令和の時代に考える「共生」
増える申請、厳しい認定
Rさんに限らず日本では世界各国からの難民が増えており、現在は2万人近い人が難民申請をしています。
しかし、難民と認定されたのはわずか20人しかいません。
こと日本は難民認定が厳しいことで有名ですが、その裏には難民を管理下に置くために行政負担が大きいことや難民に対する偏見が強いことなどがあるようです。
こうしたことから思うような支援も受けられず偏見なども相まって生活に苦労する難民が非常に多いのが、今の日本です。
グローバル化社会だからこそ「共生」を
交通機関の発達、そしてインターネットに代表される情報技術の発展でグローバル化が日々進行している現代の日本。そんな日本社会では日々さまざまな文化が流入しており、そこでの生き方も急激に変わってきています。
だからこそこの局面にどう関わっていくかが試されている時代であり、そのキーワードになるのが「共生」と同氏はいいます。
人間同士前提は異なりますが、Rさんとともに文化的な違いを経験したことからその前提が理解できなくても理解し合うことが大切と同氏も感じるようになりました。
そこから自分と意見が違っていても共に生きて行くことが真の共生につながると考えるに至ったのです。
たとえ自分と意見が違っていても一緒にいることはできる、だからこそ相手が大切にしていることを否定してはならないのです。
人間は多様だからこそ素晴らしい
皆さんの周りにはさまざまな経験や嗜好や社会背景を持った人がいることでしょう。そのような多様性こそが人間の魅力であり、お互い学び合い深め合うことができるのです。
だからこそそれぞれの視点に立つことが共生に向けて大切なことだと同氏はいいます。
我々の社会はさまざまな世界で成り立っており、どこから見るかによってその世界も異なってきます。それゆえ自分の見方だけでなく向こうの他者の立場に立って世界を捉えることが、さまざまな社会背景を抱えた人々との共生社会には求められています。
世界を様々な立場から捉えまずは手の届く人たちを大切にすること、これこそが今の我々に求められていると同氏は講演を締めくくられました。
講演を聞いて
1300年前から埼玉に住んでいた「難民」
当サイトでも蕨市のクルド人や西川口の中華街について取り上げ、地域社会の中で生きる外国人の模様を伝えてまいりました。
今でこそ川口に多くの外国人が住むようになっていますが、実は埼玉には1300年も前から外国人、それもシリアのような難民が移住してきていたのを皆様はご存知でしょうか?
それが現在の日高市や鶴ヶ島市などの一帯にあった高麗郡です。
1300年前に朝鮮半島には高句麗という国がありましたが、この国は唐・新羅の連合軍との戦いで滅んでしまいました。
国を失った高句麗には多くの難民が出たのですが、彼らを受け入れようと当時の大和朝廷は上記の地域に彼らを住まわせます。こうしてできた地域が高麗郡です。
以来この地に移り住んできた高句麗人は地元民と共に暮らし、郡自体はなくなってしまったもののこの地域には将軍像など朝鮮由来の文化も残っています。
ポスト2020に向けて
現在9月に迫ったラグビーワールドカップ、そして来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて日本各地で外国人の受け入れ体制の整備が活発化しています。
一方で一時的ではなく半恒久的に日本に住んでいる外国人もいます。これらの会期中に日本に訪れる外国人は前者ですが、果たして難民のような後者に対するサポートや受け入れ体制はどれほど進んでいるでしょうか?
どうしても人間は知らないものに対しては自分の利益を損ねる存在とバイアスをかけがちです。しかし人種や国籍と社会背景が違っても外国人は同じ人間。その背景を知れば、見えてくるものは必ずあります。
それゆえ、同氏が述べていたようにそれぞれの立場に立って手の届く人たちを大切にすることということが「ポスト2020」には強く求められていると考えます。
土壌はあるからこそ
それでも治安が悪くなるですとか地域イメージが落ちる、社会背景や考え方が理解できないなどの理由で偏見を持つ人もいるかもしれません。
しかし前述のように1300年前から難民を受け入れていた埼玉だけに、共生のための土壌は十二分に用意されていると考えます。
まだここ数十年のことですからいじめのような抵抗や対立が起きているのでしょう。時間はかかるのかもしれませんが、前例がある以上共生は不可能ではないはずです。
だからこそ少しでも共生に近づくためには、それぞれの立場に立つことが不可欠なのです。
写真展の開催に関して
以上が講演の内容でしたが、同氏は今月末の5/22〜6/3にかけて写真展「シリア難民の肖像~Borderless people~」をリコーイメージングスクエア新宿で開催する予定です。
同氏が撮影したシリア難民の写真の展示はもちろん、会期中は展示写真の物語とシリア難民の現状について話すギャラリートークも開催されます。詳細は同氏のHPへどうぞ。
こういうテーマですと「そんなことどうでもいい」とか「お堅いネタはやめろ」などと批難を受けることも覚悟していますが、彼らについて考えることは自分たちがこれからどう生きていくかを考えること。
この投稿が何かのきっかけになってくれれば、本当に幸いです。
おわり