【埼事記 2021/2/19】署名不正に当選市議へ「辞めろ」ー民主主義の歪み許すな

■「埼玉県」の呼び名が生まれた150年前は明治時代だが、政治については薩長藩士を中心とする新政府の官僚が半ば一方的に進めていた。それゆえ江戸時代以来の封建社会よろしく、市民が政治に関わる機会は多くなかった。

埼玉県においては1879年には初の県会選挙・県会が行われたが、本格的な民主主義型の国会の開設は自由民権運動を経た1890年まで待たねばならなかった。

そう考えると我が国における民主主義の歴史はおよそ130年程度となる。英国の場合は清教徒革命以降の約380年間、仏国や米国では18世紀後半以降の約250年間民主主義が敷かれているが、それらに比べると未だ発展途上といえよう。

■コロナにAIと激動下にある今日、その民主主義が崩れかねない出来事が各地で起きている。

先日2/15、愛知県の大村秀章知事に対する約43万5000人のリコール署名の大多数が不正であるとして、同県選挙管理委員会が同県警に地方自治法違反の疑いで刑事告発を行った。同署名は河村たかし名古屋市長や高須克弥氏らが主導で実施したものだが、そのうちの8割近くがアルバイトを雇って不正に署名を偽造したものとされている。

河村氏や高須氏は関与を否定しているが、当の大村氏は「民主主義の根幹を揺るがす不正だ」と怒りを滲ませている。

■そのような出来事が埼玉でも起きた。

1/31に投開票が行われた戸田市議会選挙で、歌手のスーパークレイジー君こと西本誠氏が初当選を果たした。特攻服を着たパフォーマンスで、地域内外からも注目を集めていた。

しかし2/1に当選証書を受理して以降、公職選挙法に定められる3ヶ月以上の居住実態が疑わしいとして同市選管事務局長から「当選辞退も一つの選択肢」と深夜に呼び出されて耳打ちされたという。

市民からも居住実態が疑わしいと異議があり同市選管が2/16に受理している。同議員は昨年9月末より同市に居住していて光熱費の領収書も保持しているが、これを受けて本格的に居住実態に関する調査がなされる。

■同議員の居住実態については今後の調査次第だが、リコール署名の不正といい選挙を経て当選した議員に「辞めろ」といい、いずれにしても民主主義が脅かされているような気がしてならない。

民の多数決で決めるというのが民主主義の大原則であるが、それを恣意的に歪めようとする圧力がうごめいているようだ。歪めた先に目指すものは独裁か、その胸中は知れない。

いずれも地方行政であるが、これが国政だったらと思うとゾッとする。

■昨今では投票率の低下に代表されるように市民の政治離れが進んでいる。事実、当サイトでも政治について扱う投稿は一気にアクセスが減る。

民主主義を歪めたい圧力はここにかこつけているのかもしれない。皆が無関心だから自分らの思うままにしてやろうと、民主主義をおもちゃのように捉えていることだろう。

果たしてそんなことが許されるのか。この社会は議会で法律・条例や予算を定めているが、その議員は市民による選挙で選ばれており、民主主義と我々は切っても切れない関係にある。その仕組みを歪めるというのは、皆で決めたことを一方的に変えられることと同じだ。我々に対する背徳と言っても過言ではない。

■自分は政治に無関心だから、誰が勝手に歪めようとどうでもいいという者もいることだろう。しかしその歪みにより自分たちに不利益が生じたらどうなるか。歪められた民主主義下では声をあげても届かず一方的になされるがままだ。そうなってしまったら取り返しがつかなくなる。

だからこそ我々市民は常にアンテナを高くし、民主主義を守っていく必要がある。民があってこその民主主義でありそれが無くなってしまえば民主主義ではなくなる。

そして、それを歪ませる者に対してはしっかりとNOを突きつけなければならない。

総選挙に代表されるように今年は大型選挙が多く控えているが、民の力で社会を動かすという民主主義の理念を忘れてはならない。

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