち分科会4「脱炭素社会へ向けた次世代エネルギー戦略」においては、柏木孝夫・東工大特命教授をファシリテーターに、エネルギーのゼロエミッション化へ向けた各都市における先進事例を共有、次世代のエネルギー戦略について議論した。
国内外から5都市が参加。欧州のほぼ中央に位置するドイツ・ニュルンベルクのMarcus König市長は、2030年目標での温室効果ガス60%削減に向けた取り組みを紹介。再生可能エネルギー産業に同市内だけでも10万人以上が従事し、新設の工科大学を拠点に新技術も生まれるという。風や太陽光から水素を生成して水素ステーションで供給、市のビルについても100%再生可能エネルギーで電力を賄えるよう整備をしている。
オーストラリア・メルボルンのSally Capp市長もリモートで参加。同市では石炭から風力発電へ転換を図る「パワー・メルボルン」を推進しており、2030年までに再生可能エネルギー100%を目指す。家庭で使用できる中型蓄電池のネットワークも構築中。「この分野で多くの雇用を生んでいきたい」と息巻く。
今年3月にさいたま市ゼロカーボンシティ戦略を策定した清水勇人市長も登壇。市・埼大・芝工大・東京電力パワーグリッドと協業し5つの地域でエネルギーマネジメントを行う「公民学によるグリーン共創モデル」などの取り組みを紹介した。
「エネルギー地産地消も視野」
各都市の事例を共有し終えた後、再生可能エネルギー普及への市としての姿勢を協議。「太陽光発電や蓄電池の普及を図りながらも、エネルギーの地産地消や再生エネルギー利用の都市間連携をできれば」と清水市長。脱炭素の実現は行政補助金だけでは難しく経済としても循環させながら推進していければとした。
実際にエネルギーの地産地消にどう取り組むかという議論においては、「浦和美園では電気を地産地消する仕組みができつつあるので、(これをハブに)ほかの地域にも広げてネットワーク化できれば」と展望を述べた。
地域理解する自治体として宣言
クロージングセッションにおいて、清水市長は2日間の議論や国際動向を踏まえて持続可能な都市実現を進めていくため以下3点を宣言した。
▽地域づくりのオーナーシップ:地域のことを最もよく理解している地方自治体として、人々が快適かつ次世代へバトンを託していけるサステナブルな環境を構築
▽包括的なパートナーシップ:市や国や企業・関連団体が相互の良さを生かして一つの目標へ向けてシナジー効果を追求
▽政策開発でのリーダーシップ:国の政策構想段階にも積極的に参加、サステナブルな都市に向けてあらゆる側面から政策強化
「このサミットで得られた成果を国内外に発信して政策構想にも取り組み、2030年目標のSDGsに向けて取り組む」と清水市長。
「市民巻き込んで啓発を」清水勇人市長インタビュー
ーサステナブルな都市実現に向けて、市民に対して何を求めたいか
自分ごとにしていくことを求めたい。
サステナブルな都市実現は国や地方自治体だけでできることではなく、市民一人ひとりの行動変容に極めてリンクしている。それぞれが考えて行動していけるよう運動としても広げていかないと、2050年のカーボンゼロは極めて厳しい。
皆で一緒に考え、行動する必要がある。
地方自治体は市民に一番近いからこそ、市民を巻き込んで啓発に努めていければ。
ーこのサミットを通じて、さいたま市にはどのようなものが足りないと感じたか
今回は市民をどう巻き込んでいるかという点について、詳細に議論はできていなかった。
市としても足りないところと認識している。
地方自治体として市民をどう巻き込んでいくか、これから詳細に議論しながら実行に移すことが重要だ。