【埼事記 2020/12/24】J2大宮2020シーズン終了 真に強いチームになれるか

■地域密着ー今でこそ市民権を得た言葉であるが、この言葉は1993年開幕のJリーグと共に普及した言葉とされる。

良くも悪くも注目度重視だったそれまでのプロスポーツに代わり、プロスポーツ興行だけでなく福祉やまちづくりなど地域のあらゆる側面においてプレイヤーとして参加する。それこそが地域密着と謳われ、のちにそれまでのプロスポーツクラブもそれに則った取り組みを行うようになっていった。

■ここ大宮を拠点に活動するプロスポーツクラブといえば、J2大宮アルディージャだ。

J1で5位から最下位でのJ2降格より早3年、トップチームは今年もJ2リーグを戦ったが今季は勝ち点53の15位に終わり悲願のJ1復帰とはならなかった。

2年目を迎えた高木琢也体制で序盤は昇格争いに食い込むが、コロナ禍による過密日程や怪我人の続出で黒星が先行。今季は2位までに与えられる昇格のチャンスを逃し、過去最低となる15位でシーズンを終えた。

シーズン終了前に高木監督の退任、及びクラブの森正志社長の退任が発表されている。

■昨年までは小生もトップチームの動向を追っていたが、今シーズンからそれを一切打ち切った。J1に上がれなさそうにないから、というわけでなく、どのカテゴリにいるにせよ2020年からはサポーターという立場を離れて一人の中立存在として、地域に根ざすクラブの取り組みを見守ろうと思っていた。

クラブができて20年強。元は地域の署名から始まったクラブと聞くが、いつしか埼玉だけでなく日本のサッカーを牽引するJ1浦和レッズとさいたまダービーをやり合うまでになった。

J1に上がれず来年もさいたまダービーが見られそうにないという点でも、トップチームの成績は残念である。

■それでも一番残念なのは、20年近く経つのにファン・サポーター間で自発的にアルディージャ文化を作ろうという気概があまり感じられない点だ。

とかくトップチームの不振でクラブのスタッフ陣に「社長辞めろ」と矛先が向けられがちだが、クラブもクラブで地域でのゴミ拾いや飲食店での巡回など地域密着に励んでいる。

その象徴が手話応援で、ノーマライゼーションの理念に則って掛け声が出せなくても応援できるよう県内の聾学校などと共同で手話による応援が年に数試合行われてる。

この取り組みは各所で高く評価されている。

■しかし、対象試合では手話応援をしてもそこから離れると一気にサポーター間では忘れ去られてしまっているのが現状だ。対象試合を過ぎると手話応援をしているサポーターの姿も少ない。

声による応援も選手を鼓舞するためにもちろん大事だ。それでもせっかくクラブ内外で評価をうけクラブ自身も非常に自信を持っている取り組みなだけに、なぜ肝心のサポーターがあまり乗り気でないのか。

特に今年はコロナ禍で声を出す応援もしづらかっただけに、もっと手話応援を行う機会はあったのはでないのだろうか。クラブ主導というのも大事だが、何よりサポーターの間で自発的にやろうという声が見られなかった。

■近くにJリーグ屈指のクラブがありそちらの方がサポーターも多いだけに、あまり目立ったことはできないといった事情もあるのかもしれない。

確かに観客・サポーター数では浦和に大きく水をあけられているのは事実だ。

それならばもっとサポーターを増やし選手に力を送る方向に考えればいいのだろうが、箱が小さいだけに常連が多いためかなかなかそういう考えには至らない。「自分達さえ試合が楽しめればそれでいい」そういう心理すら感じられてくる。

県内各地にポスターを貼ったりチラシを配ったり試合レポートを書いたり、小生なりにも地域にプロスポーツがある喜びや大宮アルディージャというクラブの良さを非サポーター層に伝えてきたつもりだったが、肝心のサポーター層からは否定的な意見が多かった。だから表立っての応援をやめるということにもつながった。

■曲がりなりにもサポーターとスポンサー企業で内部のスタッフのようなこともやってきたが、「顧客共創」という言葉があるように観客規模の小さいクラブこそクラブとサポーターが二人三脚で努力することが大切だと思い知らされてきた。

しかしトップチームの動向が最優先なのか、そこまで考えているサポーターが非常に少なく感じられる。所詮は「お客様」止まりなのか。

■水物ゆえ、たとえ一人前の選手やスタッフを揃えてもうまくいかないのが勝負の世界である。自分自身がピッチでプレイするわけでもないので、それ自体は成り行きに任せるしかなかろう。悲しいがプロスポーツの世界とはそういうものだ。

その中でサポーターはどういったことができるか。声援を選手に送るだけでなく、より多くの地域の人々にその魅力を伝えもっともっと応援の輪を広げていくこと、そしてスタジアムやそれを取り巻く地域を熱くしていくこと。これに尽きるはずだ。

■ちょうど今年2020年はクラブが掲げる「未来をともに」というビジョンの最終年にあたる。クラブ主導もいいのかもしれないが、クラブを生かすのは良くも悪くもサポーター自身だ。

女子WEリーグにも参戦する来年以降は新たなビジョンも策定されることだろうが、トップチームの実力のみならず地域での知名度や愛着など真に強いチームになれるか。サポーター自身ももっと変わるべきではないだろうか。

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