【埼事記 2021/3/1】接待こそ「うっせぇわ」ー官僚接待問題に思う

■「うっせぇ うっせぇ うっせぇわ」

昨年10月に発表されたAdoさんの楽曲「うっせぇわ」がヒットしている。Youtube動画の再生回数は8000万を突破し、オリコン週間チャートでも上位3位以内を維持している。

「純情な精神で入社」「会計や注文は先陣を切る」と特に若手社会人に求められるしきたりを「うっせぇわ」とリズミカルに切り捨てていることが、若い世代の支持を集めているようだ。

■特に酒や食が絡む場面だと様々なしきたりがある日本社会だが、ある商習慣が人々の非難を集めている。中央政府で相次いで発覚している接待問題だ。

農林水産省では枝元真徹事務次官ら6人が鶏卵大手アキタフーズから賄賂や接待を受けたとされる。

総務省では山田真貴子内閣広報官含む13官僚が東北新社による接待を受けたとされているが、この接待元に菅首相の長男である菅正剛氏が在籍しているというのだ。

利害関係者による官僚ら国家公務員への接待は国家公務員倫理規定で禁じられており、受けた場合には罰則が課される。すでに両省において接待を受けた官僚は減給や更迭など懲戒処分を受けている。しかし山田広報官は給与の自主返納こそ行ったものの、特別職なため処分対象から外れている。他方で接待元の東北新社では、二宮清隆社長が退任し菅氏が別部署に異動となっている。

■市井においては、特に総務省の接待での一人当たり7万円など金額の大きさが注目されている。

主として接待とは、接待元が接待先に自社の商品やサービスを採用してもらおうという目的で実施される。政治家や公務員に対する接待は禁じられているが、民間における接待は減少傾向にあるものの未だに行われている。

飲食やゴルフなど形式は様々だが、民間同士の接待を取り締まる法律や条例もない。どこがやっているとは言わないが、商習慣のように行っている事業者も少なくないのではなかろうか。その場において、同歌のように「酒が空いたグラスあればすぐに注ぎなさい」などと酒の席のルールに則った行動が求められていよう。

■ビジネスにおいては相手の機嫌をとることは大切だし、接待の何が悪いのかと感じる者もいよう。

しかし、中央政府でこのような問題が起きている今こそ、接待という商習慣を改めなければならないと考える。

接待は上記のように主として自己のサービスや商品を採用してもらうために行われる。それゆえ、接待元と接待先とその時点で上下関係ができてしまっている。

ビジネスの原則とは価値の等価交換であり、買い手と売り手の立場は本来は対等である。しかし、接待によりこの対等関係が崩れてしまう。そうなると一方に負担が集中して、円滑円満な取引とはいかなくなる。

■売り手の知名度が高い、商品やサービス品質がいい、もともと売り手と顔なじみ、アフターサービスがしっかりしているなど買い手が購買に至る経緯は様々ある。

贈賄にも言えることだが、接待とは言うなれば買収であり公正取引とは程遠い。そんなことをしていれば、商品やサービスを磨き顧客満足度を上げようと努力している内外の人々を否定することになる。結果的に接待によってできる上下関係に甘んじてしまう。

正直に言って、目先の利益は得られても長い目で見れば大損に終わるのだ。

そこまで踏まえた上で、接待という商習慣を保つ必要はあるのだろうか。

■接待という商習慣がある限りそれがまかり通ってしまうし、いけないとわかっていながらも行政に対して行うということも起きてしまう。

接待問題を無くすには接待をしない・させない・許さないの3点が必要であるが、すぐに実行できるのは官民問わず接待をしないことだ。

そのためにも、接待という商習慣自体を捨てるべきだと考える。

長年にわたり中小企業を苦しめてきた下請けいじめも下請法の制定や下請駆け込み寺の設置などで対策がなされつつある。次は接待にメスを入れられないか。

官僚の接待問題を非難することは簡単だ。それでも、その根底には接待を捨てきれない我々の隙があることも肝に銘じないといけない。

接待にこそ「うっせぇわ」だ。

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