SDGsで交流深める 令和4年度県環境SDGs取組宣言企業成果発表会開催

埼玉県環境ビジネス実行委員会(埼玉県、関東経済産業局、埼玉グリーン購入ネットワーク)は、11/7(月)に令和4年度埼玉県環境ビジネスセミナーおよび埼玉県環境SDGs取組宣言企業成果発表会を新都心ビジネス交流プラザ(中央区上落合)にて開催した。(協力:埼玉県中小企業診断協会)

サーキュラーエコノミー(循環型経済)に関する基調講演の後、県環境SDGs取組宣言を行った企業が日頃の成果を発表、SDGsに取り組む県内企業・事業者が交流を深めた。

「マテリアルリサイクルにチャンスあり」

同会第一部の基調講演「サーキュラーエコノミーでどう変わる!?~循環経済への移行に向けて~」では、SDGs・環境分野でコンサルティングなどを行う横田アソシエイツ代表取締役で慶大大学院特任教授の横田浩一氏が登壇。

原料・生産・消費・廃棄という従来の直線的なリニアエコノミーではGDP拡張や人口増大をもたらしたが、CO2排出やゴミ問題など様々な問題を生んでいる。環境負荷を減らすにも、消費の後に生産へ戻る循環を取り入れたサーキュラーエコノミーへの転換は重要と訴えた。

OA機器のリユースを行うリコーなどの事例を紹介した上で、メーカーが自らの商品を回収することでどこをリサイクルすべきかがわかりやすく、リサイクルにかかる課題も解決されるという。特に、マテリアルリサイクルを実施すれば排出CO2量は大幅に削減できるため、 「マテリアルリサイクルには、新たなビジネスチャンスがある」と同氏。

欧州では環境に対する取り組みは盛んだが、日米ではそうでもない。しかし、対馬や五島列島では海水温上昇による磯焼けで海藻が育たず、魚卵が産めないため漁獲量が下がってきている。現地漁師が啓発ツアーも行っているが、「直感的にマズイ」と危機感を表す。TCFD(CO2排出関連財務情報の開示)からTNFD(自然関連財務情報の開示)に移行していく中で生物多様性の維持も問われてくるが、そのような状況ではサーキュラーエコノミーにも親和性があるとしている。

サーキュラーエコノミーによって、リコーと同様に自社で売った製品を自社で回収する社会の到来が期待される。また、輸送によるCO2削減に向けて遠くからモノを買わなくなるので、地産地消も促進される。「これだけ変わると中小企業にもチャンスがある」とし、早いうちに行動することは大きな優位性をもたらすと強調した。

その実現には企業・行政・NPOとマルチステークホルダーで共通利益を作っていくことが重要で、そのためには教育・理解促進が欠かせない。自身が指導する大学生もSDGs教育を受けているため、感度が高いという。加えて広報によるブランディングも重要で、「NPOと組むのも手」と同氏。

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「経営とSDGsは表裏一体」

続く成果発表会では、大野建設(行田市持田)の大野哲也代表取締役が登壇。

行田の地で創業115年を迎えた同社は、住宅から商業・公共施設などを手掛ける建築専門業。昨年就任した同氏は4代目となる。

創業者・大野福次郎は「家づくりは、細くても永く行え 家づくりは地域をよく知る者が行え」と言葉を残した。地域工務店が地域の建物づくりに責任をもって取り組むためには、棟梁社員の育成を代々行い、持続可能な経営を行っていくことが重要となる。「建物が無くなるまで携わるのが『家守り』としての責任」と同氏もその責任を痛感する。

同社の経営理念は「三方よしの理念をもって、『夢づくり、まちづくり』で社会に貢献しよう」。三方とは「お客様」「大野建設」「地域社会」を指す。社会に生かされているからこそ社会貢献が重要となってくるが、創業以来の言葉や理念を鑑みると「経営とSDGsは表裏一体」と同氏。「Think globaly ,act locally」を口癖に、大局を捉えながらも常に地域を意識する。

同社でSDGsを取り組むきっかけは5年前に同氏がSDGsを知ったことで、直感的に事業にとっても大切なことだと気付いたという。
周りの社員は乗り気ではなかったものの、外部コンサルティングへ協力を打診。意識調査やマッピングやカードゲームなどを通じて自分ごとにしていき、浸透を図っていった。

現在同社では、環境に関する取組として持続可能な森を育てる家づくり「森林再生プラットフォーム」の構築に着手。地域の声にも応えて、秩父の木材での家づくりを推進している。
また、CO2排出量の見える化も図っており、県内建設業としては初めてSBT認定を取得。「SBTを設定することで、社内で画期的なイノベーションを起こす機運が高まる」と息巻く。

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「足りないところは外部の力も」

産業廃棄物買取・リサイクル事業などを展開する長沼商事(所沢市林)の長沼浩代表取締役が続けて登壇。同社におけるSDGsの取り組みを発表した。

米軍のスクラップを取り扱っていた同社は1951年に法人化。環境負荷の高まりから資源環境型社会への実現に向けた経営戦略に近年は注力。その一つが「サッシtoサッシ」に向けたNS63SHRで、不純物が多く含まれ通常はリサイクルが難しい家庭用サッシについて、解体スクラップ・破砕をして高品位選別。新たなサッシに再利用するスキームを構築した。

同社では全社的にSDGsを展開していくにあたって、TEAM SDGsを立ち上げた。「社長の思いをどう広げていくか」という課題について、様々な属性含む混成チームを編成。外部講師を活用したTEAM内ミーティングなどを通じて、全社への浸透を図っている。

経営理念の復唱やSDGsシールのヘルメット貼り付けなど、TEAM内で出たアイディアには実際に行われているものも多い。「社長一人では空回りしやすいけど、TEAMを組織する中で社内へ波及がしやすくなる」と手応えを感じている。

同社では、定年社員の受け皿として植物工場の構築にも乗り出している。ここにも制御盤など現業のエンジニアリングや温度管理で培われたノウハウを生かしている。また、廃棄スプレー缶の無害化処理や自社独自の清掃活動といった環境活動にも積極的。

「すべて手弁当にせずに、足りないところは外部の力を活用していくことも有効」と同氏。

このほか、会場ではSDGsに取り組む各企業がパネル出展。事業者や県関係者などが交流を深めた。

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