新型コロナウイルス収束の兆しが見えない中、同ウイルス対策に向けて補正予算を組むべく大野元裕知事は昨日4/30(木)の会期で埼玉県議会4月臨時会を招集した。
夜間にまで及んだ同会で、知事提出の補正予算案や条例案などが成立した。
同会で成立した内容を簡単に紹介する。
令和2年度埼玉県一般会計補正予算(第3号)について
大野知事は第84号議案として令和2年度埼玉県一般会計補正予算(第3号)を提出した。
同補正予算案は国の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえ、早急に対応すべき対策に要する経費を計上したものだ。
補正予算規模
同補正予算では主に検査・医療提供体制の強化や県内事業者に対する支援などを盛り込んでいる。
内訳としては一般会計で511億781万円、企業会計(地域整備事業)で100億円となる。特に一般会計の補正予算としては最大規模だ。
一般会計分の同補正予算財源は以下の通り。
- 国庫支出金:310億8,474万円
- 繰入金:150億2,294万5千円
- 諸収入:49億6,037万4千円
補正後の一般会計は、累計で2兆125億4,245万3千円となる。
補正予算での主な施策
以下、同補正予算に盛り込まれた主な施策を見ていく。
検査体制の強化と感染の早期発見
まず検査体制の強化および感染の早期発見に向けて、県衛生研究所におけるPCR検査機器の増設や民間検査機関の活用による検査体制充実に9億1,974万7千円を盛り込む。
また新たな検査の流れとして、保健所を通さずにかかりつけ医の診断に基づきPCR検査を集中的に行う発熱外来PCRセンターを郡市医師会と連携して整備する。県内20カ所に整備される予定だが、その運営費に4億1,400万円を盛り込む。
医療提供体制の強化
医療提供体制の強化を図るため、入院医療機関に対して人工呼吸器や体外式膜型人工肺等の導入支援(3億9,256万4千円)や医療機関への感染防護具等の配布(16億5,856万5千円)を実施する。
オンラインでの診療や服薬指導に向けた導入支援も実施する。(1億4,498万4千円)
また、感染症患者を受け入れた病院へ入院協力金の支給や看護職員に対する手当の助成には40億4,619万8千円を盛り込んだ。
そして軽症者等を受け入れるホテルなどの宿泊療養施設確保に60億3,553万6千円を盛り込んでいる。特に県では5/6までに1000室の確保を目指しており、その費用にあてるものと見られる。
なお今後の医療提供体制の強化策として、医療機関に入院協力金として患者一人当たり25万円の支給を行うとの答弁が福祉保健医療委員会にてあった。
県内事業者への支援
県内事業者への支援として、新型コロナウイルス感染症対応資金の創設など制度融資枠を3,600億円から8,000億円に拡大する。このうち損失補償の今年度支出分に52億7,000万円を計上し、来年度以降支出分に債務負担行為を設定した。(限度額188億9,383万5千円)
そして休業した中小企業・個人事業主への支援金等の支給に121億円を盛り込む。県では来月以降中小企業・個人事業主支援金(各2〜30万円)や業種別組合応援金(各500万円)の支給を予定しており、その財源に充てると見られる。
このほかコールセンター設置など中小企業からの相談等に対応する体制の充実に6,382万円、
テレワークの緊急導入に向けた中小企業への支援に6,072万9千円を計上した。
なお、デリバリー等を実施できない飲食店に対する支援については、既存の地域商業・黒おび商店街応援事業の補助金を活用する形で実施していきたいとの答弁が産業労働企業委員会にてあった。
県民に向けた施策
各県民に向けて情報発信の充実に勤めるべく、広報や知事記者会見において手話通訳を導入する。(1億5,775万7千円)手話通訳について全国ネットのニュースで知事記者会見に手話通訳を伴っていないことが問題となったが、県聴覚障害者協会からの要望も受けると共に恒常的に制度としてしっかりと確立したいという趣旨から同補正予算による対応となったという。
学校の臨時休業等を円滑に進めるべく、放課後児童クラブや放課後等デイサービス等の運営支援に8億6,792万円を計上する。
加えて生活困窮者への支援として、社会福祉協議会が実施する生活福祉資金の特例貸付に25億4,477万2千円を助成する。
その他施策
このほか庁内でもテレワークを推進し、その環境整備に4,958万5千円を充てる。
加えて基金への積立も実施される。このうち医療・介護サービスの提供体制改革を推進する埼玉県地域医療介護総合確保基金には19億5,863万5千円が積み立てられる。
また同会で条例成立した埼玉県新型コロナウイルス感染症対策推進基金にも100億3,028万5千円が積み立てられる。
埼玉県新型コロナウイルス感染症対策推進基金について
同会では知事提出の第86号議案「埼玉県新型コロナウイルス感染症対策推進基金条例」も原案可決で成立となった。
同基金は同ウイルス感染の蔓延を防止し、県民に対する医療提供体制の整備並びに県経済の回復及び活性化を図るための事業の推進に要する経費の財源に充てるもの。国の補正予算にある新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の交付額が不明な中、様々な状況を考慮して100億3,028万5千円という幅ある金額になったという。同交付額が予算額を下回った場合は代替財源としても機能する予定だ。
基金に属する現金は金融機関への預金その他最も確実かつ有利な方法により保管され、必要に応じ最も確実かつ有利な有価証券に代えられる。
公布日より施行となり、2年後の2022/3/31をもってその効力を失う。
なお、同基金の財源を捻出すべく知事提出の第85号議案として「令和2年度埼玉県地域整備事業会計補正予算(第1号)」も可決された。企業会計(地域整備事業)より財源として100億円を一般会計に貸し付けることで、その補正を申し出たものだ。