生々しい空襲の記憶
終戦前夜に起きた同空襲。
同展においてもその被害を示す事物を展示するが、生々しく痛々しくも感じる。
今もそのままー石上寺の弘法大使像
この弘法大師像は、中心市街地にあった石上寺にあったもの。
空襲があった際に同寺住職は同像を携えてすぐに逃げ出したが、火の粉が被り一部が焦げている。
戦後に修繕の話もあったようだが、戦禍の記憶を後の世に伝えるものとして未だ当時のままで保全されている。
血で染まった手ぬぐい
航空兵器総局長官遠藤三郎氏による「神風」があしらわれたこの手ぬぐいは、同市中心市街地を流れる星川沿いに住んでいた藤間源一郎氏のものだ。
同氏は同空襲により焼夷弾の直撃を受けて亡くなったが、この手ぬぐいが服の胸ポケットに入っていた。
血でべったりと染まっており、75年経った今もその戦禍の惨さを生々しく伝える。
後述するが、同空襲時にこの星川では火が迫る中で多くの人が水を求めて飛び込んだが、火傷や酸素欠乏などにより多くの人々が命を落としている。
黒く焦げた建材
この黒く焦げた木材は、2016年まで同市大麻生に建っていた民家の柱として使われていたもの。同空襲で火災にあった建材とされている。
もともとこの建材は同市本町にあった新井家の土蔵に使われていたものだった。ちょうど三井住友銀行熊谷支店にあたる場所という。
それが同空襲で火災に遭い、戦後になって同行の前身である日本相互銀行の建て替えに伴い蔵が取り壊されることになった。その際に大麻生に住んでいた馬場良作氏が同材含むまだ使える建材の払い下げを受けて、自身の住居づくりに役立てたものである。
同住居解体の際に同材が見つかり、この度同展で展示されることになった。
他にも同館3階の常設展示室においても、同空襲の戦禍を伝える事物が多数展示されている。同展と合わせて見ることを勧める。
次回は、同市市街地で空襲の記憶を今に伝える場所や遺物を紹介する。
つづく
イベント紹介
- 会期:2020/7/18(土)〜8/30(日)
- 会場:埼玉県熊谷市桜木町2-33-2 熊谷市立図書館 3階美術室
- 観覧時間:9:00〜17:00
- 休館日:祝日除く毎週月曜日、8/7、8/11