企業が福祉に参入するハードルをいたずらに上げるべきではない

2015年に国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」という概念が、ビジネスの世界にも浸透し始めている。これまでは、企業による福祉的なアプローチには、本業のお裾分けとしての社会貢献活動という意味合いが強かった。だが、世界的な潮流が大きく様変わりする中で、日本の企業社会の中にも、持続可能性という概念が、本業にも影響を及ぼす、上位概念の一つである、という認識が芽生え始めた。

SDGsという言葉が一種の流行り言葉となりつつあるが、これにより、持続可能性という、一見想像しにくいあいまいな概念が、ビジネス界に浸透する上での有効な鍵となりつつある。SDGsという言葉が、一つの社会的な「記号」としてまずは形式的に機能し、本質が後から付いてくる、という好循環がもたらされることが期待されている。

こども食堂も、それと同じ、社会的にわかりやすい「記号」として機能し始めており、だからこそ、大手のコンビニが、数々の社内決裁をクリアした上で、あえてこの分野に参入してきたのであろう。

そうしたビジネス界の「試み」に、いたずらに冷や水をかけてしまうことで、今後、第二、第三のファミマこども食堂候補となる企業群が、二の足を踏むような空気を作り上げるべきではない。そもそも、こども食堂は、(概念的なクローズド版を除けば)、誰でも来て良いオープンな場所であるはずだ。企業も、ミクロに見れば地域住民の集合体であり、地域の構成員だ。

そう考えると、あなたたちは、気軽な気持ちでこども食堂に入ってくるなと言うのは、一部の福祉系論客が最も嫌う、排他的発想につながるのではないか。こども食堂という記号も、数年後には無くなっているかもしれない。新しい記号が登場し、行政や企業、NPOや任意団体、町内会や学校などが一体となって、こどもたちの第二、第三の居場所を作り出しているかもしれない。いや、そうなっているべきであろう。

そうした将来の展望を想像した時に、企業が福祉的分野に踏み出すハードルを、いたずらに上げるべきではないのではなかろうか。

文:佐藤 匡史
埼玉県川口市で川口こどもホープ食堂を運営(代表者)。
都内の不動産会社に勤務。

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