落胆の声多くーさいたま国際マラソン2020大会が開催見送り

2015年より毎年冬にさいたま市で開催されてきたさいたま国際マラソンが、今年は開催を見送る方針であることが先週1/22に各社より報道された。

週が変わった本日には大会事務局からも正式に見送りの周知が出ている。

当サイトも2017年より管理人がボランティアとしてサポートにあたっていたが、管理人はもちろん読者の間にも落胆の声が多く上がっている。

さいたま国際マラソンとは?

ご存知な方も多いとは思うが、改めて同大会がなんたるかを紹介する。

「横浜」を受け継ぎスタート

2015年に第1回が開催された同大会だが、その前身は2009〜2014年まで開催されていた横浜国際女子マラソン。大阪国際女子マラソン・名古屋ウィメンズマラソンとともに3大女子マラソンを形成していたが、財政難によりさいたま市に引き継がれることになった。

従来さいたま市内でもハーフ主体のさいたまシティマラソンが開催されていたが、兼ねてより県内でのフルマラソン開催を目論んでいた市や埼玉県が後継候補として名乗り出たという経緯がある。その後日本陸上競技連盟との協議の末、同大会として引き継がれることになった。

県内唯一のフルマラソン

こうして受け継がれた同大会は、三大女子マラソンの一角としてマラソン女子日本代表の選考はもちろん一般市民の走行も受け付けてきた。12月に行われた前回大会では約16,000人の市民ランナーが駆け抜けている。

後述するようにコースはさいたま市内(一部越谷市)を東西に走る42.195kmのフルマラソンだが、現状県内で行われているフルマラソンは同大会が唯一となっていた。

以来5回にわたって開催されてきたが、コースや開催時期(2018年より11月→12月に変更)や一般の部の制限時間(2016年より4→6時間)などいくつか変遷を遂げている。公務員ランナーとして有名だった川内優輝氏などゲストランナーも毎年話題を呼んできた。

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報道に見る中止に至った経緯

選手からの敬遠

1/22に第一報を伝えたNHKニュースでの報道は以下の通り。一部省略している箇所があるがご了承いただきたい。

オリンピックや世界選手権のマラソン女子日本代表の選考レースとして行われてきた「さいたま国際マラソン」について、主催するさいたま市や日本陸上競技連盟などが有力選手の参加が少ないことなどから、ことしの大会の開催を見送る方針を固めたことが分かりました。

〜中略〜

コースにアップダウンが多いことなどから、好記録が出にくいとして、国内のトップレベルの選手が参加を見送るケースが増え、先月の大会は、東京オリンピックのマラソン女子日本代表の、残り1枠をめぐって争われる対象レースの1つだったにもかかわらず、国内からの招待選手の参加はわずか1人にとどまっていました。
こうしたなか、関係者によりますと、主催者側は、有力選手の参加が増えず、大会への注目度が上がらない中で代表選考レースとして維持するのは難しいとして、7億円余りかけて行う例年通りの規模のレースはできないと判断し、ことしの大会の開催を見送る方針を固めたということです。

〜中略〜

「さいたま国際マラソン」の主催者の1つ、さいたま市の清水勇人市長は、22日開かれた定例記者会見の中で、ことしの大会の開催を見送るかどうかについては明言を避けました。
一方で、「開催時期を変えたりコースを見直したりして、有力選手が参加しやすい環境整備に努めてきたが、国内の有力選手が増えなかったことは残念だ」と述べました。

〜中略〜

さいたま国際マラソンは、さいたま市中央区の「さいたまスーパーアリーナ」を発着点とし、さいたま市と越谷市を巡るコースですが、2015年の第1回大会から、細かいアップダウンが続くなど大会関係者の中では、難易度の高さが指摘されていました。
このため運営側はレース終盤にあった上り坂をほぼ平坦な道に変更するなど、毎年のようにコースの見直しを行ってきました。
こうしたなか2017年と18年のレースは東京オリンピックのマラソンの代表選考レースMGC、「マラソングランドチャンピオンシップ」の女子の出場権を争うレースとなりました。
日本陸連はコースの難しさを考慮し、「さいたま国際マラソン」の基準となる記録を「大阪国際女子マラソン」や「名古屋ウィメンズマラソン」と比べ1分遅くしましたが、有力選手の参加見送りが相次いだこともあり、出場した日本人選手は1人も基準に届かず2年続けて、さいたまから出場権を獲得する選手はいませんでした。
また、去年12月の大会は東京オリンピックの女子代表の残りの1枠をかけたMGCファイナルチャレンジの初戦でしたが、トップレベルの日本人の招待選手の参加はわずか1人にとどまりました。
一方で、今月26日に行われるMGCファイナルチャレンジ2戦目の「大阪国際女子マラソン」は10人の日本人の招待選手が参加予定で、「さいたま国際マラソン」が有力選手たちから敬遠されていたことが伺えます。

(「さいたま国際マラソン 見送りへ」 NHKニュース 2020/1/22)

コースにアップダウンが多く好記録が出にくいとしてトップレベルの女子選手から長年敬遠されていたということが書かれており、これが開催見送りの大きな要因になったようだ。

実際一昨年2018年大会には6名もの日本人女子選手が招待選手として走行したが、前回大会では吉田香織選手のみに留まっていた。またMGCファイナルの基準タイムも2:22:22と設定されたが、同選手の記録はそれよりも10分以上遅い2:35:15に終わった。

前回大会のコースを見る

(同大会HPより)

こちらは先月に開催された前回大会のコース図だが、下の高低図を見ると確かにアップダウンが多いことがわかる。コースの見直しを適宜実施しているにも関わらずだ。

特に浦和美園周辺の15km地点に入るところでは10m近くも低くなる。加えて26kmを過ぎるとまた10mも高くなっている。

実際に走ったわけではないものの、プロが敬遠する理由もなんとなく理解できる。もちろん地理的な事情もあるので完全にアップダウンをなくすことは不可能だが、できる限り負担の少ないルート設定にする必要はあっただろう。

さいたま市に重い負担

一方毎日新聞は開催見送りに至った内情を以下のようにも書いている。

〜前略〜

 一方、さいたま市の巨額の財政負担も大きな足かせとなった。毎年2億5000万円ほどの出資が続いていた。他の選考レースでは、大阪国際女子は共催となる大阪市の負担金はゼロ。名古屋ウィメンズでは、市民レースや車いすレースも同時に実施することもあり、共催の愛知県が5500万円、名古屋市が5000万円で、他の自治体より、さいたま市の負担額は大きい。

市議会では毎年のように議論となり、「タイムが出ない。他の大会に比べて圧倒的に有名な選手が来ない」「(負担金を)圧縮するよういろいろな会派から意見が出ているのに、お金が変わらないのはなぜか」などの厳しい質問が相次いだ。

 高額の負担金について市は、スポンサー企業が集まらず、協賛金が少ないことを挙げる。市議からは「市民マラソンとしての人気はあると思うが、以前のハーフマラソンに戻すなど、身の丈に合った大会にすべきではないか」との声も上がった。

〜以下略〜

(「アップダウン激しい難コース、有力選手が敬遠 さいたま国際マラソン開催見送りの内情」 毎日新聞 2020/1/23)

同大会の主催はさいたま市・埼玉県・日本陸上競技連盟・読売新聞・日本テレビ放送網の5者。例年7億円規模の費用がかかるというが、前回大会で市からは2億5000万円の負担金が支出されている。

第1回大会の際には1億5000万円ほどだったが制限時間拡大などの理由で翌年大会では2億8000万円にほぼ倍増。以来毎年2億5000万円近い支出がなされてきたというのだ。さいたま市内が舞台の大会とはいえ、この負担は市にとって決して軽いものではない。他の大会では市側の負担がゼロに抑えられているものもあるというのだから、その重さは際立っている。

スポンサーが集まらないことも痛手だ。埼玉りそな銀行などがスポンサーにはなっているが、東京マラソンをはじめとした近隣の大会の兼ね合いなどで思うように協賛金が得られないということもあるという。

市議会では市の負担に関して糾弾も出ているだけに、負担金問題も開催見送りの一因になったことは間違いない。

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