1年延期となった東京五輪で、埼玉県出身者では初となる個人種目金メダリストがついに誕生した。
昨日7/28に行われた柔道女子70kg級決勝において、寄居町出身の新井千鶴選手(三井住友海上所属)がオーストリアのミヒャエラ・ポレレス選手を技ありで破り金メダルを獲得した。
出身地の寄居町はもちろん、県内では祝福の声が上がっている。
新井千鶴選手について
プロフィール
(全日本柔道連盟HPより)
新井選手は同町出身の27歳。身長は172cmで、長い手足や体幹の強さを活かした左組からの内股や大外刈や出足払といった足技が持ち味。
段位は4段で、2020年時点での世界ランキングは4位。
幼稚園の頃まではサッカーに取り組んでいたが、3歳年上の兄に影響され柔道を始めた。男衾中学校を経て児玉高校に入学し、階級も1年時の57kg級から3年時には70kg級にまで上げている。
高校3年時に関東高校柔道大会同階級でオール一本勝ちで優勝、インターハイ決勝でも判定勝ちで優勝。これらを契機に現所属の三井住友海上にスカウトされた。
競技歴
同社所属直後は段違いの練習に戸惑ったものの、2013年のグランドスラム・東京で優勝を飾るなど徐々に頭角を表していく。
その後は世界ジュニアやアジア大会などでも優れた成績を残し2016年のリオデジャネイロ五輪出場を目標とするが、直前の選抜選手権では同大会で金メダルを獲得した田知本遥選手に敗れ五輪出場とはならなかった。
(三井住友海上HPより)
それでも現状打破のため、本来の組み手とは逆となる右組みの技や担ぎ技も実践。その結果2017年2月のグランドスラム・パリで優勝し、2017年と2018年の世界ランキングでは1位になり、両年の世界選手権では連覇も飾るなど田知本選手に代わり同階級の第一人者となった。
2020年2月のグランドスラム・デュッセルドルフでは技ありの優勝を収め、念願の東京五輪出場選手に内定した。
東京五輪での戦歴
2回戦〜準決勝
1年の延期を経て迎えた同大会では2回戦から出場。
2回戦ではプエルトリコのマリア・ペレス選手を一本勝ちでくだし、続く準々決勝でもドイツのジョバンナ・スコッチマロ選手を合わせ技一本で破り準決勝へ駒を進めた。
準決勝では、5月に行われたグランドスラム・カザンの準決勝で敗れたマヂナ・タイマゾワ選手(ロシアオリンピック委員会)と対戦。両手を組んで積極的に攻め続けたが、手の内を知り尽くしたタイマゾワ選手も善戦。ゴールデンスコア方式の延長戦に突入し寝技で攻め続けるなど膠着が続いたが、最後は絞め落としで一本勝ち。16分41秒に及ぶ長い死闘を制し、ついに決勝へと進んだ。
決勝
決勝ではオーストリアのミヒャエラ・ポレレス選手と対戦。
しっかり組んでくるポレレス選手に対し、高い釣り手をキープしながら積極的に攻撃を仕掛け、開始1分に小外刈で技ありを取った。
その後も攻める姿勢を維持し、優勢勝ちで悲願の金メダルに輝いた。
試合後のインタビューで今の気持ちを聞かれると、同選手は「うれしいです、その一言です」と回答。「私に関わった全ての人に感謝したい」と感謝の念を送った。
県民の反応
同選手の金メダル獲得を受け、出身地である寄居町はHPやSNSで同選手を祝福。地域をあげて応援してきただけに、メダル獲得を記念した広報紙の号外も発行され、同町の花輪利一郎町長のコメントも以下のように掲載されている。
新井千鶴選手におかれましては、東京2020オリンピック柔道女子70㎏級で見事、金メダルを獲得されました。誠におめでとうございます。
町民にも大きな喜びであり、町を代表して、心からお礼とお祝いを申し上げます。
新井千鶴選手が初めてのオリンピックの出場で、持てる力のすべてを尽くし、積極果敢に戦う姿は、町民に大きな勇気と感動、そして次代を担う子どもたちには大きな夢と希望を与えてくれました。今回の快挙は、町にとっても初めてのことであり、誇りであります。
今後の新井千鶴選手のさらなるご活躍をお祈りするとともに、引き続き町を挙げて全力で応援していきたいと考えております。
県民からも「埼玉の誇り」「感動と勇気をありがとう」「同じ埼玉に生まれて誇りに思います」「寄居を全国に広めてくれた」といった喜びの声が上がっている。
メダル獲得を伝えたテレ玉ニュースでは、「最後の瞬間まであきらめない姿は私たちに大きな勇気と感動を与えてくれました」と大野元裕埼玉県知事からのコメントも紹介された。
今大会では蓮田市出生・栃木県下野市出身の高藤直寿選手(柔道男子60kg級)や毛呂山町出身の森さやか選手が属するソフトボール女子代表が金メダルを獲得しているが、県出身者で個人種目での金メダリストは初となる。
サッカーやゴルフなど県内で行われる競技もある中で、コロナ禍で沈む地域を熱狂が包んでいる。