【日々是埼玉 2019/11/27】小規模ほど進出割合は低下ー海外進出に関する埼玉県企業の意識調査

政府の掲げる成長戦略では、中小企業の海外進出が重要な政策課題となっています。
大企業だけでなく中小企業を含む日本企業がより一層の海外進出を目指すことがますます期待されていますが、埼玉県内の企業の状況はどうでしょうか。

先月に帝国データバンク大宮支店より発表された、海外進出に関する埼玉県内企業の意識調査の結果から紐解いていきます。

後半には海外進出を検討される県内企業の皆様にとってちょっと耳寄りな情報も用意しておりますよ。

調査概要

◇海外進出に関する埼玉県内企業の意識調査

  • 調査主体:帝国データバンク大宮支店
  • 調査期間:2019/9/13〜9/30
  • 調査対象:埼玉県内企業969社
  • 有効回答企業数:374社(約38.6%)
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約2割の企業が海外進出、しかし…

現在、自社がなにかしらの形で海外に進出しているかどうか尋ねた結果が以下の通り。

(帝国データバンク大宮支店発表資料より、以下同)

生産拠点や販売拠点など直接的な進出を行っている企業は10.2%、業務提携や輸出など間接的な海外進出は14.2%となりました。

この結果、直接・間接のいずれかの形で海外進出をしている企業は19.8%と、約2割の県内企業が海外進出に乗り出していることがわかります。

事業内容をみると、直接的には支社・支店などを含む「生産拠点」が 5.6%で最も高く、次いで「現地法人の設立」(5.1%)や「販売拠点」(2.4%)、M&Aなどの「資本提携」(1.3%)と続きます。
間接的には、商社や取引先を経由した「間接的輸出」(7.5%)が最も高く、これに直接海外企業などと取引している「直接輸出」(5.1%)、生産委託などの「業務委託」(4.5%)、技術提携などの「業務提携」(2.1%)と続きます。

進出割合は企業規模に反比例

今回調査と前回2014年9月調査の両方を回答した企業において、調査の2時点間を比較したものが以下の通り。

5年前に海外進出し現在も海外に進出している企業は「大企業」では20.6%を占めたもののの、「中小企業」では16.8%となりました。
また、5年前に海外に進出していたものの現在は海外に進出していない企業の割合を見てみると、「大企業」は0%に対して「中小企業」は10.2%に上っています。

従業員数ごとに見ると301人以上の企業では50.0%が海外に進出しているものの、従業員数が少なくなるほどその割合は低くなる傾向があるようです。

企業からは、「現状当社は中国における活動が中心であるが、取引商品によってはアジア以外を含め常に検討をしている」(小規模企業・卸売)や「現時点では不可能だと考えているが、チャンスがあれば出てみたい」(小規模企業・製造)と海外進出に積極的な姿勢がうかがえる声があった一方で、「法的な縛りが多く、海外進出をあきらめた」(大企業・サービス)といった法的・文化的な面で躊躇する声も出ていました。

なお、「海外進出あり」を業界別にみると、「製造」が34.2%で最も高く、「卸売」(20.0%)「サービス」(17.9%)と続きます。

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生産拠点・販売先ともに中国を最重視

直接・間接のいずれかの形で海外進出をしている企業 74社に対して、現在海外進出している国・地域において、生産拠点として最も重視する進出先はどこか尋ねた結果が以下の通り。

生産拠点として最も高かったのは「中国」( 23.0%)で、「ベトナム」(14.9%)、「タイ」(10.8%)、「インドネシア」(8.1%)など日本から距離的に近いアジア諸国・地域が上位となりました。
販売先でもやはり「中国」(23.0%)でトップで、「アメリカ」(13.5%)、「ベトナム」(9.5%)、「タイ」(8.1%)と続きます。

県内企業は生産拠点・販売先ともに「中国」を最も重視していることが伺えます。実際に企業からも「中国は中小企業にとって魅力的な市場である。台湾企業との合弁事業で進出している」(中小企業・製造)といった中国に対して好意的な意見が上っています。

それでも「海外との取引で一番問題なのは為替リスク」(小規模企業・卸売)や「顧客なしで海外進出するのはリスクが高すぎる」(中小企業・製造)など、国・地域に限らず海外進出へのハードルの高さも伺えてきます。

「社内人材(邦人)の確保」が大きな課題

それでは今後海外進出を検討または進めるにあたって、どのようなことが障害や課題となるのでしょうか。

最も高かったのは「社内人材(邦人)の確保」で大企業・中小企業を総合して43.9%と半数近くに上ります。これに「言語の違い」(37.2%)や「文化・商習慣の違い」(36.9%)、「現地人材の確保・育成」(34.2%)と続きます。

規模別にみると、「大企業」では「社内人材(邦人)の確保」と「海外進出に向けた社内体制の整備」が同率1位となり、「中小企業」に比べて相対的に人材が豊富な「大企業」であっても、社内の体制に関する障害や課題に頭を悩ませている実態が浮き彫りとなりました。他方「中小企業」では「代金・投資回収」で7.1ポイント、「提携先・パートナーの発掘」で5.7ポイント「大企業」を上回るなど、海外進出以降を懸念している様子がうかがえます。

海外進出の有無別にみると、海外に進出している企業では「外国為替レートの変動」(44.6%)、「社内人材(邦人)の確保」(43.2%)が上位となりました。他方、海外に進出していない企業では、「言語の違い」(37.6%)や「文化・商習慣の違い」(36.9%)などが上位にあげられており、現地での生活や文化などを課題としてとらえているようです。海外進出企業の方がより実務的な面を課題としてとらえている結果となりました。

相談相手に公的支援機関も需要高し

直接・間接のいずれかの形で海外に進出している企業 74 社に対して、海外進出を進めるうえでどのような団体や企業などに相談したか尋ねた結果が以下の通り。

最も高かったのは「取引先企業」で39.2%となりました。
やはり現場に沿った相談ができる相手が高かったようですが、日本貿易振興機構(ジェトロ)や中小企業基盤整備機構など「公的な支援機関」や「メインバンク」も各23.0%となり高い需要が伺えます。

特に直接的な進出をしている企業では「公的な支援機関」への相談が36.8%で最高となっており、これは間接的な進出をしている企業(22.6%)を14.2ポイント上回っています。

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