【商店街最前線】前例蹴飛ばしてこそー秩父・みやのかわ商店街<下>

300回を突破したナイトバザールで知られるみやのかわ商店街振興組合(秩父市宮側町)だが、ここ3年間のコロナ禍での状況や商店街全体での課題にはいかに対処しているのか。

同組合前理事長で同市商店連盟連合会の島田憲一会長に引き続き訊いた。

「コロナに負けるなマルシェ」もーコロナ禍での取り組み

新型コロナウイルス感染症が蔓延し、経営が厳しいという加盟店も少なくはない。


それでも同商店街としてもこの機器的状況の打破や地域経済の活性化に向けて、同感染症蔓延直後の2020年2月末には「コロナに負けるなマルシェ」を開催。地元の農産物の販売だけでなく、打撃を受けた飲食店がワンコインでテイクアウトメニューを発案し販売。いちご狩りのシーズンをコロナ禍が直撃したが、余剰となったいちごを多く販売したという。

「そういうことがあっても、何かやろうとすると燃える」と島田会長はじめ同商店街の熱量も高い。

体温計測の実施をはじめ密を避けるイベントもここ3年間では実施し感染対策を強化したが、やはり人々のふれあいがなければ面白くない。マスクをするのは当たり前であっても「恐れすぎてもいけない」と島田会長。

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モノでなく人売る商店街へ

「コロナの縛りからいかに脱却していくか」ー同商店街の課題だ。補助金が出て休業中の飲食店もイベントを手伝うなどするが、小売店においては客足も減少している。イベント以外の閑散期に人をどう呼び込むかも課題となる。

どの店舗も一見の顧客で収益を上げているのではなく、複数回利用するリピート客の存在が大きい。「お得意さんづくりを徹底的に」と人と人との繋がりを大切にすることを島田会長も呼びかける。そういったリピーターを月に1人でも2人でも増やしていくが重要だ。

100円ショップはただ商品を見てもらい手に取るよう売るところだが、商店街はそうではない。各店舗の店員や関係者によるもてなしや接客でファンをつくり消費につなげていく。すなわち、人を売っていくところなのだ。「商店街を買い物に行くのではなく、遊びに来てもらう場所にすること」と、イベントをはじめ何か面白いことやっていると思ってもらえるようにすることが欠かせない。

別地域との連携にも積極的で、大宮だけでなく五島列島など海に面した地域の商店街とも交流がある。「五島列島の海産物も、獲れた翌日には秩父に来る」という。全国から視察に来る商店街も多いが、逆にそうした商店街の名産を利用してそうした名産品を販売する取組もある。双方に利益が生まれる一石二鳥の取組といえよう。ちなみに、同商店街がある宮側町は秩父神社に面しているためその名がつけられたのだが、100年前は「大宮町」だったそうだ。

後継者問題の現状は

商店街のみならず少子高齢化に伴い全国的に事業者の後継者不足が問題となっているが、「ほとんどの店で後継者がいる」と島田会長。

商店街が衰退してきた中でも、毎月のナイトバザールなどで同商店街のイベントをはじめ地域行事に携わる人材も育ってきている。同市はじめ地方都市では人口が減少し、地域外へ出て行く人も多い。それでも、秩父夜祭の頃になると戻ってきて手伝う者も少なくない。そうして知らない間に地域に関わることで、店舗を継ぐ者もいるという。

「街で生まれ育って、みやのかわが好きだからと、愛着ができるからでは」というが、そのようなきっかけの一つがナイトバザールなのかもしれない。

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地域活性化に必要なものとは

名物のナイトバザールは来月2/18の開催で301回となる。2/19のウイスキー祭りの前夜祭
としての位置付けで、口コミで評判も高まっている。

島田会長が同組合理事長に就任したのは10年近く前になるが、その際に役員も20年ほど若返ったという。退任後は顧問になるのではなく、理事として残り引き続き同商店街の発展に向けて尽力。今までの知識や経験も生かして、後進の育成にも積極的だ。観光客もいつも同じ場所を通るのではなく、ある日は大通りで別の日には路地を歩くこともある。路地利用にも新たなチャンスを見出している。

地域活性化に向けて何が大切かと聞くと、「街に熱い人がいないと、うまくいかない」と島田会長。

「人にやらせよう」だとうまくいかない。その人を信じて送り出すこと、そして前例を蹴飛ばす発想を行うことが、地域活性化に向けて大切な要素なのだろう。

おわり

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