【愛と哀しみの埼玉の歴史】県民のリテールバンクへー埼玉りそな銀行20周年<下>

20年前の2003年3月に営業を開始した埼玉りそな銀行(さいたま市浦和区常盤、福岡聡社長、金融機関コード0017)は、直後に国有化されるなど波乱の中で歩み出した。

前進の埼玉銀行以来の埼玉を拠点とする県民のためのリテールバンクとして、同行のこれまでや地域との関わりを紹介する。

サービス業としての銀行に

「銀行の常識は世間の非常識」

関連会社のりそな銀行が自己資本比率低下の危惧から公的資金注入を決めた2003年6月、りそなホールディングス会長にJR東日本副社長を務めた細谷英二氏(1945〜2012)が就任した。

負債を抱えグループ自体も国有化された中、同氏は「銀行はサービス業」という信念のもと、国鉄・JR東日本で培ってきた知見を生かしてサービス向上による顧客満足実現を強調。「銀行の常識は世間の非常識」とそれまでの慣行を覆して、徹底的なサービス向上を同行含む各行で推進してきた。

顧客に寄り添うサービス向上

その一つに「3ない」の店舗展開を推進。顧客が「待たない」「書かない」「押さない」店舗作りとして、総合受付の設置や公金振込などに使用できるATMの増強、資産運用について相談できるコミュニケーションブースの設置を展開してきた。また、より多くの顧客が利用できるよう平日の窓口の営業時間も17時までに延長されている。

2012年からは年中無休で営業する「セブンデイズプラザ」を展開。住宅ローンや資産運用の相談ができ、大宮や川越や熊谷など県内主要都市店舗にも導入されている。

りそな銀行自体に信託部門があるのも特徴で、遺言信託や相続相談といった資産形成に関する業務にも対応可。同行では2020年より信託銀行の兼営認可を取得しており、自行内で信託業務の展開が可能になった。

そのほか、同行や各行ではトップの役職が「頭取」ではなく一般的な企業と同じ「社長」になっているも大きなポイント。

こうした取組を通じて顧客満足実現や利用額増につなげてリーマンショックや東日本大震災といった危機を乗り越え、2015年には公的資金を返済している。

スポンサーリンク

地域に根ざした銀行への挑戦

ユニークな商品・サービスも

国有化を受けて同行としても地域密着型金融への取組に着手。県内在住者の住宅ローン条件優遇や、中小企業向けの融資のラインナップ拡充など、地域に根ざした独自の商品・サービス展開を行っている。

例えば同行が展開する埼玉りそな・グローバルバランス・プラスESGファンド(SaitamaDGS)は、中長期の資産運用として国際分散投資やESG投資から成るファンドに県債を盛り込んだ。収益の一部は県の新型コロナ対策推進基金に寄付される。

法人向けでも、県内の医師不足に対応して開業を予定する医師などへ向けた「埼玉りそなドクター応援ローン」を提供。創業1年未満の事業者に対してインターネットバンキングの手数料無料やりそな総合研究所の会員サービスなどが受けられる「埼玉りそな創業応援パック」、優れた技術力やサービス力を持つ創業期・第二創業期の事業者に直接出資を行う「渋沢栄一スタートアップファンド」といった地域色を生かしたユニークな商品・サービスを提供している。

なお、現在の福岡聡社長は5代目になるが、協和銀行出身の3代目・上条正仁元社長を除き、いずれも埼玉銀行出身者が社長職を務めている。経営層にも地域に根ざした精神が宿っているといえよう。

地域課題解決へ連携推進

金融業務以外に子ども向けのマネー教室・りそなキッズマネーアカデミーなども展開している同行では、近年地域課題の解消へ向けて各方面で積極的に連携を行なっている。

その一例が2021年10月に100%子会社として設立した、地域デザインラボさいたま(ラボたま)。地域課題をデザイン思考で解決していく事業会社として、産官学民の連携を促進する価値共創のラボとなっている。まちづくりコンサルディングをはじめ、ふるさと納税の返礼品開拓や起業支援による新規事業開発などで地域活性化を実践。

また同行従業員によるフードドライブも取引先に広がりを見せ、各位と連携のもと県内自治体へ寄付を実施。累計約12,000点を寄贈している(2022年9月末時点)。昨年10月には、せんげん台支店(越谷市千間台西)に子ども支援拠点「りそな YOUTH BASE」を設置、子ども支援団体と共同でヤングケアラー支援などを行っている。

このほか、観光振興や留学ローン提供などの面で武蔵野銀行や埼玉縣信用金庫といった県内の競合金融機関とも連携を行なっている。

スポンサーリンク

地域×SDGsの実現へ

同行発表によると、昨年3月末時点での県内における預金高36兆97億円のうち同行シェアは45.9%(16兆5,368億円)と、各金融機関の中でトップシェア。個人客が占める割合も72%に上った。融資額も44.4%の7兆4,270億円とトップシェアで、このうちの77.5%を個人や中小企業が占める。昨年度純利益も142億円と県内トップで、自己資本比率も15.42%と安定した基盤があると言える。

バブル期の金融自由化やバブル崩壊後の金融再編の中で生まれ、直後の国有化で波乱のスタートとなった同行。地域に根ざしたサービス業たる銀行として様々取組んできた結果、確固たるシェアを地域で築いている。競合の武蔵野銀行が千葉銀行と包括提携を行ったりネット銀行など新たな競合が増える中でも、そのシェアが揺らぐことがないところに、同行に対する地域の信頼が垣間見える。

りそなグループアプリやキャッシュレス・プラットフォームの導入などDXも推進する中で、ラボたまやフードドライブに見られるように、地域におけるSDGsの実現にも力を入れている。

これからも地域に根ざし「地域×SDGs」を実現する県民のリテールバンクとして、2030年やその先の未来を見据えて同行は歩んで行くことだろう。

おわり

スポンサーリンク

この記事が気に入ったらフォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事