【埼事記 2021/2/9】森氏発言から見えてくる極東のガラパゴス・日本

■新型コロナウイルスが流行して早一年、渡航制限が敷かれるようになり海外との繋がりが一気に薄れた。

そのような中でも海外においては、コロナの大流行はじめ米国大統領選や核兵器禁止条約の発効やミャンマーでのクーデターと様々な出来事が日々起きている。

しかしヒトモノの往来が禁じられている状況だと、報道で聞いてもいまいちピンとこない者は少なくないのだろう。

■周囲を海に囲まれているだけに、「島国根性」という言葉があるように諸外国に比べて独自の社会・文化が発展し諸外国にその特徴を示してきたのが日本である。古くは「黄金の国ジパング」、最近ではもっぱら「女性差別」の国だろう。

去る2/3に開かれた日本オリンピック委員会(の臨時評議員会において元首相で東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏が残した発言が、国内外で波紋を呼んでいる。

同氏は「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」「女性理事を選べと文科省がうるさい」と発言。同会では会場の失笑を誘ったというが、女性蔑視とも取られるこの発言が報道されると国際オリンピック協会をはじめとした国内外の機関などから非難の声が多く挙がっている。同氏は翌日に発言を撤回したが、一度点いた火は消える様子がなく辞任を求める声も強い。

■少子高齢化に伴い一億総活躍が叫ばれる中で、日本においては性差も激しい。

世界経済フォーラムが2019年に発表した男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数で、日本は151カ国中121位と下位に沈んだ。こと経済や政治分野において、男女格差が依然として強く残っている。

高度経済成長期までは男は仕事・女は家庭という性による住み分けが美徳とされていた。80年代に入り男女雇用機会均等法が制定されるなど男女共同参画への取り組みが行われてきているが、それでも従来の性の住み分けというのは今日の社会においても根強く残っているようだ。

今でも3割近くの女性が専業主婦を希望しているといい、男女共同参画社会の実現へはまだまだ越えるべきハードルが高いようだ。

■ジェンダー以外に日本が諸外国に遅れをとっている分野といえばITだろう。今でこそDX(デジタル・トランスフォーメーション)に向けて国務大臣職が設定されるなど国としてもIT化に本腰を入れ始めたが、多くの企業ではIT投資や人材育成に対して消極的だ。「費用がかかる」「わかりづらい」「業務にうまく生かせない」と理由は様々だ。

ITというとキャッシュレス決済もその一端だ。一昨年の消費増税に伴うキャッシュレス還元で街の商店街にもキャッシュレス決済できる店舗が増えてきたが、3年ほど前はほぼ皆無だった。

その時に小生は仕事でフィリピンやベトナムを訪ねた。現地においては露店などを除いてキャッシュレス決済がありふれたものになっており、財布を持たずともスマホ一つでほぼ生活できる様相だった。そのショックたるやここでは表しようがない。

■今でこそ諸外国との繋がりが断たれている状況ではあるが、ジェンダーやITなど至る側面で世界に遅れをとっている日本。

さながらガラパゴスのように時代に逆行している。

皆と同じであればいいというものでは必ずしもないが、ある程度は足並みを揃えないとヒトモノカネは入ってこない。

これからの時代は少子高齢化で内需の縮小が懸念されるが、その打開には外貨獲得が不可欠となる。それでもスタンダードがこうも異なっていては安心してビジネスもできない。そうなるとより一層窮地に立たされる。

■コロナ前から「KAROUSHI」で問題となっていた働き方改革も行われてきたが、国としても諸外国に遅れをとる分野の克服へ本腰を入れ始めている。しかし同氏の発言がそこに暗い影を落とした。

自分たちで自分たちの首を絞めるか今後への戒めとするか、この国の社会はどの道を選ぶのか。

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