ところざわサクラタウンに湧く所沢市東所沢地域の紹介は今回で最後になる。
最後に同施設内のランドマークとして設けられた角川武蔵野ミュージアムを取り上げる。
今月よりプレオープン段階だが、マンガ・ラノベ図書館やギャラリーと目をひく仕掛けが多い。
建造物か巨大な岩か
こちらが同館の外観。
一見すると巨大な岩のようで、これが建造物かと思う者も少なくないことだろう。
込めた思い
高さ30mにも及ぶ同館。
設計したのは新国立競技場の設計にもあたった隈研吾氏。所沢という地域を再構築するにあたり、足元深くに眠る地層から古代の火山堆積物が地面を割って出てきたという想定で制作した。
特に石は古代より神殿や壁と信仰の対象にされてきた。そのため同ミュージアムも「聖なる岩」という新たな聖地としてデザインしたとしている。
多面体状となった表面には、中国で切り出した花崗岩のプレート約2万枚が貼られている。
プレートも均一ではなく様々な表情を見せる。割肌仕上で職人が石を割り出した荒々しさをそのまま残すことで、見る者の感性に直接訴えるようになっている。
今までにないミュージアム
公益財団法人角川文化振興財団が管轄する同館。
改めて同館はアニメ・マンガなどの新しいカルチャーと現代アートや文化・哲学・博物などこれまでのカルチャーを融合し、今までにないミュージアムを目指した。
現在は一部が公開中だが、5階建の内部には知的好奇心を刺激する様々な仕掛けが施されている。
館長を務めるのはオブジェマガジン「遊」編集長の松岡正剛氏で、アドバイザーに隈氏や作家の荒俣宏氏や千葉大准教授の神野真吾氏らが名を連ねる。
時間を忘れて読みふけよう マンガ・ラノベ図書館
約5万冊を所蔵
入口は2階になるが、階段下って1階部分がプレオープンでこの8月より公開されている。
現在公開されているパビリオンの一つがマンガ・ラノベ図書館。
こちらではKADOKAWA社が発行してきたライトノベルや漫画や児童書約2万5千冊を所蔵。
自由に手にとって読むことができる。
いずれの本にも帯には「アニメ放映中」など発刊当時のものが巻かれたものが多い。
作品のファンからするとたまらない演出だ。
タブレットで知育
児童書コーナーでははらぺこあおむしなど同社が発刊する児童書を多数開架している。
カーペットで靴を脱ぎ、親子で楽しむ者の姿もあった。
同コーナーではICTを用いた箇所もある。
専用の紙に書いたイラストをタブレットにかざすと、タブレット上でそのイラストが動くという機構も用意されている。本のみならず楽しめるのが、またいい。
建築の裏話も 竣工記念展
隈研吾氏の軌跡を紹介
同じく1階部にあるギャラリーもプレオープンで公開された。各種展覧会を定期的に開催する。
竣工記念ということで、同館はじめところざわサクラタウンのデザインで大きな役割を果たした隈研吾氏を題材にした「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生-石と木の超建築」が10/15まで行われている。
同館・同施設はもちろん、同氏のこれまでの軌跡や建築にかける思いを展示している。
同館に関しては石を主眼に置いたが、同氏の代表作である新国立競技場では日本人が古くより木造建築に利用してきた細い木材に着目。「もったいない精神」や繊細なものを好む嗜好が見事に反映され、五輪へ向け新時代の日本のシンボルが出来上がったといえよう。
まもなく生まれる巨大な本棚
一角には、同館4・5階で同氏設計のもと構築が進められている本棚劇場に関わる展示もある。
11/6のグランドオープンにあわせて公開が始まるこの本棚は、高さ8メートルの巨大な本棚。KADOKAWA社刊行の新刊から角川源義文庫・山本健吉文庫のほか、個人蔵書の書物が総計約5万冊収められるという。その圧巻の風景はきっと我々の心に大きなインパクトを残すことだろう。
完成に先立ち来月から同本棚を見学するツアーも開始される。(参加に必要なチケットは完売)
なお、グランドオープン時には同館3階でも日本が誇るアニメ文化を紹介する「EJアニメミュージアム」の公開が始まる予定。