【聞かせてくだサイタマ!】循環のものづくり実践 設立60年の川口市・和光紙器

川口市で創業し段ボールをはじめとする梱包資材の製造・加工・販売などを手掛ける和光紙器(同市幸町)が本日12/19をもって会社設立60周年を迎えた。
彩の国SDGs技術賞を受賞するなど、事業を通じて環境やSDGsについても熱心に取り組む点も大きな特徴になっている。
節目の年を迎えた同社のこれまで・今・これからについて、3代目となる本橋志郎代表取締役に聞いた。

コロナ禍でも前向きに

ーー60周年という節目を迎えて、率直な感想を

自分は1/3くらい携われていませんが、初代に始まり父親である2代目に自分とバトンを繋いできたことを認識しています。
先日も60周年記念行事を全拠点集合し実施しましたが、そういう時にも今までの歴史の重みを痛感しました。

ーー社長に就任された経緯を聞かせてください

社会人になった頃は和光紙器ではなく、別の会社で働いていました。ちょうど和光紙器からも仕事を受けていた会社に在籍していたのですが、当時は和光紙器に入るつもりはありませんでした。

それでも20代後半くらいの時に三重県へ出張に行った際に、鈴鹿にいた先代社長である父と夕飯を共にしました。その時に父から「会社を見に来ないか」と声をもらい、その翌日に実際に会社を見に行きました。そこで、学生から社会人になるまで自分を支えてくれた人々の顔をその時初めて見て、「これはやらなくちゃいけないな」と実感しました。そうして2年くらい後に入社したという経緯があります。

それから時間が経って、2019年に父から会社を受け継ぎました。それより前に受け継ぐチャンスはあったのですが、まだ自分自身に自覚がなかったのと、30歳離れていてもまだまだ体が丈夫な父が引退してしまうことになるので、仕事に支障のない間は頑張ってもらいたいという気持ちもあり少し延ばしたということがあります。

ーー社長という責任ある立場になって、どういうところで苦労しましたか

社長就任から1年でコロナ禍に入ったことです。

就任直後の2019年には社内ゴルフコンペや事業部合同忘年会と今までできなかったことをいろいろ展開しましたが、その矢先にコロナが来ました。緊急事態宣言に入ってリモートワークを余儀なくされてやりたかったことができなくなったというのが、一番困ったところです。

特に2020年の2月から6月くらいはお客様のところにも行けない状況でしたが、逆にその時から前向きにやっていこうと思えたこともあります。弊社で扱っているものは工場で扱う資材なので、お客さんの工場の生産が止まってしまえば本当にやることがなくなってしまいます。ものづくりができない状況であっても、ものづくりの会社として、お金を度外視して今困っている状況に対して何ができるか考えようと考えたことがあります。ちょうどゴールデンウィークの連休期間中にいろいろと考えたのですが、自分たちでできることとしてフェースシールドの開発などを行いました。お金にはならなかったけど、その時の活力がその後への糧となっていたと認識しています。

結果的に表彰なども受けていますが、この時期に心が折れていたらと思うと違った方向に進んでしまったと思います。

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正直に、率先して

ーーどういうところが顧客からの信頼を得ていると思いますか

一つに、嘘をつかず正直であることです。入社以来、初代社長からの言葉として「駆け引きするなら、失敗しても成功しても正直にやろう」と聞かされていましたので、そこは大切にしています。

あとは他社がやらないことも率先して行うことがあります。初代以来の精神としてお客さんを第一に、「お客さんが困っていることは自社でやってお客さんを困らせない」と徹底することが信頼のもとだと考えています。

包装資材だけに不具合が出ることもありますが、改善活動を通じて予防に努めています。いざ不具合が起きた時であってもごまかすよりも正直に謝りアフターケアを厚くすることを長年大切にしています。

ーー改善で心がけていることを教えてください

時間や資源を大事にすることです。

ものづくりの世界では1秒であっても貴重な時間ですし、特に開発の際には「リサイクルができるように」ということで呼びかけています。工場からもたくさんの資源が排出されますが、いろいろと設備を入れて再利用ができるような仕組みを整えています。

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早期から環境を意識

ーーかなり環境について意識されていることが伺えてきますが、環境を意識するきっかけは何かあったのですか

環境に関する取り組みは他社よりも早く、15年前の2008・2009年頃にはすでに環境に配慮した商品作りを始めていました。その頃からも世間一般に環境意識はあったのですが、リサイクル材の色合いに違いが出るため2010年くらいまでは「同じ色がいい」ということであまり売れることはなかったです。

それでもSDGsという言葉が普及した今では資源の不足もあって、「色の違いよりも環境商品がいい」と採用してくださるお客様も多くなっています。やり始めた頃は時代的にまだ早すぎたくらいの感じもありましたが、自分も先代も「包装材は主商品じゃないから環境を配慮しないと」と共有認識があったため、2009年から鈴鹿に工場を立ち上げて生産に取り組んできました。かなり前から環境商品を扱っていたので、そこは他社と比べた際の強みになると実感しています。

一般的に環境商品は材料が安くとも歩留まりが悪いなどの理由で価格が高くなる傾向がありますが、金型作りも、シート製造、真空成形製造と自社で一貫製造を手がけているため通常商品と同程度の価格で提供できます。やはりどれだけ優れている商品でも価格が高いと普及はしません。こういう環境商品を普及させていきたいですし、そのためにはなるべく無駄なものを削減してお求めやすい価格帯を維持しないといけないと考えています。そのためにも1秒を大切にしたり材料を大切にしたりと、改善活動が欠かせません。

ーーそのような商品開発を行っていて、お客様からの声にも変化はありましたか

最初は我々の方で環境商品を提案することが多かったですが、ここ最近は最初から環境商品を求めるお客様も少なくありません。その中で我々を見つけて取引に当たるということもあります。

基本的に我々で製造している商品は廃棄をしないことが前提です。家電に入っている発泡材の加工も行っていますが、加工工程で多数の端材が出ていて空気で膨らんでいるため回収用の4tトラックに積んでも500kg程度しか詰め込めないといったこともあります。それで回収するためにガソリン代もかかると思うとなかなか無駄が多いということで、製造工程の横で端材を材料としてリサイクルする仕組みを整えています。

ーー廃棄コストも削減でき、経営面でのメリットも高いのでは

手間はかかりますが、世間一般でもいつかそうなるはずです。いきなり転換するのも時間がかかりますから、まずは率先してやろうということで実践をしています。

ちょうど先日の60周年記念式典で来年2023年のビジョンを発表しましたが、「ものづくりを進化させ続ける」という我々のスローガンのもと「無駄を生み出さないものづくり」「リサイクルできるように考える」「購入しやすい価格での環境商品の追求」とサーキュラーエコノミーを意識したものにしています。

陽の目を見るまでは少し早すぎることもしていましたが、今になってみると我々が行ってきたこともサーキュラーエコノミーの精神に合致していると思います。

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