【埼玉県議会短信】感染症対策などについて質問ー2020年2月定例会 代表・一般質問から

埼玉県議会では2/20に今年度最後となる2月定例会が開会、3/27までの会期で行われる。

新年度予算の審議などがなされるが、2/26〜28および3/2〜3にかけて各会派代表や議員による代表・一般質問が行われた。

そのうち一部の質疑内容を紹介する。

感染症対策について

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、感染症対策に関する質問も多くなされた。

そのうち、小島信昭議員(自民)の質問を紹介する。

質問内容

我が国含め新型コロナウイルスが国際的に猛威を振るっている。
人に感染するコロナウイルスは6種類あるがうち4種類は感染すると風邪と診断され2種類は感染すると肺炎を引き起こすもので、SARSやMARSは後者にあたる。
今回のコロナウイルスはこれに続く格好だ。

ウイルスの特徴などまだまだ不明な点は多い。
感染しても症状のない無症状保有者の存在や症状だけでは風邪やインフルエンザと見分けがつかない状況が急速な感染拡大に少なからず影響し、見えない敵と戦っているようだ。

WHOでも早期に危機的状況と声明が出され、我が国においても診断基準の策定や休業の奨励などが呼びかけられている。
封じ込めの兆しも見えず多くの人々が不安を抱えるが、WHOによると感染者の8割は軽傷で済んでいる。
それゆえ噂や報道に惑わされず、正確な知識を持って体調管理をし正しく恐れることが重要だが、そのためには正しい情報の発信が欠かせない。

会派では流行前に感染症について医師と意見交換を行なったが、オリパラによる訪日外国人増加に伴い感染症発生リスクの増加が見込まれるという。

とりわけ侵襲性髄膜炎菌感染症への懸念が強い。発生頻度は低いものの、飛沫感染しうる同感染症は発症すると致死率が高い。国内での発症例は少ないが、全寮制の学校などで集団発生している。昨年のラグビーワールドカップの際にも訪日豪州人が発症した(治療後に帰国)

症例が少ないものや風邪との判断が難しいものなど、病名がわからない間に感染拡大が危惧される。
オリパラも近いが、県として感染症対策にどのように取り組むか尋ねる。

大野知事からの回答

大野知事は以下のように回答。

答弁前週の2/21にヒトーヒト感染が疑われる感染例が県内でも報告されている。
感染拡大が懸念されるが、オリパラに向けて感染拡大防止は県としても全力で取り組むべき事業である。

同大会に向けた対策については、埼玉での競技開催が決まって以来体制や対策の強化に努めてきた。

県内では6市4会場でオリンピック4競技パラリンピック1競技が開催され、事前トレーニングキャンプも15カ国を19市町で受け入れる。
ホストタウンは13カ国18市町が登録され、オリパラ開催にあたっては多くの国からの来県が見込まれる。

それゆえ、新型コロナウイルス以外にも我が国ではあまり感染例がない感染症の発生も予想される。

そこで県では事前トレーニングタウンやホストタウンとなっている自治体に対して、感染症発生状況をみるリスク評価を実施している。
国別・感染症別に分類し、注意すべき情報を県内医療機関へ提供し、注意を喚起している。
同議員指摘の侵襲性髄膜炎菌感染症も注意すべき感染症に分類し、麻疹や風疹などとともに予防接種を奨励するポスターを制作している。

感染拡大防止には重大な感染をいかに早く察知し原因を見落とさずに解明できるか、いかに迅速に対策を講じることができるかが重要だ。
大会期間中には感染症発生動向調査に加え、薬局の調剤情報や県の救急搬送情報を活用した評価サーべランスも実施することで早期探知体制を強化する。
検査での見落としを防ぐため、すべての遺伝子を調査する機械を2018年から衛生研究所に導入し、医師への研修も実施している。

大会開催に向けて、これらの対策を着実に進めていく。

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埼玉版スーパー・シティプロジェクトについて

田並尚明議員(民主)は、知事が公約で掲げる埼玉版スーパー・シティプロジェクトについて質問した。

質問内容

今後の少子高齢化を見据えて、拡散した住居エリアを一括にまとめて交通機関や生活インフラの効率化や地域の活性化を狙ったコンパクトシティに向けた取り組みが全国で行われている。

富山市ではライトレールにより徒歩で生活できる生活圏を交通機関でつないだ。日本有数の自動車依存地域ながらCO2が減り環境モデル都市にも指定された。
藤沢市ではエネルギーの地産地消に、カーシェアや健康を加え100年持続可能なまちづくりを推進している。

大野知事の公約にも埼玉版スーパー・シティプロジェクトがあるが、コンパクトシティに加えエネルギーの地産地消など様々な特徴を持たせている。
次年度は3900万円を予算計上され、より現実的な形にしていくことが予想される。

成功・失敗例が様々あるが、ほかの地域の手本になるスーパーシティを目指して欲しいと感じる。
具体的なことは協議中だと思いが、まだ全体像が見えにくいと同議員は感じる。

それゆえ同プロジェクトの一番の特徴や他地域との違い、同プロジェクトによって今までの街と何がどう変わるのかを尋ねる。

また40年後には高齢者が大半となるが、街の中でも世代の循環が必要と同議員は考える。すなわち、郊外の高齢者を街の中心に住まわせて、退去した郊外住宅をリノベーションして若者が住むといったものだ。
そのような認識はあるか尋ねる。

加えて今回の予算編成でプリズム効果・一石三鳥にも四鳥にもなる取り組みを入れているが、実現に向けて沿線開発が必要な埼玉高速鉄道線の延伸に絡めてみてもどうか尋ねる。

大野知事からの回答

大野知事からの回答は以下の通り。

同プロジェクトは、超少子高齢化社会の様々な課題に対処すべく市町村の地域特性に応じたまちづくりを支援するものである。
コンパクトシティの取り組みを核とし、エネルギーをインセンティブとしながら、AIやIoTなど最新技術を用いた超スマートなまちづくりを目指している。

コンパクトシティは全国各地で取り組まれて来たが課題も多くなっている。県としてもその突破口を開けていけたらという思いである。

同プロジェクトの一番のポイントは、街のコンパクト化に意欲的な市町村を県がバックアップすることであり、これがインセンティブになる。
まちづくりの構想段階から課題を共有し各地域特性に沿ったコンパクトなまちづくりを展開する。
昨年11月に知事直轄プロジェクトにして部局横断で検討チームを組織し、市町村が行うまちづくりに有効な策を洗い出している。

またエネルギーについても再生可能エネルギーのさらなる導入や効率利用を意識し、各地域の要件に応じて支援に取り組んでいく。
民間企業が有するアイディアやノウハウの活用も必要であり、企業が投資しやすくなるようマッチングシステムを検討している
このような部局横断性やマッチングも他の地域との違いと言える。

議員指摘の世代の循環にあたっては、就業の場やライフスタイルに沿った住環境の継続提供が課題となる。
それでも街中に子育てや高齢者世帯などが住むことで、多様な世帯の共助や交通難民が生じず街の活気や持続性が担保されうる。
まさに将来の少子高齢化社会の解になりうるプロジェクトだが、世代間交流も検討していく。

そして埼玉高速鉄道線の延伸に関しては、取り組むべき課題の一つにまちづくりがある。
まちづくりは本来地元自治体が主導を担うべきだが、需要創出に向けてもさいたま市がしっかり先導を担うべきと考える。
同市では浦和美園・岩槻地域成長発展プランを策定しており、岩槻駅や中間駅周辺でまちづくりを予定している。
持続可能なまちづくりを掲げてるが、その検討に資するよう県としてもしっかり情報提供をしていく。

まちづくりは一朝一夕でできるものではないが、今から検討するのとそうしないとでは10年、20年後に大きな差が出る。
長く厳しい道のりだが、知事自身が主導を担って進めていく。

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外国人との共生のために

須賀敬史議員(自民)は外国人との共生について質問を行なった。

質問内容

我が国を訪れる外国人は増加の一途をたどる。
2018年12月に新たな在留資格の創設を盛り込んだ改正入国管理法が成立し、翌年4月施行により今後5年で34万5千人の増加を見込んでいる。
在留外国人も2015年度の14万人から2018年度には18万人と3年間で約1.3倍増加している。

言語宗教など異なる社会的背景を有する外国人が日本社会に溶け込むのに、特に大切なのが日本語教育だ。
共通の言語は相互理解を促進する最速なツールで、地域社会とのコミュニケーションや情報需要量拡大による融和も図れる。
就労に必要とされる知識や技能も身につけやすくなる。

外国籍の子どもも増加している。
国際人権規約などによって、普通教育を受けさせる義務のない子どもであっても就学機会の確保に努めることが求められる。
しっかりとした日本語教育や日本の文化や道徳教育を行うことで、少子高齢化社会において地域社会を支える存在になりうる。

そんな中彼らを取り巻く問題もあり、その一つがゴミ出しだ。
ルールを理解せずゴミを捨てることで地域住民と軋轢が生じている。ありふれたことではあるが、とても根深い問題だ。
日本語と合わせてゴミ捨てなど日本で生活していく上でのルールをこどもたちに教え、家庭へも伝えていくようにするなど地道な啓発も解決策になりうる。

このように日本語教育だけでなく日本での生活や道徳を学ばせることも重要だが、教育長の意見を尋ねる。

また外国人の経営する店舗で働く従業員は住民登録されていないケースもある。
不当な労働環境で働き、保険証の使い回しも行われているという。
市町村が在留外国人をしっかり把握し、県としてもそれを支援すべきだ。

すべての在留外国人に住民登録を行わせることで、健全に働かせ福祉を提供し税を徴収することが理想的だ。

外国籍の県民が地域社会を構成する一員としてその能力を発揮するには住民登録など日本の制度の理解も重要となるが、県民生活部長の所見を尋ねる。

小松教育長からの回答

小松教育長からの回答は以下の通り。

日本でのルールや道徳の指導は日本語能力向上だけでなく、将来地域社会を支える人材育成にもなる。
そうした内容をこどもが保護者に伝えることで、家庭が日本の習慣に馴染むきっかけにもなる。

一部の学校では日本語の指導において、時間を守って行動することなどを合わせて指導している。
道徳についても中国語やスペイン語など4カ国後に翻訳した「家庭用彩の国の道徳」を活用し、日本語と母国語を比較しながら指導している学校もある。その中では消防団の一員として活動する父親の姿を描き、進んで公共のために資する姿勢の大切さを説いている・
また国際交流委員等が学校を訪問した際に、外国人には馴染みのない泊りがけの行事などに関して保護者から相談を受けている。

今後これまでの取り組みに加え、日常生活や道徳に結びつけた日本語指導の優良事例の紹介など指導充実に努めていく。

小島県民生活部長からの回答

続けて小島県民生活部長からの回答。

県では外国人が日本の文化やルールを理解できるよう、市町村と連携して他言語による情報配信している。
在留管理制度や医療、防災などに関する情報を生活ガイドとしてまとめ8つの言語で展開し、外国人からの生活相談に多言語で対応する市町も14ある。

また外国人総合相談センター埼玉では、生活相談や出入国管理などの専門相談に11言語で対応し市町村からの依頼で適宜通訳も行なっている。

加えて県内約140のボランティア団体により200箇所の日本語教室が開かれている。生活相談だけでなく料理教室などの交流イベントもあり、相互理解の場にもなっている。

来年度からは同教室の人材育成や日本語教育の教材作成など、新たな支援を検討している。
今後も市町村や地域住民、ボランティアと連携しながら、外国人が地域社会の一員としてその能力を発揮し、誰もが暮らしやすい地域社会の実現を目指していく。

戦略的なベンチャー育成を

平松大佑議員(県民会議)はベンチャー育成について質問した。

質問内容

県では企業誘致に力を入れるが、創業支援もまた重要である。ベンチャー支援については様々な事業があるが、さらに戦略的に力を入れるべきだ。

革新的技術やアイディアで新たなビジネスモデルを作り、新しいマーケットを開拓するベンチャー企業が増えることで経済活性化や稼ぐ力の向上につながる。
Society5.0時代のパートナーになりうるベンチャー企業を、戦略的に支援していくべきだ。

国としてもスタートアップ支援に注力し始めている。
閣議決定された成長戦略・未来投資戦略では、2023年までに企業価値・時価総額が10億ドル以上の企業を20社創設することを目標としている。
県としても官民で支援にあたるべきだが、知事はどう考えるか。

そしてベンチャー企業を正当に評価できる団体などをパートナーとしてともに取り組むべきとも考えるが、知事の考えを聞く。

そして効果的な支援にするためには、育成戦略を策定すべきだ。
ベンチャー企業数や各種支援のあり方がどうなのか現状をしっかり抑えるべきで、埼玉で起業したいと思える強みの創出や差別化に繋げていく。
またアントレプレナー大会やマッチングイベントなどのコンサルティング支援など積極的な支援や。起業家の創出拠点とベンチャー企業の成長促進拠点も必要となる
先輩起業家がベンチャーを支援するエコシステムを作理、埼玉の特性を生かしたベンチャー育成を目指していくのが理想だ。

そして目標達成度合いの監視のために定量的なKPIを設定するべきだが、知事の考えを聞く。

大野知事からの回答

大野知事は以下のように回答。

産業イノベーションや持続的な経済成長にもベンチャー企業は不可欠である。

埼玉が生みし明治期の実業家渋沢栄一は、は民の力を強くしなければ世の中の成長はないという信念のもと、生涯で500社を超える会社を設立し日本経済に強く貢献した。

渋沢の信念を現代に生かすため、来年度は新事業の創出など大きな成長を目指す企業を支援する渋沢栄一創業プロジェクト立ち上げにかかる予算を計上している。
各ベンチャー企業に寄り添った伴走型の支援や、様々な業種の交流ができる場の創出を柱に、県内経済団体や起業家団体などと連携し官民挙げての支援を展開する。

それでも県内の公的機関が、各企業を目利きすることに自ずと限界がある。
事業の成長可能性などを見極め、正当に評価できる民間企業との連携が大切となる。
同プロジェクトでも、そのような専門的な民間企業にアクセラレーターとして参加してもらう。

支援にあたっては県内企業との連携を深めビジネスマッチングを推進していくことが重要で、量よりもきめ細やかな質を求めたい。
そのためにも学識経験者やベンチャー企業経営者などベンチャー支援に知見のある有識者による会議を開き、企業同士の交流のあり方を検討する。業種や今後伸びそうな分野など分析した結果を踏まえ、交流の場を活用した今後の支援策を議論する。
議論を踏まえ同プロジェクトを活用しながら、戦略策定についても検討していく。

シェアサイクルの普及促進について

醍醐清議員(県民会議)はシェアサイクルの普及促進について質問した。

質問内容

2017年制定の自転車活用推進法に基づき、国土交通省により自転車活用推進計画が策定された。それによりシェアサイクルの整備が各地で進んでいる。

県でも昨年12月に県独自の自転車活用推進計画の草案が公表されているが、主な施策の一つにシェアサイクルの普及促進がある。
すでに都内ではどこのポートでも貸し借りができるほど普及していて、手軽な移動手段として人気も上昇中だ。

さいたま市や川越市でも活用されつつあるが、同議員地元の朝霞市や和光市でも民間事業者による実証実験が行われている。
利用市民の評判も良好で、市町村も民間事業者に対して市施設へのポート設置を勧めている。

人や環境に優しいシェアサイクルを県内各地に広めていくことが理想だが、そのためにはポート増設が欠かせない。

そこで県内市町村の導入状況と今後どのように働きかけていくかについて尋ねる。

合わせて移動手段だけでなく地域活性化にもなりうるサイクルポートを県有施設の敷地にも設置してはどうか。

中村県土整備部長からの回答

中村県土整備部長は以下のように回答。

現在県内では南部を中心に9市でシェアサイクルを導入している。
1月には県主催で市町村との情報交換会を実施し、シェアサイクルの普及促進に関する国庫補助や先進事例について紹介した。
このような取り組みにより普及を促進している。

また民有地に限らず、公有地へのサイクルポート設置も普及には欠かせない。
県有施設への設置に関しては、施設の用途や目的を妨げないことを前提に、公平性や安全性などを十分に検討していく。それを元に、市町村や関連事業者の意向を踏まえ関係部局と調整していく。

今後も市町村と連携して、自転車活用推進に取り組んでいく。

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