こども食堂はすでに第二段階に突入している

こども食堂についても、「論客」の方々が指摘するような、「従来型のこども食堂(手づくりで温かい家庭的な食事を提供されること)のみに、活動が終始しているわけではない。

温かな食事が提供されることは大前提として、いかにこどもたちに「飽きずに」「毎回来てもらえる」ことができるか、いかにこどもたちに、「食事プラスアルファの価値」を提供できるか、というところに、こども食堂各団体は腐心し続けている。

こどもたちの宿題などを見る「学習支援併設型」、こどもたちの「親」を意識し、フードバンクなどと連携し食材の再配分を行う「フードパントリー併設型」、外国籍のこどもなどに日本語を教え地域のコミュニティに溶け込む術を学んでもらう「語学文化教育併設型」など、その形態はすでに多岐に及んでいる。私たちが埼玉県川口市内で運営するこども食堂(川口こどもホープ食堂)でも、現役のパイロットや電車の運転士、保育士や消防士などを招き、職業の魅力やこども時代の夢を、こどもたちに向けて話してもらう、「職業体験併設型」を実施しており、こどもたちの「集客」に一役買っている。
こども食堂は、全国各地で日々進化を遂げており、「これが元祖こども食堂。このスタイル以外はこども食堂とは呼ばない」というような考え方を持つ関係者は、今や少数派だ。

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こども食堂は誰のものか?

「少数派」と書いたのには理由がある。法政大学教授で社会活動家の湯浅誠氏が、2016年10月に書かれた、『「こども食堂」の混乱、誤解、戸惑いを整理し、今後の展望を開く』の記事の中に、「こども食堂の類型」という概念が登場する。縦軸にビジョン、横軸に対象者を取ったマトリクス・チャートで、こども食堂は、地域づくり型(コミュニティ指向)と、ケースワーク型(個別対応指向)の大きく2つに分類することができる、とされている。

別の言い方をすると、誰でも来れる「オープン型」と、対象を限定した「クローズド型」となる。クローズド型は、主に福祉専門職の方々が中心となり、比較的貧困度合いが高く、また、家庭環境も複雑な、いわゆるクリティカルな問題を抱えたこどもたちをピンポイントで招き、専門職の方々が学校や行政機関と連携し、こどもたちの見守りを行うもので、専門性や独自の人脈がないとなかなか実践できない高度な活動だ。オープン型は、その対極にあたる児童館スタイルと呼ばれるもので、地域の誰もが集える場としての位置づけがなされている。

全国的に見た時に、オープン型が大半を占め、クローズド型は、1割、多くても2割だ。
クローズド側を運営されているこども食堂から見た時に、ともすると、オープン型は少々違和感を伴うのかもしれない。こども食堂を一つの事業と見た時に、本当の「顧客」へのリーチ率が、クローズド型に比べて相対的に低いオープン型は、邪道という見方もあるだろう。

ただ、それは、こども食堂「業界」の中では、今のところさしたる問題にはなっていない。それぞれができる範囲で、継続性のある活動を続けることが、こどもたちにとって、一つでも多くの居場所を作り出すことにつながる。それはこどもたちにとっての利益になる、という、児童福祉の世界における最重要概念「こどもの最善の利益」だ、という共通認識があるからだ。

オープン型も、クローズド型も、それぞれに利点があり、それぞれに課題がある。お互いが連携して、より良い関係と役割を構築できるはずだ、という暗黙の認識が、こども食堂業界には存在している。なぜなら、こども食堂は、あくまでも、こどもたちのものであり、一義的には、こども食堂運営者のものではない、という認識があるからだ(二義的には、こども食堂運営側・ボランティアたちの居場所にもなり得る、という評価も存在する)。

ひるがえって、今回のファミマこども食堂にまつわる一連の議論を見ると、今回の、大手コンビニによるこども食堂の全国展開は、元祖こども食堂の旗印を掲げる、草の根の非営利活動団体から、「こども食堂という実績」を奪い取るものだ、企業の営利目的に惑わされてはいけない、という論調が目立つ。

繰り返すが、こども食堂関係者は、そんなことを微塵も感じていない。むしろ、大手のコンビニが、この分野に乗り出すことで、「こども食堂」という名称が、こどもたちの居場所を示す社会的な「記号」としての役割を果たすようになることを期待する声が大半だ。

そして、こどもたちにとっても、「こども食堂」と呼ばれる居場所が一つでも多く増えることは、歓迎なのだ。なぜなら、「行きやすい場所にしか行けないし、そういう場所にしか行きたくない」というのが、当事者たるこどもたちの、偽らざる本音なのだから。

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