今月末までとされた新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言が近畿で解除され、埼玉含む首都圏や北海道でも前倒しの解除について議論がなされている。少しずつではあるが、平常が戻りつつあろうとしている。
しかし営業自粛などの影響を受け、地域経済への影響は計り知れない。
このほど帝国データバンク大宮支店より、同宣言が発令され感染拡大が深刻となっていた先月4月時点での埼玉県内企業の意識調査の結果が発表された。同ウイルスにより果たしていかほどの影響を受けていたのか。
調査概要
◇新型コロナウイルス感染症に対する埼玉県企業の意識調査
- 調査主体:帝国データバンク大宮支店
- 調査期間:2020/4/16〜4/30
- 調査対象:埼玉県内企業960社
- 有効回答企業数:462社(約48.1%)
自社業績への影響
同ウイルスにより各企業の業績にはどのような影響が出ているのか。
(帝国データバンク発表資料より、以下同)
それを聞いた結果が上図となる。
「既にマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響がある」を合わせ何かしらマイナスの影響があると答えた割合は89.8%と9割近くに及んでいる。
3月の前回調査からは13.7ポイント、2月の前々回調査からは25.2ポイント増加している。4月の同宣言発令により現実に窮地に陥ったないしは陥ろうとしている企業が多いことが伺えてくる。
内訳をみると「既にマイナスの影響がある」が前回比15ポイント増の56.5%で過半数を占めている。「今後マイナスの影響がある」は33.3%で同1.2ポイント増となった。
金融・不動産にマイナス強し
マイナスの影響がある企業を業界別にみると、金融と不動産はいずれも100%をマークしており影響が大きいことがうかがえる。
金融については株価の下落や為替の大変動も関係しているものとみられる。
これに建設(93.5%)卸売(91.4%)サービス(90.9%)が9割台で続いている。
飲食料品製造などにプラス
一方で「影響はない」とする企業は前回比7.4ポイント減の4.3%に留まり、「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」を合わせた「プラスの影響がある」と見込む企業は同0.7ポイント増の2.6%となった。
少数に留まったが「プラスの影響がある」と見込む企業を業種別にみていく。
最も高かったのは飲食料品・飼料製造で21.4%、これに専門商品小売(14.3%)化学品製造(8.7%)鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売(7.7%)運輸・倉庫(7.1%)と続く。
飲食料品製造がプラスになったのは、いわゆる巣篭もり需要で中食を行う者が増えたことも関係していよう。専門商品小売や化学品製造についてもマスクやアルコール消毒液や各種清浄機など同ウイルス予防に伴う物品の需要が高まっていることが背景にあるとみられる。
事業継続に重要なこと
同ウイルス感染症に対して、事業を継続するうえで重要なものは何か。
それを聞いた結果が上図。
トップは「従業員の健康管理」で72.9%、これに「従業員の雇用継続」(63.9%)「事前(現時点)の資金繰り計画」(61.9%)「労働時間の変更」(39.6%)「コスト削減」(37.9%)「在宅勤務の推奨」(37.4%)と続く。
マスクによる感染予防や時差出勤を行う企業も多く、従業員の健康や雇用が重要とされているようだ。
一方で事業継続には重要ではあるが対応できていないことを尋ねたところ、最も高かったのは「在宅勤務の推奨」で35.3%なった。これに「新規事業への挑戦」(23.4%)「コスト削減」(19.5%)「労働時間の変更」(19.0%)と続く。
特に「在宅勤務の推奨」は事業の継続に37.4%の企業で重要と認識している一方で、35.3%とほぼ同等の企業が対応できていない。同ウイルス流行拡大前から働き方改革の一環としてテレワークによる在宅勤務が注目されてきたが、思うように踏み出せていない企業が多いようだ。