知ってもらうことが第一歩
知られていない状況の打破へ
ーたしかに高齢者介護ですと専門学校なども多くできており、私の知人も通っております。当サイト内でも福祉ということで、こども食堂にクローズアップしたりはしていますが、障がい者福祉については後回しにしていた感じはありますね。
相浦:今回のイベント実行委員会を組む際にざっくばらんな情報交換をしました。
やはり、我々の仕事をなかなか、知ってもらえていないということは各施設でも共通認識としてあり、逆に知ってもらえると、こんな仕事もあるのかと感じてもらえるのではないかという声が出ました。
見聞きすると関心を持ってもらえる、その入口をどう作っていくか、知られていないという状況を打破し、こういう世界があるということをいかに知ってもらうかということがこの業界の鍵であるという声が各施設からも出ています。
原: 実際、自分も年齢を重ねれば高齢者になりますし、親類の介護というのも身近なことであると思います。そういう意味で、高齢者介護というと誰もが通る道ですが、障がい者福祉というと何かのきっかけがないとそこに触れることは、高齢者介護より少ないと思います。
正直、大変なところもあります。でもそこを超えたところにある熱い信念を持ってみんな仕事をしているというところを、このイベントを通じてPRしていけたらと思っています。
イベントの副題に「支える人たちの物語」とつけていますが、今回はこういう世界があるということを伝えていくことが大切になりそうです。
必ず訪れるハマる瞬間
ーなるほどですね。障がいといっても身体障がいや精神障がいなど様々種類がありますが、「この分野に人材が足りない!」というものはあるのですか?
原:おっしゃる通り障がいには様々な種類があって、簡単に表現すると、例えば、目に見える障がいと目に見えない障がいがあります。目に見える障がいはイメージがしやすくフォローもしやすいですが、目に見えない障がいはそれに比べて難しいかもしれません。
そういった様々な障がいに対し、未経験でも適切な支援ができるように、各施設のスタッフは勉強会を開いたり、研修会に参加したり、専門的な資格を取得したり知識の習得に励んでいます。
ですから、特に「この分野だけ足りない!」ということはないかもしれません。業界全体として足りないと言う危機感はあります。
山本氏(左)と千代田 浩之氏(右)
山本:施設のスタッフは日々、利用者さんに対してどうやって支援していこうかということを考えています。
そうやってこの仕事していると、ハマるんです。利用者さんと心が触れ合う瞬間がたしかにあるんです。そういう宝物をスタッフの皆さんが持っています。仕事に就いて何年かしてハマった瞬間からみんなのめり込んでくれるんですよ。
そういう世界だよということを少しでもわかってもらえれば、もっと興味を持ってもらえるのかなとは思うんですけどね。
ーなるほどですね。
イメージアップが急務
相浦:よく我々の仕事は3K(きつい・汚い・危険)と言われることがあるのですが、どの業種にしたって同じように大変なところはあると思います。
ただ、業界のイメージというものがあると思うのです。例えば美容業界ならカリスマ美容師がいてかっこいいという漠然としたイメージがありませんか?障がい者福祉業界には、カリスマ支援員がいてかっこいいというイメージは残念ながら今のところありません。
どんな仕事だってお給料以外にやりがいはありますし、どの仕事も楽ではありません。障がい者福祉も数多ある業種の中の一つであると思うんです。スタッフがいてこそサービスの供給ができます。この業界を存続させていくために新たな仲間に加わってもらわないといけないと思うのです。業界のイメージアップが急務です。
そのためには、まず、どんな仕事なのかを知ってもらう必要があります。保育の学校に通っていた学生さんでこっちの世界に触れて、ああやっぱりこっちだと思ってきてくれた人もいました。まず、知らないという状況からこんな世界もあるということを頭の片隅に入れてもらえればいいのかなと思います。
イベント当日、どのような反響があるのか非常に楽しみです。学校まわりをしていると、介護や保育は実習先も多いのでイメージはつきやすいものの、障がい者福祉の施設については、情報が少なく学生への説明にも困っているという教職員の方が多くいらっしゃいました。
そんなことから、今回のイベントのメインターゲットは学生であるものの、教職員の方々にも来ていただきたいという思いがあります。
新卒者以外にも障がい者福祉の世界を
ー教職員の方もターゲットにしているのですね。
相浦:実行委員会でも、最初どこをターゲットにするか議論しました。新卒、中途採用、人生経験豊かなシニア層などターゲットは様々ですから。高校生にもアピールしていくべきではないかとか、ママさんにアピールしていくべきなどいろいろな声が上がったことも事実です。
そんな中で今回はイベントの初回ということもあり、また、これから就職活動を始める学生さんがその選択肢の一つに我々の仕事を入れてもらえればということで、学生さんをターゲットとさせていただきました。
ただ、学生さんと合わせて教職員の方にも見にきてほしいという思いがあります。
70施設が所属するさいたま市障がい者施設連絡会
ーかしこまりました。
これも最初に聞くべきでしたが、連絡会にはだいたいどの程度の施設が登録されているのですか?
山本:70施設です。
ーでもさいたま市ということだと、市内全域になるのでしょうか?
相浦:全域ですね。大宮の施設連絡会や浦和の施設連絡会など、分科会も設けられています。
山本:最初は浦和や大宮に分かれていましたが、2001年にさいたま市として合併した際に一つになりました。緩やかなつながりを持って勉強したり情報交換をしたり、最近はグループホームや日中サービスなど形態ごとに勉強会などを開いています。
イベント開催に向けて
業務の合間の実行委員会
ーありがとうございます。またイベントの話に戻りますが、よりイベントを盛り上げるため実行委員会では普段どのようなことをお話しされるのですか?
野島:最初にこんなイベントをやりますというお知らせが来た際は心の中でワクワクするところがありましたが、ゼロベースなだけにまずはどんな形にしたいかというところから話し合いを進めました。
月に1回開催で今まで6回開催してきました。
原:いつどこでやるだとか、ホールをどう借りるとか、各自の役割をどうするだとか本当に様々なことを話し合いました。
相浦:皆さん今までの内容を思い出せないくらいいろんなことを話し合いました。どうしても業務の傍ら行うものですので、委員会と委員会の間に各自がどれだけ役割を果たしていけるかという難しさはあります。
実習生の口から必ず出てくる言葉
野島:質問とはズレてしまうかもしれませんが 最初は、み〜て大宮さんも施設に入りづらかったと思うんですよ。でもいざ施設に入ってみたら、どう感じられましたか?
ーなかなか普段の生活で障がい者の皆様と関わる機会がないためこのような施設にお邪魔するのは初めてなのですが、それでも健常者の人と同じように利用者の皆様が楽しんでいる姿を見て、みんな同じなんだなと思いました。
野島:学生さんが実習で来ることもあるのですが、決まってその「楽しい」という言葉を口にします。
終わった後のミーティングなどでよく聞かれるのですが、今入ってから1時間も経っていないのにそのような言葉が聞けただけに、こんな風に楽しいと思ってもらえる仕事はなかなかないと思います。
この続きは次回お送りいたします。
障がい者福祉のお仕事の魅力や2019年の展望など、楽しいお話が盛りだくさんです。
つづく