店舗としての差別化ポイント
外食産業の規模は28兆円だが、そのうち食パンの市場規模は3500億円。小規模ではあるがコメよりも需要が出ている昨今は戦国時代の様相だ。その中でどう差別化を図るかが鍵となる。
同補助金の申請に際して、提出する事業計画に以下のような差別化ポイントを盛り込んでいた。
パンに練り混ぜた地域色
他店と差別化する大きなポイントとして、地元・埼玉の食材を用いている点がある。
小麦については諸々の事情で断念したものの、それ以外の食材については実際に生産者とも顔を合わせて交渉にあたった。
当初は苦労したというが、粘り強い交渉の結果「だったらうちの食材を使ったあなたのパンを食べてみたい」と言わせ、実際に味わってもらい感動を得たことで各生産者の理解を得た。深谷ねぎを用いた商品開発も進行中。
こうした生産者との相互理解の元、互いの産物に関してシナジーを生み出していくのが長期的な狙いとなる。
また県内の青果についても仕入ルートを開拓しており、同店内でも実際に販売。同店だけでなく本業である居酒屋にも今後は卸していければとしている。
地域前面の屋号
屋号を考えるにあたっては、勾玉が円状に並ぶ埼玉県旗に着想を得たという。
円という形状から当初は「まどか」で検討していたが、コロナ禍により人とのつながりである縁が失われる中で生食パンを通して人の縁を結びたいという思いから「縁結」に変わった。ここに同店が強く意識する地域名を加えて「埼玉縁結」とした。
埼玉縁結はサブタイトルでもいいとも指摘されたが、埼玉を屋号に入れないとやる意味がないという思いは曲げなかった。「逆に埼玉を使っていなかったら、採択されなかった」とも振り返る。
看板や手提げ袋にあしらわれた水引は、生産者・消費者・メーカーの三者を表現。県旗にちなんだ赤色も随所に取り入れている。
従業員満足の追求
一坪店が多い中、同店はスペースも広めに取っており製造現場もガラスを通じて外から見ることができる。
設備としては蒸し焼き用のスチームコンベクションはじめ、ミキサーや分割機やモルダーなどを配置。従来使用していたデッキオーブンは出し入れに時間や体力が必要であったが、システム化されたこれら設備の使用により職人技がいらず作業の標準化が図れる。
蒸し焼きでしっかり焼ける温度帯も独自に見出しているため、品質の標準化も図れる。
パン業界はきつい・汚い・危険の3Kに長時間で低収入と言われている。しかしシステム化により作業・品質は標準化されているため、決まった時間帯で働くことができ収入も低くない。
結果として従業員満足の向上を追求している。
地域にこだわったフランチャイズ
同氏自身が強く関わってきたフランチャイズ展開も同店を通じて志向するが、効率重視ではなく「とことん埼玉にこだわっていきたい」としている。
ラーメンブームでラーメンフランチャイズ店が増えていた時期もあったが、そのほとんどが経営がうまくいかず閉店していた。自身もラーメンフランチャイズ時代にフランチャイズビジネスの展示会などに出展参加したこともあったが、ブース来訪者に「ロイヤリティだけもらって本部は何も支援しないのでは」と言われるのが嫌だったという。
昨今もフランチャイズ本部とフランチャイズ店とのトラブルが多発しているが、そのようなことが繰り返されるのに嫌悪感を抱くからこそ「時代にあった正攻法のフランチャイズを展開していきたい」と誓う。
東大成町を総本店に、地域色を帯びた埼玉縁結を埼玉県内に展開し「埼玉でないと買えないお店」を目指す。
地域へのメッセージ
開店以来、「まずい」などと味に対する意見は少なく客足も好調だ。
東大成町ということで大宮氷川神社が近くにあるが、同社で毎年6月下旬に設置される茅の輪も縁結びの結び目のように廻るもので縁を感じるという。
そのような地域性を軸にビジネスをいかに浸透させるかということで、8のつく日を埼玉縁結にすることなども検討しているという。
大宮出身として東大成町の人々に可愛がってもらえるように努力していきたいと同氏も意気込む。
「埼玉の知らなかったことを我々を通じて知ってもらえれば」と同氏。
店舗紹介
- 所在地:埼玉県さいたま市北区東大成町1-642 孔文堂ビル1階
- 電話:048-788-3885
- 営業時間:11:00~19:00(無くなり次第終了)