【寄稿・緊急提言】こども食堂は再始動へーコロナ緊急事態宣言の解除を受けて 前編

はじめに

新型コロナウイルスの影響は、感染拡大だけではなく経済など社会の多岐にわたる。

本論は緊急事態宣言の39県解除を受けて、下記のテーマについて考察し提言を行う。

先ず、コロナによる失業と生活困窮の急速な拡大による、子どもと子育て家庭への影響について述べる。それは児童虐待や自殺の増加、依存症やメンタルヘルス問題の深刻化、貧困の世代間連鎖の懸念に関してである。

次に、これが主要なテーマであるが、コロナにより「こども食堂」の多くは活動を休止、もしくは食料の配布などに切り替えている。調査により明らかになった子どもの居場所や食のニーズにも応え、今後、コロナ貧困に対して、どのような支援活動を行っていくべきかを提案する。既に感染予防を行いながら、少人数開催、ドライブスルーこども食堂、オンラインの子どもの居場所等の活動が行われている。

最後に、子どもと家族の貧困化と地域社会の危機に対して、こども食堂の地域における共助、支え合い活動のネットワーク構築の役割について述べる。コロナによって深まった社会の分断と対立、排除を超えて、中長期的に、多様性を持った人々が共生するコミュニティの再構築を図る。

これらを筆者のこども食堂全国訪問調査や、生活困窮者支援の25年間ほどの経験、こども食堂づくりと運営の経験等の知見も活かしながら、現場に密着した緊急提言を行う。

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コロナによる失業と貧困の急拡大、非正規雇用は切り捨てか

報道のように、全国の中で43府県が新型コロナウイルスの緊急事態宣言を解除された。埼玉県をはじめ東京都等の首都圏は解除されていない。

解除除された地方も、もちろんこれによって感染拡大の心配が解消されたのではなく、当たり前の日常や、冷え込んだ経済が戻るのは、先になるだろう。

特に心配なのが、コロナにより「インバウンド」を失った宿泊・旅行・バス会社など観光に関わる産業や、外食・飲食業等の、休業によって打撃を受けた業種である。都道府県間の移動の自粛、感染予防のための社会的な距離等が、業績回復を阻むだろう。

私の専門ではない経済を論じているのは、上記のコロナの経済への影響による、経営の悪化、倒産や廃業などが相次ぎ、失業者の急増を懸念しているからだ。これは人数の問題だけではない。従業員を整理せざるを得ないとき、派遣やアルバイト、パートなど非正規雇用の人々から、職場から弾き飛ばされるだろう。貧困研究の古典が言うところの「産業予備軍」である非正規は、「雇用の調整弁」として職場を去ることになる。新型コロナの感染は免れても、収入の減少、生活苦の影響を受けるのは、非正規の人々が真っ先である。コロナの影響にも格差がある。

シングルマザーの43.8%が非正規雇用(パート・アルバイト等)である(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」)。地域の中で、最初に失業し困窮すると考えるのは自然だろう。既にシングルマザーでの調査では、コロナによる収入への影響は「収入がゼロになった」9%、「半分以上減った」12%、「少し減った」32%と回答している(NPO法人アスイクの調査。河北新報4月27日)。

また私が活動する川口市内でも、困窮したシングルマザーの方々からの緊急支援を求める声が連日、続々と届いている。

ハローワークは混雑し、今回、注目を浴びた「緊急小口資金」などの生活福祉資金貸付制度の窓口である社会福祉協議会の窓口に押し寄せる人々も報道されている。

コロナウイルスとの闘いの最中も、その後も待っているのは、失業と生活困窮の急速な拡大である。そしてその貧困は、ホームレスやドヤ街だけの問題ではない。各地域にとって、もはや対岸の火事ではない。

後述するようにこども食堂の多くは休止か活動を転換している。再び開催する日、仕事と収入を失い、生活の不安を抱えた親子が助けを求めて押し寄せるかもしれない。地域交流等を目指してきたこども食堂の風景は一変する。これが、こども食堂の再出発、第二章のはじまりだ。こども食堂の真価が問われるのは、これからなのかもしれない。

児童虐待、貧困の世代間連鎖、子どもの貧困の深刻化

失業と困窮の深刻さ、緊急度は増していくだろう。コロナの外出自粛等と合わせて、児童虐待やドメスティック・バイオレンスの増加を警告する論者も相次ぐ。自殺の増加の予想もあり、困窮の先にある孤立死も心配だ。

また、これらの今から数ヶ月先の危機と併せて、懸念されるのは貧困の世代間連鎖である。これは経済的な困窮だけが、次の世代(子ども)に引き継がれるというものではない。研究によって明らかになっているのは、学歴・教育の機会、健康問題や家族問題、依存症等のメンタルヘルスなどの問題が世代間で継承される傾向がみられる。

私は、かつてシングルマザーの聴き取りの中で「貧困の世代間連鎖って本当ですか?私が貧乏だから、子どもも大学に行けないのですか」と泣きながらの問いかけを、忘れることが出来ない。

経済的な困窮は、上記のように様々な生活問題を、まるで雪玉が転がりながら大きくなっていくように重複していく。コロナの前から、生活が苦しかったシングルマザー等は、貧困化、多問題化が加速されるだろう。

加えて、社会的排除という貧困の概念がある。収入や職業上の地位等の下降ではなく、経済的な困窮に加えて安定した雇用、医療や教育等の社会サービス、社会的な繋がりや発言の機会等から、多面的に排除される。これは、貧困の今日的な特徴を現している。コロナのなかで加速した社会の分断と対立が、排除を緩和する方向ではなく、排除の加速に働くことも懸念している。

つまり、失業と貧困に追い詰められつつある家族に対して、行政や民間が待つだけで、支える手を伸ばさないならば、多くの子どもの未来が影響を受ける。地域社会の今と未来にとって、見過ごせない問題だ。

私は東北から沖縄まで、全国のこども食堂の訪問調査を行った。一昨年、沖縄のこども食堂調査に出向き、こども食堂に夕食を求める子ども達が列をつくり、こどもへの配膳は途絶えることなく続き、広くない会場に座り込む多くの子ども達の姿をこの目で見た(混雑はコロナにより課題である)。別のこども食堂には、米軍施設関係者からの寄付物品が積まれ、こども食堂の壁には、カタカナで英語の挨拶、お礼、美味しい等の張り紙が貼ってあった。沖縄では子どもの貧困は「見える」。子どもはシングルマザーの経済的な困窮だけではなく、ドメスティック・バイオレンス、虐待、家出、家族問題等が重複して子どもにのしかかっていると、インタビューで運営者は語って下さった。そのこども食堂は、週一日だけ休み、毎日、食事を提供している。理由は、「貧困な子どもは毎日、腹を空かし貧困だから」。夜になって、兄弟で「何か食べるものを下さい」と子どもが訪ねてくることもあるという。

子どもと家族の困窮と社会的孤立を支えるため、その他の沖縄のこども食堂「子どもの居場所」も平日ほぼ毎日開催、職員も雇用し、子どもの学習と入浴を含めた生活の支援、送迎、ひとり親世帯の支援を行っていた。これは市町村の手厚い助成があるから可能であり、沖縄県が政策として進め、内閣府も強くバックアップし、国会議員は県内のこども食堂を巡り励ましていた。子どもの貧困の最前線が沖縄であったのだ。

この沖縄こども食堂のレポートが、もうまもなく全国の新しい現実になるのかもしれない。しかし全国各地が、失業と貧困の最前線となったとき、「援軍」は来るのだろうか。

コロナでこども食堂は、休止か食料・弁当配布に

さて、新型コロナウイルスの影響により、多くのこども食堂は、弁当や食料等の配布「フードパントリー」に切り替えているか、活動を休止しているのが現状だ。4月に「食堂」を開催したのは10%のみであり、お弁当や食材の配布は46.3%、休止・延期は38.5%である(NPO法人全国こども食堂支援センター むすびえ・こども食堂ネットワークによる調査、35都道府県231団体が解答)。

先述のように、シングルマザー家庭はコロナウイルスの影響による休業等で収入減少に加え、雇用の先行きも不透明だ。加えて、学校休校による給食が無いことによる家事負担の増大、親子とも外出等の「自粛疲れ」による心身のストレスが蓄積している。

困窮に加えて、子どもと家族にストレスが蓄積されている、今こそこども食堂の出番ではないのかという問いかけは、誰でも抱くのではないか。

しかし、コロナ問題の顕在化の後、私の身近なこども食堂のほとんどで「今こそ、こども食堂が必要」で開催か、感染予防のために「命こそ宝」の中止の苦渋の決断か、長く難しい議論が行われた。

つまり、子どもたちには人の集まる居場所、コミュニティの繋がり、関わりが必要とされているのに、これらが感染リスクだというこども食堂のジレンマだ。こども食堂の特徴である、共に食べること、コミュニケーションに感染の危険がある。命を守るためには「三つの密」を避ける、集まらないことというこども食堂のジレンマである。

厚生労働省はどのように考えていたのか。厚労省の3月3日「新型コロナウイルス 感染症への対応として,子ども 食堂の運営上留意すべき事項」事務連絡を抜粋する

学校臨時休業期間中における子どもの食事の確保を、企業や地方公共団体,子ども食堂運営者等が、協力を図りながら地域の実情に応じ取組を進めていく。

感染防止の対応を行って頂くようお願い

つまり、感染防止のうえ、子どもの食事の確保の取り組みを、厚労省はこども食堂に求めていた。

コロナによる子どもの生活への影響-ストレス、孤立、居場所がない、大人への不信感-

5月3日に 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが発表した「2020年春・緊急子どもアンケート結果(全体版報告書)子どもの声・気持ちをきかせてください!」の一部を紹介し、コロナによる子ども達の生活への影響と、そのニーズの考察を試みたい。

1422人の小学1年生から中学3年生までが回答した。

設問「学校が休みになってから、何かこまっていること、心配なことや気になっていることがあれば教えてください」回答は、下記である。

  • 「日常生活が送れていない・外出できない」31.4%(内、人と会えない・会いたい)20.5%
  • 「体調やり患、心の変化、感染拡大への心配」16.0%
  • 「勉強ができない、学力の低下、学校のことなど」15.7%
  • その他「運動不足・体力の低下」3.9%等。

「日常生活が送れていない・外出できない」の自由記述

  • 「学校での預かりがあっても、お友達と遠く離れて座り、ランチも一人で黙々と食べ、話したらダメ、一緒に遊んだらダメはとてもつらい」
  • 「給食がない」「お昼ご飯どうするか、お金かかる」
  • 「外に出られないためストレスが溜まっている。テレビ、ゲーム以外やることがない」
  • 「外に出て遊ぶとお年寄りに怒られる」

 「人と会えない・会いたい」の自由記述

  • 「とにかく居場所がない。小学生は児童館があるが、中学・高校生はどこにも居場所がない」
  • 「家族がずっといるストレス」
  • 「どうすれば友達と遊べるか、分からない」「寂しいです」「会えない・会いたい 」

「勉強ができない、学力の低下、学校のことなど」の自由記述

  • 「宿題をわからない時、どうしたらいいかわからない」「勉強が追いつかなくなる」
  • 「わからない問題があるけれど、昼間はお母さん達がいないので教えてもらえなくて困っている」

また、設問「学校がはじまるときや、就職・進学など新生活がはじまる前に、大人(家族や先生、地域の人など)や社会、政府にしてほしいことがあれば教えてください」の回答のうち、最多は「医療・保健衛生、行動規制、安全を求めるものなど新型コロナウイルス・感染症への対策」15.6%となった。他「学校生活のあり方」13.0%「学校に行きたかったや学校の再開を求めるもの 」8.2%等に次いで「遊びや運動、居場所など子どもが過ごせる場・機会・物・方法の確保・提供」7.3%とつづく。

これらの子ども達のストレスは、外出の自粛が解けても影響が残る。学校や保護者、地域もどのように支えていくのか。学校の授業も再開されても、学校生活は様々な制約を伴い、元の学校の姿に戻るのには相当な時間が掛かることだろう。成長に不可欠な遊びも、友人との交流もままならない。また、大人への不信感等も生じている。学習の遅れへの不安も深刻である。

そして、子ども達は食のニーズを持っていることも分かる。給食がないこと、孤食も挙げられている。

居場所を喪失した痛みと、大人や社会、政府に対して居場所の確保を要求する声は少なくない。

「不幸は沈黙している」とはシモーヌ・ヴェイユのことばであるが、子どもの明らかになりづらい声に耳を傾けるべきであろう。子どもの声の尊重から、コロナとの闘いと、アフターコロナの子どもの支援ははじめるべきだ。

つづく

寄稿者紹介

関屋光泰(せきや みつひろ)

東洋大学ライフデザイン学部助教、精神保健福祉士、社会福祉士。
国立武蔵野学院 附属児童自立支援専門員養成所(厚生労働省)講師
専門分野は、こども食堂の継続、生活困窮者支援、精神科グループワーク、援助者のストレスケア。
全国学生こども食堂ネットワーク事務局共同代表、こども食堂学生ボランティアスタートアップ講座等。

https://researchmap.jp/g0000218044
https://twitter.com/misekiy

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