【埼事記 2020/8/13】香港での言論弾圧に感じる中国への懸念

去る8/10、香港において民主化運動の先導を担っていた周庭氏ならびに民主的論調で知られる地元メディア・蘋果日報(ひんかにっぽう)の創始者・黎智英氏が香港国家安全維持法に違反したとして当局に逮捕された。国際的な非難が高まる中、両氏とも早期に保釈されている。

一国二政府体制が敷かれた同地を対象に施行された同法では、国家の分裂や政権の転覆やテロ活動や外国との共謀という4種類の行為を犯罪行為と定義。最高で終身刑を課すとした。中国本土の影響力が増す同地では民主化運動が兼ねてから盛んに行われていたが、そのような活動に参加することも国家分裂を目的とした活動への加担ということで処罰対象になる。

そのような状況だけに、表現・思想の自由が担保されなくなる。当サイトも「地域ジャーナルリズム」を標榜するが、真実を伝え時に権力を監視し社会をあるべき方向へ導く役割がジャーナリズムにはあるだけに、このような状況はゆゆしく感じる。それが地球の裏側ではなく少し海を隔てた場所の出来事なのだから、驚きや悔しさは計り知れない。

民主化を取り締まる法律ーこのように聞いて真っ先に思い浮かんだのが、戦前日本で敷かれていた治安維持法だ。終戦直後まで施行されていた同法下では軍国・帝国主義に反する思想や活動は悉く弾圧された。「蟹工船」で知られるプロレタリア文学者の小林多喜二も拿捕され、その拷問で命を落とした。

近年ではアメリカとの対立も高まりつつあるが、かつて「日本より30年遅れている」といるとも言われた中国は12億という巨大な人口のもと経済・技術が目覚ましく発展している。国防費も過去20年で6倍以上に成長し、まさに富国強兵といったところだ。

周辺地域への領土拡大の野望も潰えない。日本とは依然として尖閣諸島の扱いについて拗れているが、南シナ海やカシミール地方においても周辺諸国に領有権を主張して問題になっている。

終戦記念日が近いだけに尚更そう感じるのだが、どうも中国の置かれている状況は戦前の日本に似ている気がしてならないのだ。アメリカとの対立も深まっており、「米中戦争開戦間近」などと言われてもとても冗談には聞こえない。

もちろん戦前日本と異なる点もある。人口規模も12億と植民地統治をしていた日本の総人口と比べて圧倒的に大きく、核拡散防止条約下においてアメリカとならび核兵器の製造・保有を許可されているなど枚挙に遑がない。

無論中国の人々全員が戦争をしたがっているとは到底思えない。それでも国の方向性としては、全くもって戦前日本と同じような道を進もうとしつつある。歴史は繰り返すと言われるが、本当にそうなってしまうのか。

だからこそ物言う隣人、そして見習ってはいけない悪いお手本として日本は中国を然るべき道へ導く務めがある。

尖閣問題にもあるように中国は日本を隣国として決してただの小国と見てはいない。むしろ自分たちの側に引き込もうとするかもしれない。そのように迫られた時にいやいやこれだとまずいですよとしっかり教え諭していけるかどうか、注目したい。

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