【埼事記 2020/8/31】大野県政1年 これまでの評価と今後の課題

■先日金曜日、安倍晋三首相が辞任を表明した。その4日前にそれまで佐藤栄作氏が有していた首相連続在任記録を更新したばかりであったが、新型コロナウイルスにより連勤が続く中で持病の潰瘍性大腸炎の悪化により職務に支障をきたすという判断で辞任に至った。

政権奪還直後の2012年12月より約7年8ヶ月に及び憲政史上最長となった安倍政権は、思いがけない形での幕引きを迎える。

■一方で本日をもって在任1年となった為政者もいる。

何者でもない大野元裕埼玉県知事だ。

それまで4期16年に渡り県政を率いた上田清司氏(現:参議院議員)の後継者として、青島健太氏との激しい選挙戦を制して知事の座に就き1年、月日の流れは実に早いものだ。

■この一年を振り返ると、想定外の出来事が多くあった。

就任直後のラグビーワールドカップ大会に始まり、豚コレラウイルス蔓延および台風19号の襲来、そして今年に入ってからの新型コロナウイルス。知事自身も地方行政は初めてではあったが、中央政府で培った行動力や洞察力の元県幹部の力添えもありなんとか乗り切ることができた。

就任直後からここまで多くの想定外に見舞われ対応に追われた県知事というのも、そういないことだろう。

そのこと自体は知事としての最低限の責務を果たしたと言えるし、県民生活の維持・向上にも繋がっていよう。

■しかし、まだまだ課題も多い。

今回の新型コロナウイルス対応でも如実に表れていたが、どうも東京都はじめ他地域の様子を見ながら政策を進めているきらいがある。PCR検査施設の整備や各種補助の実施もやや後手に回っている印象があった。中央政府出身者で1年目ということもあり仕方がないことではあるが、2年目以降はもう少し埼玉色を出していってもいいのかもしれない。

加えて、県内の政治・経済団体ともいまいち連携が取れていないことも目立った。感染者療養のためのホテル確保においても、県ホテル旅館生活衛生同業組合となかなか折り合いが合わず、一時は必要数の確保も危ぶまれていた。結果的には確保に至ってはいるが、ギリギリのラインだったと言わざるを得ない。

また知事は立憲・国民民主党らの支持を受け当選したが、県議会の第一党は自民党で「ねじれ状態」も依然として続いている。今後知事を主体とした県政運営を行っていく上において支障が生じかねる懸念は消えない。

■何より目下の対応事項が多く、知事が選挙時に掲げた公約の達成ができていないのが大きな課題だ。

埼玉高速鉄道線や多摩都市モノレール線の延伸などラストワンマイル政策を公約で掲げていたが、東京都では今年度から多摩都市モノレール線の延伸事業が始まろうとしている。だからこそ埼玉もという機運は高まっているが、新型コロナウイルスの対応などに追われなかなか手がつけられていない。

前任の上田知事も自らが制定した多選自粛条例を破って四選まで務めているが、公約達成のために徒に任期を伸ばすということは避けたい。これだけ物事の変化が早い時代にその時代ごとに求められるリーダーシップも変化しており、長期政権を敷くより定期的に血を入れ替えたほうが好ましい。

だからこそ留任は最小限に留め、その任期で公約をしっかり果たすことが望ましい。

■諸々の課題を残しつつも、無事2年次に「進級」した大野知事。

昨今の新型コロナウイルスもさることながら、安倍首相辞任により緊張・不安が増す県内にいかに落ち着きをもたらすか、新たな山が立ちはだかった。

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