空港遠く不利か? 2021年度外国人延べ宿泊者数、埼玉全国15位

新型コロナウイルス感染症の落ち着きとともに渡航制限が緩和され、街中に外国人観光客が戻りつつある。県内においても小江戸川越や川下りが有名な秩父などの観光スポットは多いが、本格的なインバウンド需要取り込みへ向けて観光業など各事業者の間で機運が高まっている。

では、そうした訪日外国人のうち県内に宿泊する者はどの程度いるか。国土交通省が取りまとめる宿泊旅行統計調査から見ていこう。

羽田空港アクセス線、起爆剤なるか

(2021年度宿泊旅行統計調査より作成)

コロナ禍2年目となった2021年度の国内における外国人延べ宿泊者数は3,438,420人で、前年度比78.36%減となった。なお、延べ宿泊者数はホテルや予約などに予約を入れた訪日外国人の単位数で、単位ごとに複数名宿泊していたり一名利用だった場合があるので注意されたい。

都道府県別に見ると、東京都が129万人超と最多で埼玉県は23,850人と全国15位だった。2位に千葉県、4位に神奈川県ときて、首都圏では低い方になる。千葉の場合は国際線の発着する成田空港もあり神奈川も羽田空港に近いとなると、空港から離れていることで宿泊者数が少ない可能性はある。栃木や茨城や群馬と空港から離れている都道府県ほど宿泊者数が少ないことにもそれは表れている。

空港から直接アクセスできる交通機関の充実や国外における訴求で、まだまだ埼玉に外国人宿泊者を呼び込む余地はあるといえる。2031年度の開業を目指してJR東日本が羽田空港アクセス線の建設に着手しているが、宇都宮線や高崎線が羽田空港に通じることで埼玉にも挽回のチャンスはありそうだ。

近郊観光・ビジネス需要に光明

(宿泊旅行統計調査より作成、以下同)

埼玉における外国人延べ宿泊者数の各年度での推移を見る。

2011年度は東日本大震災の影響か落ち込んだが、以来増加基調にあり、ムーミンバレーパーク開業やラグビーW杯が開催された2019年度は約19万人まで膨れ上がった。

しかし2020年度以降のコロナ禍では3万人程度に落ち込んでいる。

日本全国における推移を見ても、おおよそ埼玉県と同じような推移となっている。

コロナ禍の中の全国における2021年度外国人延べ宿泊数は3,438,420人と前年度比78.36%減で大幅に落ち込んだ。一方で、同年度の埼玉における同数は同29.98%の減にとどまっている。

空港から離れているとはいえ、千葉や東京の隣県にあるためまだアクセスはしやすい。それゆえ、近郊観光やビジネスで訪れた外国人が多いために、減少幅が抑えられたようにもみられる。

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宿泊客室数も改善の余地あり

(2020年度衛生行政報告例より作成)

2020年度のデータになるが、厚生労働省が取りまとめたホテル含む旅館営業施設の客室数を見ていく。同調査において埼玉県は25,545室で、26位だった。これは関東地方においては最小の室数になる。

千葉が9位、神奈川が10位にも関わらず外国人宿泊者数が多いのは、やはり空港から近いことが要因であると上記データからもわかる。栃木・群馬・茨城は埼玉よりも客室数が多いものの、外国人宿泊客数は少ない。北関東三県より国際空港に近い埼玉では近郊観光・ビジネスの需要はあるものの、客室数が少ないゆえに外国人宿泊者数も少なくなっている可能性もありそうだ。

宿泊施設の新規開設も相次ぐ中、こうしたインフラの整備を通じて外国人宿泊者を呼び込むだけの余地はまだまだあるといえる。

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