【愛と哀しみの埼玉の歴史】21世紀の内陸都市ー20周年迎えたさいたま新都心 その2

8年半に及ぶ工事期間を経て2000年5月5日に街開きとなったさいたま新都心は、当時最先端の技術を用いて来る新世紀に対応した未来の都市として世に生まれ出た。AI・IoTなど技術も進歩しているが、その街並みは20年経った現在においても斬新さを失わない。

同地区整備事業によって建造された主要建築物や設備について紹介していく。

日本初のバリアフリー都市宣言

バリアフリーという言葉が普及しつつあった90年代、新たに築かれる同地区も誰もが安心して快適に活動できる街づくりを目指していた。

1997年に、全国に先がけて県は同地区に対してバリアフリー都市を宣言。誰にでも優しく人と人とのふれあいを大切にする街を実現すると謳った。

こうして生まれた同地区には2階デッキレベルの歩行者ネットワークが全域に張りめぐらされ、歩車分離を実現した。街開きに合わせて開設されたさいたま新都心駅から東西自由通路を中心に各施設を結び、車椅子同士がすれ違える幅3mのシェルターが配されている。

地上に下がる場所にはエスカレーターやエレベータを配し、スムーズな移動を実現している。

(ユニバーサルデザイン・コンソーシアムより)

歩行者に向けたサイン類もユニバーサルデザインによる視覚化を念頭に、誘導ブロックと同じく黄色い柱をあてがった。地図や触地図に音声誘導装置も設置した。

加えて後述するけやきひろば1階には「ふれあいプラザ」を配置。車椅子などの貸し出しやボランティアによるサポートを提供する。

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地域冷暖房・共同溝による省エネ防災都市の実現

整備地区全体は47haという広大な土地だが、そのほとんどは駅から歩いて行けるコンパクトな都市空間となった同地区。そのため必然的に省エネルギー型都市へと昇華していった。

その実現に大きく寄与したのが、同地区北端にある東京ガス地域冷暖房センターだ。

地上6階地下3階の同センターは、排ガスの熱を効率よく蒸気として回収するガスタービンコージェネレーションシステムを始め、低NOX型のボイラー設備やボイラー熱から冷水を作り出す冷凍機設備などを採用。合同庁舎やさいたま新都心郵便局など13施設に冷水と蒸気を提供する。

無駄なく地域の冷暖房を実現し、各施設に熱源機器が不要になるため災害にも強い。

(さいたま市地球温暖化対策地域協議会より)

これらの導管は地区内約8km近くにわたって伸びているが、そのうち約3kmは水道や電力・通信との共同溝となっている。

これにより安定的なライフラインの提供や無電柱化、メンテナンス容易性向上を実現している。

他にも雨水の再利用や透水性舗装、太陽光発電などの資源循環システムも至るところに積極的に取り入れられた。

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街の辻ーけやきひろば

広場の紹介

同地区を東西につなぐにぎわいモールと南北につなぐふれあいモールが交差し、街の辻にあたるのがけやきひろばだ。

地上約7m・面積7000㎡の人工地盤上に、武蔵野の雑木林をイメージして220本のケヤキが6m間隔で植えられている。そのようなケヤキの森に包まれた「森のパビリオン」やイベント向きの「サンクンプラザ」や芝生敷の芝生ひろばから構成される。

1階部は植物に覆われたオープンスペースとそれを取り囲む店舗から構成され、2階の広場との間にエレベーターやエスカレーターが通る。

人々が触れ合う公園としての役割はもちろん、ビールまつりやイルミネーションに代表されるように屋外イベント会場としての役割も持つ。

広場から周りのデザインへ

後述するさいたまスーパーアリーナと並び、地区における中枢施設と位置付けられた同広場。

事業主体である埼玉県がかける想いも強く、同地区造成が進む1994年にデザインコンペを開いた。まだ広場周りの施設デザインが固まっていなかったにも関わらずだ。それゆえ人々が集まる広場を起点にまちづくりを実践するという点で画期的だった。

海外含め210点の応募があり、最終的に鳳コンサルタント・NTT都市開発らによる「空の森」をテーマとした案が最優秀に輝き本採用された。

これ以降周辺施設のデザインも固まっていくが、各々の建物や空間の個性を生かしつつ「ゆるやかな統一」を持った街並みが生まれていく。

ケヤキにまつわる裏話

広場の樹木にケヤキが選定されたのは同種が埼玉県の木であることに他ならない。

使用された木は福島県から宮崎県まで全国11都県から選ばれ、うち埼玉県産の木は約3割の39本にあたる。

広場に植えるまでは上尾市の圃場で仮植えされていたが、このとき県内における植木の一大産地である安行(川口市)の技術が光った。すなわち根を切って細根を出す根回し・根巻きを講じることで移植後も枯れないよう配慮したのである。

木々は12m四方のユニットに4本植えられ、成育に従い根を張れるよう土表面と同広場床の間は2〜30m空けられた。一見するとわかりづらいが、実はケヤキの木は「浮いている」というわけだ。成育には自動潅水システムを採用し、再利用した雨水を利用している。

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