埼玉にのみ生息「幻の魚」 埼玉県の魚・ムサシトミヨとは?

(埼玉県HPより)

11/14の埼玉県民の日が近づいている。

県の鳥といえばシラコバト、県の花といえばサクラソウなのは有名だが、県の魚は何か。答えはムサシトミヨという淡水魚だ。

現在では埼玉の熊谷市のみ生息する「幻の魚」たる同種の生態や保護の実態に迫る。

オスが子育て!イクメン魚

同種はトゲウオ目トゲウオ科トミヨ属に属する淡水魚。トミヨとは感じで富魚と書くが、青森弁で「とびうお」が訛ったものが由来とされる。

体長は3.5~6.0cmで、背ビレ・腹ビレ・尻ビレにトゲを持つ。敵から身を守るときなどにトゲを出す。

きれいで冷たい湧水があり隠れ家となる水草が茂る流れの緩やかな川に生息、適温は10〜18℃。

(国土交通省資料より)

平均寿命は1年ほどだが、1〜9月の産卵期にはオスの個体が水草を集めて腎臓から分泌した粘液を用いて巣を作る。巣に産み付けられた卵を守るのもオスの大切な仕事で、胸ビレで巣の中の卵に酸素を送り込む。

卵は10日ほどでふ化しするが、稚魚が巣立つと親のオスは一生を終える。

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絶滅危機から県のシンボルへ

同種は川越市など埼玉県内や東京都西部にも生息していた。

しかし終戦後の高度経済成長に伴い、生活排水などが川に流れたことで生息域は縮小。絶滅の危機に晒された。現在では熊谷市の元荒川源流と元荒川上流の一部にのみ生息している。

県では学術的にも貴重な同種の保護に向けて、1991年3月に同川源流の水路を天然記念物に地域指定。同年11月には清流のシンボルとして県の魚に指定している。なお、2011年には熊谷市の魚にも指定された。

加えて県や環境省レッドデータブックの絶滅危惧IA類にも指定されており、捕獲や殺傷は制限されている。

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純度保つ生息地

同種が生息する元荒川生息地は、源流部から下流約400mの区間。源流部付近には熊谷市ムサシトミヨ保護センター(熊谷市久下)が設けられ、保護の拠点となっている。

同川は、江戸時代初期までは荒川の本川で湧水が豊富に出ている清流だった。1963年以降は湧水が枯れて、くみ上げられた地下水が放流されている。同区間では、周辺家庭からの生活排水が流入しないよう配慮されており、平成の名水百選にも選定されるほど水も純度を保っている。

同種の保護活動を中心的に行なっているのが、1987年設立の市民団体・熊谷市ムサシトミヨをまもる会(熊谷市佐谷田、江守和枝会長)だ。同地の除草や清掃、生息地の観察会や生息個体調査などを通じて、同種保護や環境啓発に尽力している。その活動は2013年にユネスコ・プロジェクト未来遺産運動に登録されている。

生息数下げ止まりも

県では同会などと合同で5年に一度同種生息数を調査している。

2021年に行われた調査では、4,754匹が生息しているものと試算された。前回2016年調査の2,345匹の倍増となったが、33,510匹で最多だった2002年から減少傾向が続く

また、同種を採捕できない区画もあったことから、生息域自体が縮小していることも考えられている。

特に近年、同地周辺では宅地化が進行。同種の生存を脅かすアメリカザリガニなど外来種の流入も見られる。引き続きアメリカザリガニの駆除などを推進するという。

県内4ヶ所でふれ合おう

同地には野生の個体も生息しており、運がよければ見ることができるかもしれない。

現在、以下の県内4ヶ所で同種の水槽展示が行われている。同種だけでなく環境との関わりを考える上で足を運んではいかがだろうか。

▽熊谷市ムサシトミヨ保護センター ※展示室開放日:毎月第1・第3日曜日(9時〜10時)

▽埼玉県環境科学国際センター(加須市上種足)

▽さいたま水族館(羽生市三田ケ谷)

▽彩湖自然学習センター(戸田市大字内谷)

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