【埼事記 2022/11/20】「人口80億」で少子高齢化 糸口は埼玉にあり

■「ネクスト・ソサエティを左右する最大の要因が、高年人口の増大と若年人口の減少である。とくに若年人口の減少はローマ帝国崩壊時以来のことであって、重大な意味を持つ」

「マネジメント」で有名な経営学者ピーター・ドラッガー(1909〜2005)の言葉である。

なるほど、若年人口が減少しているのはローマ帝国崩壊以来と過去にも起きていたのか。決して今に始まったことではないのかと感じる。

■各位も周知の通り、我が国は少子高齢化に喘いでいる。特に人口減少は深刻で、昨年は64万4千人もの人数が減少している。

世界に誇る長寿大国ニッポンだけに高齢人口の割合は年々増加傾向だが、次世代を担う若年層人口は減少傾向をたどる。1月の成人式シーズンになると新成人が減少というニュースを聞き、肌身に感じる者も少なくなかろう。

しかし、ワールドワイドに見ると事情は全く異なる。11/15に国連が発表したところによると、世界の人口が80億人を突破したという。インド・フィリピンなどの発展途上国やアフリカ諸国で平均寿命が伸び乳幼児などの死亡率が低下していることが背景にあるようだ。2010年時点では70億だったので10年ほどで10億人も増加したことになる。

最大で100億人規模になるとも予想されており、人口爆発による生活インフラの確保や環境負荷の低減などが課題になることは言うまでもない。

■と、抜かした割に我が国では人口減少が現実のものとなっている。

人口減少ということは、それまで培われてきた文化や風土が失われる可能性がある。加えて残った一人当たりの経済的負担も大きい。やはりこれは国家の危機だ。

しかし、翻っておらが里・埼玉。

「ダ埼玉」などと称されることは多いが、多少の増減はあるものの、概ね733万人台を維持している。この規模では東名阪・神奈川に次ぐ全国5位の座にある。日本の人口はおおよそ1億2千万人だが、17に1人投げた石が当たればそれは埼玉県民なのだ。

■45位。

何かと言うと、毎年耳が痛くなるブランド総合研究所発表の都道府県魅力度ランキングのうち、今年10月に発表された最新版における埼玉県の順位だ。47都道府県中45位とは、流石に低いと言わざるを得ない。

逆に言うと、それだけ魅力が伝わっていない可能性もある。

市町村の数も63と全国一だが、それだけ各市町村で独自の文化が発展していることが考えられる。香川県のうどんや北海道のジャガイモのように、全県を通じて「これだ」と思えるものが埼玉には少ない。それは各地に文化ができているからこそなのかもしれない。

■逆に全県民に「埼玉といえばこれ」という共通認識ができていないことが、大きなチャンスとなる。

何と言っても人口減少社会において、埼玉は数少ない人口増加地域だ。特に県都・さいたま市は今年1/1時点で全国での人口増加数が一番だったという。都心に近いという理由があったとしても、横浜市などを抑えて一番になるのは何かしら理由がありそうだ。

家賃が安いなどもあるのかもしれないが、例えばそこに「古来よりの見沼田んぼがある」「鉄道網が発展している」などの理由が合わさればどうだろう。単に家賃が安い地域よりも魅力的に見えるのかもしれない。そうした経済的指標以外の要素で居住地域を選ぶとなると、埼玉だってまだまだ捨てたもんじゃない。

■「VRIO分析」という言葉を秀才たる皆はご存知だろう。VとはValueで価値、RはRarityで希少性、IはImitabilityで模倣可能性、OはOrganizationで組織体であることは教科書に書いてあろう。

そうした4つの側面で主として事業者の優位性を分析するが、埼玉という地域を捉えるとどうか。Vという価値が知られているか。Rという希少性が知られているか。何よりOの組織として強みになっているか。

埼玉が選ばれるのだって都心に近い以外に何かしら理由があるはずである。その理由がなんなのか、それをみんなわかっているか。愚生は何一つ拾えていないにしても、聡明且つ博学な皆であれば当然理解しているはずである。

■如何せん愚生は学も経験も乏しい鼻垂れ小僧だ。自分自身情けなく、日々鍛錬が必要と危機感を感じる。

しかし、この少子高齢社会で埼玉がここまで人口増加にあるとなると、逆に埼玉にこそ突破口があるのかもしれない。

地理的要素は変えられないにしても、例えば知られざる地域の価値を組織、すなわち地域の強みとして発信していけば伸び代なんていくらでもできるし、克服できる社会的課題も決して少なくなかろう。魅力度が低いからこそ、その価値が知られていない。知れば逆に、突破口になる。知られていないからこそ、その価値ある資源と向き合う時間もあり使い方も色々検討できよう。

地理が悪くても繁盛している店舗など、枚挙に遑がない。地理的制約を上回る価値があり、それが知られていてこそなのだ。

■地域の価値やその希少性を組織として、つまり地域として認識していけば大きなものが得られる。そのようなブレイクスルーを導き出すことこそ、小紙の役目なのだと痛感する。

偉そうに媒体概要など書いて「何様だ」と憤った者も少なくなかろう。

「何もない」のが埼玉なのかもしれない。ただ、そのような「砂漠」であっても730万も人口がいれば見出せるものは確かにある。

その一粒一粒を拾っていき、地域課題の克服や地域発展へのブレイクスルーにつなげていく。それだけの余地は、まだ埼玉には十分あるはずだ。

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