消滅危機都市での挑戦 長瀞町「長瀞珈琲焙煎室」開店準備進行中

長瀞渓谷などの観光資源を有し年間300万人の観光客を集める長瀞町が、20年後に消滅危機にある。そのような中、同町の老舗蕎麦店の若手三代目がコーヒーで地域を活性化しようと長瀞珈琲焙煎室の開店準備を12/18に向けて進めている。

受け身からの脱却をー蕎麦屋三代目の挑戦

地域活性化にも注力

同店設立に動くのは同町の老舗蕎麦店「そば処はやし」三代目の林竜汰氏。

父の実家である蕎麦店を手伝うため、都内で勤めていた会社を辞め2020年6月に29歳で移住。店舗で働く傍ら、SNSで「長瀞に住む人」というアカウント名で地域活性化に向けてグルメ情報や観光スポットを発信。秩父・県北エリアの飲食店370店以上や観光スポット130か所以上を紹介してきた。

移住以来のコロナ禍で特に冬季や梅雨の閑散期に客足が遠のいていることを知り、店舗で客を待つという受け身の商売にリスクを感じていた。そのため、能動的にアプローチできる方法を検討するようになった。

消滅危機の町に恩返し

国の名勝である長瀞渓谷などを有する同町は明治時代より観光地として栄え、現在でも年間約300万人の観光客が訪れる。しかし、日本創成会議によると同町は2040年に向けて20〜30代女性が半減し消滅の可能性があるとされている。

それでも蕎麦店は来年で創業60年を迎える。祖父の代から親子3代で関わっている地域へ恩返しを考えるようになった。

また、SNS上でも関東圏では同町が抜群の知名度を誇るものの、全国区では聞いたことすらないという人も多いという。そのため、地域で新たに「何か」をブランド化し、ネットビジネスで長瀞の名前を全国へ届ける必要があると認識した。

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長瀞からコーヒー豆を

コーヒー需要に着目

現在、サードウェーブ(第3の波)と呼ばれるムーブメントの真っただ中にあり、世界的にコーヒーブームが到来している。県北の主要都市でもコーヒーの焙煎専門店が複数個所あるが、同町には少ない。

こうして全国で需要が増加しているコーヒーについて、「長瀞」ブランドの焙煎所として付加価値をつけ、コーヒー豆を通じて「長瀞」の名前を全国へ届けることを着想。交流人口を増やし、ゆくゆくは関係人口および定住人口の増加に貢献できると期待する。店名は地域の名を入れた「長瀞珈琲焙煎室」とし、ロゴも埼玉の象徴たるハトが岩畳から羽ばたく姿をかたどった。

開店後はネット販売を中心に、地域の土産店やキャンプ場などで販売予定。

地域からも応援多数

開店に必要な総額484万円のうち、150万円はクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で支援を呼びかけ(11/30まで)。このうち55万円を、蓄積した焙煎の知識やノウハウを共有しコーヒーをより身近に感じてもらうために、小型焙煎機(250g)の導入に充当。リターンとなる焙煎体験のワークショップやカスタマイズオーダーのコーヒー豆の製造に使用する。

商店街のほとんどが持ち家という性質上、なかなか新店舗ができず店舗バリエーションが増えずらい現状もある。そのため、新店舗ができることについて地域からの期待も非常に大きいという。既存店舗の競合となりえない新ジャンルの店舗ということもあって、「反対意見は全くなく応援の声をたくさんいただいています!」と同氏。

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「長瀞印のブランディングを」

同店を通じて、「長瀞印のコーヒー豆をブランディングしていき、地域の新しいコンテンツとして定着していければといいなと思います」と同氏。

今年に入り地域にもコーヒースタンドが2軒開店したが、さらにコーヒーにこだわった店舗が増えるとうれしくなるという。今後人口が減り続けることで空き家が増え、古民家カフェなど既存家屋を活用した飲食店の増加が予想される。そういった店舗にコーヒーを卸して地域の飲食店を盛り上げていければと期待をかける。

今回のプロジェクトもなかなかに大きな目標となり、自分で達成できる力以上の挑戦となる。クラウドファンディングで支援を受け付けているが、より多くの支援が必要となる。「もし共感いただけるようでしたら、お力をお借りできればと思います。何とぞよろしくお願いいたします」と同氏。

店舗紹介

長瀞珈琲焙煎室

  • 住所:埼玉県秩父郡長瀞町長瀞454-1 2階
  • 開店予定日:2022/12/18(日)

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